アマルガムとは
アマルガム(英amalgam)は、水銀と他の金属を混ぜ合わせた合金の総称で、語源は、ギリシャ語の「やわらかいかたまりを意味するmalagmaといわれています。水銀は他の金属との合金をつくりやすい性質があり、古来より使われていた合金で、水銀の性質上融点が低いため、常温下でも液状のままのアマルガム合金も多く存在します。
アマルガムがつかわれているもの
歯科治療用
歯の修復材料(いわゆる銀歯)にアマルガムを用いて歯科治療を行っていました。日本では、1970年代まで歯科修復材料として頻繁に使われていましたが、近年では水銀の害の問題が大きいため、あまり使用されていません。しかし、安価かつ加工が容易で歯髄刺激性がない物質のため、今でも使用している国は多いです。
金の純度上げ
金鉱石や銀鉱石はそのままの状態だと金や銀の成分はわずかしか含まれておらず、金や銀のみを抽出する必要があります。そこでこの水銀が使われました。鉱石に含まれる金・銀などの金属は、水銀と混ぜ合わせると鉱石から溶け出し、水銀アマルガムをつくります。そのアマルガムを熱することにより沸点の低い水銀のみが蒸発し、溶けた金属のみが残るという方法です。高度な装置や技術を必要とせず、17世紀以降のアメリカ大陸において用いられていた方法で、19世紀に起きたカリフォルニアのゴールドラッシュにおいても、このアマルガム法が金の採掘に用いられていました。しかし蒸発した水銀は毒性が高く、水銀中毒を発症する危険性があるため、現在ではあまり用いられていません。
古来の金メッキ
上述したアマルガム法に近いですが、日本では古来よりこの方法を用いて金メッキをしてきました。最古で確認されているのは古墳時代で消鍍金(けしめっき)ともよばれています。やり方としては純度を上げるのとほぼ同じで、金を水銀に溶かし、金アマルガムを造り、メッキ加工をするものに薄く塗り、水銀を蒸発させることで金を定着させます。
奈良の大仏はアマルガム法によってメッキされていました
国宝にも指定されている奈良県奈良市の東大寺大仏殿(金堂)の本尊である仏像、一般的に奈良の大仏で知られている巨大仏像は、当時としてはかなり珍しい(大型仏像としては初)消鍍金(けしめっき)が施されていました。当時の日本は金が採掘できないと思われていたため、金を採掘するために全国で金鉱脈が探されるなど大きな影響を与えています。
また、作業中の事故や消鍍金の溶剤として用いられた水銀による中毒のため、建立に至るまでに多くの人命が失われたとも言われる銅に含まれていた砒素と鍍金に使用された水銀による推定数百人の中毒患者のため、これを専門とする救護院のようなものも設けられていたといわれています。そうした困難を乗り越え、建立した仏像の巨大さと美しさに当時の人々が驚いたのは間違いないでしょう。
まとめ
今回はアマルガムについてご紹介しました。現在は水銀の毒性による影響を加味し、徐々に衰退しているアマルガムですが、その加工のしやすさから、古来より人々が求めている金と密接に関わってきました。それらの技術や失敗から現在の技術が生まれていることを今回の記事から少しでも知っていただければ幸いです。