金・貴金属 2023年5月26日

ツタンカーメンの墓に使われていた大量の金はどのように集められたのか

#砂金

ツタンカーメンといえば、エジプトのミイラに関する映像や写真でよく登場する黄金のマスクが有名ですよね、このマスクに限らず古代エジプトでは様々な服飾品に金が用いられています。この大量の金は一体どのように集められたのでしょうか、今回はそんな古代エジプトの金についてご紹介していきます。

ツタンカーメンとは
古代エジプトと金
- 金採集に密接な関係があるのはナイル川？
- 金が重用されたのはその特性ゆえ
  - 金の美しい輝き
  - 金の不変性
まとめ

ツタンカーメンとは

ツタンカーメンといえば黄金のマスクなどで有名な古代エジプトのファラオ（王）の中でも特に有名な一人です。

お墓が発見されるまでは存在すら知られていなかった

ツタンカーメンは、今でこそファラオの中でもトップクラスの知名度を誇る人物ですが、ファラオとしての在位期間が10年弱と短く、若くして後世の王名表から名前が削除されたため、当人の墓が発見されるまでは人々にほとんど知られていなかった人物です。

なぜここまで有名になったのか

有名になった一番の要因は、ツタンカーメンの墓に残されていた5,000点以上の副葬品がほとんど無傷の状態で見つかった事だと思われます。この中には映像などでお馴染みのツタンカーメンのマスクなども含まれており、このマスクは当時としてはかなり純度の高い約K23の金が使われており、重量にして11㎏にものぼります。

このマスクは金をふんだんに用いられている以外にも、当時は貴重な宝石として認知されていたラピスラズリやターコイズ、トルコ石などで細かに装飾されています。

この他にも金や宝石をふんだんに用いた様々な副葬品が棺に納められており、棺の重量は1tにものぼったといわれています。これらの出土品は現在、エジプトのカイロ博物館に多く展示されています。同時に日本を含む諸外国の美術館や博物館に貸し出し、展示もされているため、実際に見たことがある方もいるのではないでしょうか。

完璧な状態の王墓は珍しい

ピラミッドをはじめとしたファラオの墓は他にも多数ありますが、ファラオの墓がツタンカーメンの時のように完璧な状態で見つかる事はほとんどありません。なぜなら、王の墓には金や宝石などをふんだんに用いた副葬品が埋められているため、盗掘などのターゲットにされる場合が多く、公式に発見された時にはほとんど何も残っていないからです。

ツタンカーメンの墓がこのような被害を受けなかった理由は大きく2つあります。ひとつはツタンカーメンの墓自体がラムセス6世の墓建設のための作業小屋跡の下という、非常に見つけにくいような場所にあったということ、ふたつめはツタンカーメンの父で前王であるアクエンアテンからツタンカーメンの後の王であるアイまでが異端として歴史から抹消されたため記録が残っておらず、後世にその存在自体が知られていなかったためと考えられます。

古代エジプトと金

上述したようにエジプトでは装飾を目的として金が使われてきました。しかし、この時代には現在の金採集方法としてメジャーな、金を鉱石から製錬するという技術はまだ存在していません。そのため、川などからナゲットとよばれる自然金を見つけたのではないかと考えられています。

金採集に密接な関係があるのはナイル川？

金の最も基本的な見つけ方は、砂金を見つけた川の上流をさかのぼって探していく方法で、古代エジプトでもこの方法で金が採集されていたといわれています。この方法は後世でも使われており、有名なカリフォルニアのゴールドラッシュも川から見つかった砂金からはじまりました。

古代エジプトで金採集の拠点となったのはナイル川ではないかといわれています。世界最長の長さを誇るナイル川はアフリカ東部を流れて、エジプトを経由しています。古代の人々はナイル川から砂金を見つけ、ファラオに献上していたと考えられています。この説を頷ける証拠として、2017年にはナイル川西岸の墓群で金細工職人夫婦の像が発掘されました。この墓群は3,500年ほど前に作られたと考えられています。

ここで採集された金は、ツタンカーメンの墓をはじめとした王墓に用いられていました。しかし、王墓には大量の金が必要となるため、古代エジプトの人々はかなり上流付近まで、金の採集に出向いていたのではないかと考えられています。この大量の金やピラミッドの建造などを考えると当時のファラオの権力が象徴されますね。