オーストラリアは世界トップクラスの金生産国
オーストラリアがなぜ、金の生産トップクラスであるのかは、国特有の土地柄にあります。まずは、オーストラリアと金の歴史を見てみましょう。
オーストラリアと金の歴史
オーストラリアの金生産の歴史は、1851年にニューサウスウェールズ州とビクトリア州で始まったゴールドラッシュがきっかけです。
19世紀は一騎当千のために世界各地で金の採掘が盛んに行われた時代であり、オーストラリアも金が見つかったことにより移民者が増え、金産業が発展しました。人口増加とともに、金の採掘技術と設備も発達していき、オーストラリアの経済成長は金産業とともに促進しました。
しかし、このような成長の裏側には犠牲もあり、先住民族であるアボリジニの迫害という問題が発生していました。金採掘による外来者たちによって、アボリジニの居住地は狭まれ、差別を受けるようになったのです。
経済発展の裏には、社会問題があったことも気に留めておくべきでしょう。
オーストラリアの金生産量
オーストラリアは金の生産量が多いことでも有名です。
2024年における金の生産量はおよそ290トンで、中国、ロシアについで3番目の生産量です。ゴールドラッシュ以降も巨大な金鉱山を複数発見し、金の採掘における主要な鉱山はオーストラリア各地に点在しています。
また、最先端の探査技術と採掘技術が取り入れられており、低コストで効率よく金を採掘する仕組みが構築されています。
このような土地柄と生産体制が整っていることから、金の採掘が堅調を維持すると見られており、将来的には生産量が世界一になるとの見方も出ています。今後も、世界の金市場に大きな影響力を与えるでしょう。
オーストラリアの代表的な金鉱山
オーストラリアには金が採掘できる鉱山が至る所にありますが、その中でも特に主要である金鉱山をご紹介します。どの鉱山もオーストラリアの金の産出量に大きく貢献しています。
スーパーピット鉱山(西オーストラリア州)
オーストラリアの中で最大の露天掘り金鉱山です。掘り進めることでできた巨大な穴は、宇宙からも見えるといわれており、オーストラリアの観光地にもなっています。
鉱山の管理は、ノーザンスター・リソーシズ(Northern Star Resources Ltd)の子会社であるカルグーリー・コンソリデーテッド・ゴールド・マインズ(Kalgoorlie Consolidated Gold Mines(通称:KCGM))が行っています。
露天掘りとは、地表から渦巻き状に掘り進める手法です。採掘コストが抑えられ、費用対効果が高いとされています。
ボディントン鉱山(西オーストラリア州)
ボディントン鉱山は、西オーストラリア州の州都であるパースから南東約130kmに位置する鉱山です。オーストラリア国内における最大級の金鉱山で、主に金と銅を主に生産しています。
この鉱山は、アメリカの鉱業大手であるニューモント・コーポレーション(Newmont Corporation)が100%所有しており、2009年から金の生産を行っています。
オリンピックダム鉱山(南オーストラリア州)
南オーストラリア州の州都アデレードから北西約560kmに位置するオリンピックダム鉱山は、金のほかに銀、銅、ウランが採れる地下鉱山です。オーストラリアに本社があるBHPグループ が所有しています。
特に銅とウランの埋蔵量が世界最大級で、鉱山の収益のおよそ70%が銅を占めています。銅の生産を倍増する計画も立てられているようです。
カディアバレー鉱山(ニューサウスウェールズ州)
ニューサウスウェールズ州オレンジ市から約25km西に位置する、州内で最大規模の鉱山です。アメリカのニュークレスト・マイニング・リミテッド(Newcrest Mining Ltd)が運営しており、年間でおよそ60万オンスの金を生産しています。
西オーストラリア州に次いで金生産が多く、ニューサウスウェールズ州の中でも重要な生産拠点となっています。
テルファー鉱山(西オーストラリア州)
テルファー鉱山は、西オーストラリア州北部にある金鉱山です。主に金と銅を生産しており、こちらもニュークレスト・マイニング・リミテッドが所有しています。
1977年から生産が行われていましたが、2000年に一度閉鎖しています。その後、再開し現在も採掘が続いています。
トロピカナ鉱山(西オーストラリア州)
西オーストラリア州カルグーリーから北東330kmに位置する金鉱山です。南アフリカ共和国にある金生産大手のアングロゴールド・アシャンティ(AngloGold Ashanti)とオーストラリア国内にあるレジス・リソーシズ(Regis Resources)の合弁事業(JV)として、金の採掘を行っています。
年間およそ60万オンスの金を生産している、主要な金生産拠点の一つです。
セントアイブス鉱山(西オーストラリア州)
セントアイブス鉱山は、西オーストラリア州にあるカンバルダから南へ約20kmの位置にあります。露天掘りと地下坑内から掘り起こす坑内掘りの両方を採用しており、2023年の金の採掘量はおよそ37万オンスです。
こちらの鉱山は、南アフリカ共和国の大手金鉱業企業であるゴールド・フィールズ(Gold Fields)が所有しています。
フォスタービル鉱山(ビクトリア州)
ビクトリア州ベンディゴの東にある金鉱山で、カナダの金生産大手アグニコ・イーグル・マインズ・リミテッド(Agnico Eagle Mines Ltd)が運営しています。2024年の採掘量はおよそ22万オンスとなっており、2005年の生産開始からおよそ440万オンスの金を採掘しています。
ビクトリア州の金生産の中軸にある鉱山です。
タナミ鉱山(ノーザンテリトリー州)
タナミ鉱山は、ノーザンテリトリー州にアリス・スプリングスの北西約530kmにあります。坑内堀金鉱山としてはオーストラリア国内最大級の生産規模で、2002年からアメリカの企業であるニューモント・コーポレーションが操業しています。
国の重要な金資源として機能を果たしている鉱山です。
オーストラリアで著名な金採掘企業
オーストラリアに拠点を置いている有名な金採掘企業をご紹介します。どの企業もトップクラスの上場企業です。
ノーザンスターリソーシズ(Northern Star Resources Ltd)
ノーザンスターリソーシズは、西オーストラリア州のスーパーピット鉱山などを保有しています。オーストラリアに拠点をおき、金鉱床に関する探鉱のほかに精製した金の販売を行っています。
2026年度に年間200万オンスの生産を目標を目指しており、2025年は精錬工場の規模を大きくし、金の生産量を増やす計画を立てているようです。
オーストラリアのほかに、アメリカにあるアラスカ州の鉱山を保有しています。
エボリューション・マイニング・リミテッド(Evolution Mining Ltd)
クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、西オーストラリア州に鉱山を保有している会社です。
金のほかに銅の生産も行っており、クイーンズランド州のマウント・ロードン鉱山では、マウント・ロードン揚水発電(MRPH)プロジェクトをICA・パートナーズ(ICA Partners)社と共同で進めています。
2025年度の金の生産量は、71万オンスから78万オンスを目標としています。
デ・グレイ・マイニング・リミテッド(De Grey Mining Ltd)
デ・グレイ・マイニング・リミテッドは、西オーストラリア州ピルバラ地域でヘミ・ゴールド・プロジェクトを進めていました。現在は、ノーザンスター・リソーシズに2025年5月5日付で買収され、事業を引き継がれています。
ヘミとは「ヘミモルファイト」と呼ばれる鮮やかなブルーが特徴的な鉱石のことです。ピルバラ地域で確認されたヘミは貫入岩を伴うタイプのものであり、金鉱化で金を取り出せることが期待されています。
鉱物資源量は、推定11.2百万オンスといわれています。
【2023年】オーストラリアで発見された巨大な金塊
2023年、オーストラリアで巨大な金塊が見つかり話題となりました。
発見された場所は、ビクトリア州の「ゴールデントライアングル」と呼ばれる地域です。驚くことにアマチュアの採掘者が、1,200豪ドルの金属探知機「マインラボ・イクイノックス800」を使って発見しました。
金塊の重さは4.6キログラムで、金の含有量は2.6キログラム、市場価値は日本円にしておよそ2,100万円にまで上ります。
「ラッキー・ストライク・ナゲット」と名付けられた巨大な金塊は、一般の人々にも衝撃を与え、ゴールドラッシュのように一攫千金の夢を膨らませる出来事となりました。
金の採掘は簡単ではない
オーストラリアは世界有数の金産出国であり、埋蔵量も2022年時点でおよそ8,400トンといわれています。
しかし、実際に今回のような金塊が見つかるのはかなり稀であるといえるでしょう。なぜなら、簡単に採れる所の金は人類によってあらかた採りつくされてしまっているからです。
1gよりも小さな粒程度であれば河川などで見つかる事は多いですが、このような大きな金鉱石は様々な条件や偶然が重なって新しく露出します。運よくそれを見つけない限り、お目にかかれないでしょう。
まとめ
オーストラリアは世界でトップクラスの金の生産国です。ゴールドラッシュの時代から金鉱山の開発が進み、現在も金の採掘によってオーストラリアの経済は潤っています。鉱物資源も豊富にあり、巨大な金塊の発見や鉱物の中に金が含まれているなど、思わぬところで金が見つかる可能性は十分にあります。そういう意味でもオーストラリアは、今後も金生産の中軸として市場に大きな役割を果たすことになるでしょう。