目次
【2024年】金相場が過去最高値に!金価格の高騰要因は?
2024年、金は最高価格を更新し続け、ついに1万3,000円を超える高値を記録しました。昔から価値の下がらない資産として高い人気を博してきましたが、なぜ高値で取引されるようになったのでしょうか。
景気の不透明性
金価格が高騰した理由の一つに、新型コロナウイルスの影響によって引き起こされた、景気の不透明性が挙げられます。
2020年頃から世界中で大流行したこの未曾有のパンデミックは、経済活動に大きな打撃を与えました。そして、2024年現在でも景気の不透明性は続いています。
経済が不安定な状況では、安全資産とされる金への投資が増えるため、金価格が上昇しました。
ロシアによるウクライナ侵攻
金価格が高騰した二つ目の理由は、ロシアによるウクライナ侵攻です。戦争が起こると急激なインフレが生じます。インフレとは「継続的に物価が上がり、自国の通貨価値が下がる状態」のことです。
資産構成の一部として金を保有することで、インフレの影響を軽減できるため、金への需要が高まりました。
投資家は安全資産である金に資金を移し、その結果、金価格の高騰が続いています。
円安・ドル高
金の価格は円安・ドル高になると上昇します。円安により海外投資家が日本の金を買い求めるため、金の価格が高騰すると考えられます。
金のメリットには以下があります。
・企業破綻による無価値化リスクがない
・世界中で価値が認められ換金しやすい
・景気の影響を受けにくい
2022年から進行する円安・ドル高の影響で、経済不安から資産を守るために金を選ぶ人が増え、現在も金価格は上昇し続けています。
これまでの金価格の推移
2000年からの価格推移を見ると、上昇と下落を繰り返しながら、長期的に上昇トレンドが発生しています。そこで、これまでに金価格へ影響を及ぼした出来事を振り返ってみましょう。
【2000~2012年】約1,500ドル上昇
2000年から2012年にかけて、金価格は上昇トレンドが発生しました。この背景には、さまざまな政治的・社会的・軍事的な国際関係の緊張が相次いでいます。
2000年 | ITバブル崩壊 |
2001年 | アメリカ同時多発テロ |
2003年 | イラク戦争 |
2007年 | サブプライム住宅ローン問題 |
2008年 | リーマンショック |
2010年 | 欧州債務危機(欧州ソブリン危機) |
これらの地政学リスクや世界的な金融危機が、約12年間で金価格を約1,500ドル上昇させたのではないかと考えられています。
【2012~2015年】下落トレンドに
2012年から2015年にかけて、金価格は2010年以来の安値まで下落しました。
2000年からの約12年間、金価格は上昇傾向にありましたが、その後上昇が鈍化しています。この下落における主な要因は、米国の金融緩和策の縮小が示唆されたためです。
2008年の金融危機対策として実施された緩和策が、2013年以降に終焉の兆しを見せ、米国の景気回復が見込まれたため、金への投資需要が減少し、金価格は下落しています。
【2020年】新型コロナウイルスの影響で高値更新
2015年以降、金価格は一定の範囲で変動していましたが、2020年に新型コロナウイルスの影響で再び上昇し、2011年の高値を更新しました。
その後、2023年にはロシア・ウクライナ問題や世界的なインフレが影響し、さらに高値を更新。2024年には史上最高値を塗り変え続けています。
過去24年間を振り返ると、世界経済や情勢の不安定化に伴い、金需要の高まりがうかがえます。
【金価格予想】今後10・20年後の金価格はどうなる?
10・20年後の金価格は「上昇する可能性が高い」と予測されています。2000年以降のデータでは、一時的な下落があっても長期的には上昇傾向が続いています。
世界情勢が不安定で上昇する
2000年から現在にいたるまで、金は長期的な上昇トレンドにあります。コロナショックが終息の兆しを見せていますが、ウクライナ侵攻や台湾問題など、世界経済に影響を与える問題が相次いでいるからでしょう。
こうした地政学的リスクや経済危機は、金の需要を高め、価格を押し上げる一因になります。
ただし、これらの要因による価格変動は一時的なものであり、収束に向かうと沈静化する傾向にあるため、取引のタイミングには慎重さが求められます。
金の希少価値が上がり上昇する
将来的に金の希少価値は高まると予想されており、それに伴い価格が上昇すると考えられています。
金は限られた埋蔵量を持つ資源で、需要に対して供給が不足する可能性があります。
地球上の金が枯渇すれば再利用が主な手段となるため、金の希少価値はさらに高まるでしょう。そうなれば、価格もさらに上昇する見込みです。
金の採掘に多くのコストがかかり上昇する
金の採掘には膨大なコストがかかります。理論上では人工的に製造可能ですが、実現には至っておらず、新たに金を得るには採掘するしかありません。
これまでの採掘量は約18万トンで、現代技術で掘り出せる量は残り少ないとされています。将来的には採掘技術の向上が期待されるものの、海底などの困難な地域の金を掘るためには更なるコストが必要です。
このように採掘コストの増加は、金価格の上昇に影響を与えると予測されます。
金需要はなくならないので上昇する
金の需要は依然として高く、多様な用途があります。装飾品や投資対象に加え、医療や産業分野でも重要な役割を果たしています。
たとえば、スマートフォンやパソコンなどの電子機器にも金が使われており、私たちの日常における必需品として、生活に密接に関わっています。
このことから、金の需要がなくなる可能性は低く、人口増加や技術の進展により今後も価格が上昇すると予想されています。
金の投資家が増え上昇する
近年では、金を投資目的で保有する人が増加しています。安定した現物資産である金は、世界共通の価値を持ちどの国でも売却可能です。
さらに、株取引のように破綻や倒産のリスクがなく、経年劣化により価値が下がることもありません。また、インフレ対策やリスク分散の手段としても重宝されます。
このようなメリットから、金への投資家は今後も増えると予想されています。金の需要が増加すれば、その価格も上昇するでしょう。
短期的な金の価格予想が難しい理由
短期的な金の価格予想は、専門家でも難しいといわれています。では、なぜそれほどまでに困難なのでしょうか。
直近の世界情勢を正確に予想できないから
金相場は、米ドルを基準に決められているため、アメリカの金利が上昇するとドルが買われ、金の価格は相対的に下降傾向を示します。
そのため、世界情勢によって金の価格は変動します。戦争など地政学的リスクやコロナショックなどの経済危機であれば、金が安全資産として買われ価格が高騰します。
当然ながら、突発的な国際情勢を正確に予測するのは難しいでしょう。そのうえ、日本での金価格は為替相場の影響も受けるので、短期的な目線で予想するのは困難です。
投資家が金の売りや買いを行うから
需要と供給のバランスが崩れると、金の値崩れが起こる可能性があります。金は保有しているだけでは利益を生み出さないため、他の投資資産で利益を得るために売却されることがあります。
金が一気に売却されると市場に金があふれ、金相場が下落します。逆に金を購入する投資家が増えれば供給が追いつかず、金相場は高騰します。
近年では宝飾産業や工業分野でも金の需要が高まっており、相場は上昇傾向にあります。しかし、短期的にはバランスが崩れることもあるのです。
金価格が変動する5つの要因
金価格の変動には、多くの要因が複雑に絡み合い影響を与えます。では、特に重要な5つの要因をそれぞれ解説していきましょう。
需要と供給の変動
金の価格は需要と供給のバランスによって変動します。需要が供給を上回れば価格は上昇し、逆に供給が需要を上回れば価格は下落します。
つまり、金を買いたい人が増えれば価格は上昇し、売りたい人が増えれば価格は下落する仕組みです。金の需要は主に宝飾品や産業用、現物投資としての利用があります。供給要因には鉱山生産とリサイクルによる二次供給があります。
これらの要因が複雑に絡み合って金価格を左右しています。
【需要】宝飾品と産業用
金の最も一般的な用途は結婚指輪やネックレスなどの宝飾品です。2021年の年間約1,800トンであり、全体の需要の中で最も高い割合を占めています。
また、産業用として年間324トンほど利用され、主にパソコンやスマートフォンなどの電子機器や半導体、自動車部品に使用されています。
金は、宝飾品としての高い需要に加え、産業分野でも幅広く利用されており、その安定した需要が金価格に変動を与える要因となっています。
【需要】現物投資
現物投資としての需要は、投資家が金を実物の資産として購入し保有することを指します。宝飾品が金需要の多くを占める一方で、次に多いのは投資需要です。
2023年における現物金とETF(上場投資信託)の合計投資需要は約945.1トンでした。この数値には、ETFからの純流出量である244.4トンと、3%減少した金地金およびコインの年間投資需要も含まれています 。
【供給】鉱山生産
金は世界中の鉱山から生産されています。2023年の産出量は年間約3,600トンで、これは供給量全体の約8割を占めています。
2023年の統計では、中国が世界一の金産出国で、次いでオーストラリア、ロシアが続きます。アメリカとカナダは合わせて中国に匹敵する産出量があり、北アメリカも重要な産出地です。
かつて金産出量において、世界の約70%を占めていた南アフリカは、過剰採掘の影響で減少しています。
【供給】リサイクル
リサイクルは、使用済みの宝飾品や電子機器から金を回収し、溶解して再利用する二次供給です。特に電子部品は「都市鉱山」と呼ばれ、日本国内には約6,800トンの金が眠っているとされています。
2023年のリサイクル供給量は約1,200トンで、これは鉱山生産量の約三分の一に相当します。将来的に採掘が制限される可能性がある中で、リサイクルは持続可能な金の供給源として期待されています。
米ドルの値動き
金は米ドル建てで取引されるため、金と米ドルは逆相関の関係にあります。一般的に、米ドルが上昇すると金価格は下落し、逆に米ドルが下落すると金価格は上昇します。
そのため、金の取引には米ドルの変動要因を把握することが重要です。
米ドルの変動には米金利が大きく影響します。米金利が上昇すれば金は下落、米金利が下落すれば金は上昇します。従って、金相場を理解する上で、米金利の動向を注視することが不可欠です。
地政学リスク
金は「有事の金」と呼ばれ、地政学な不安が高まると需要が増加する傾向があります。
地政学リスクとは、特定の地域の政治的・軍事的な問題が、地域や世界経済に影響を与え、将来の予測が難しくなることを指します。たとえば、リーマンショックやコロナショックなどによる、世界的な金融危機がこれに該当します。
2023年にはロシア・ウクライナ問題や台湾問題が注目され、軍事的緊張が続いています。そのため、金価格は高値で推移し需要も増加しています。
インフレ
実物資産である金は、インフレ(インフレーション)時では価格が高騰します。これは、物価が上昇することで通貨の価値が下がるためです。
たとえば100万円で購入できた品物があるとしましょう。ところがインフレになると100万円では購入できず、値段が上がってしまいます。金は、こうした状況下でも、価値が落ちることがありません。
1970年代のオイルショック時に金価格が急騰した実績があり、2022年の世界的インフレでは、金価格が2023年に高値を更新しました。このようにインフレ対策として金の需要が高まる傾向があります。
新興国の動き
金は投資資産として高い需要がありますが、新興国の経済成長もその必要性を押し上げました。
2020年代に入ってからは、特に中国やインドの中央銀行は、米ドル資産から金への移行を積極的に進めています。
これらの新興国は今後の経済成長が期待されており、金の需要がさらに増加する可能性があります。また、新興国の需要は金の価格下支えにも寄与しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。金価格は過去10年で上昇し、20年で大幅な増加を見せました。今後も経済や地政学的な不安が続く中、金は安定資産として需要が高まり、さらなる上昇が見込まれます。
これからも、金市場の動向から目が離せません。