目次
金先物取引とは?
金先物取引とは、なんとなく危険なイメージを抱かれている人も多いかもしれませんが、実際にどのような投資方法なのでしょうか。そこで、金先物取引を始める前に押さえておきたい基礎知識を説明します。
金先物取引の意味
金先物取引とは、将来の決められた日(決済期日)に、事前に約束した価格で金を買う、または売る取引のことです。約束した期日を迎えると約束した金額で取引を決済します。
決済方法も、売買価格差等に相当する金銭の授受を行う「差金決済」と、原資産の受渡しとその対価の授受による「受渡決済」の二種類の方法があります。
また、この取引は先物取引所で行われ、その価格は常に市場の需要と供給によって変動します。つまり、金相場の上昇下落のタイミングを見極めて取引し、利益を得ようとする方法です。
金先物取引の目的
金先物取引には「ヘッジ」と「投機」という二つの目的があります。
ヘッジの目的は、市場価格の変動やリスクから保護するために戦略を立てることです。企業や投資家は、金価格の上昇や下落による影響を最小限に抑えるためにヘッジを行い、経済的な安定を図ります。
一方、投機の目的は、金相場の推移を予測し、その変動によって利益を得ることにあります。
金先物取引の始め方
金先物取引を始める際には、まず証券会社等で取引口座を開設する必要があります。
口座開設は基本的に無料ですが、証券会社によってもサービスが異なるため、自分に適した会社を選びましょう。
次に、金先物取引の口座に証拠金(担保)を入金後、認証されれば取引を開始できます。証拠金やレバレッジによって取引額が変わります。
また、証拠金の必要額は定期的に見直されるので、そのたびに金額を確認して準備することが大切です。
金先物取引にかかるコスト
開設した口座の維持料と管理料は、基本的には無料です。売買手数料はかかりますが、金額は証券会社によって異なります。
<一例:楽天証券の場合>
商品先物標準銘柄 | 商品ミニ・スポット銘柄 |
---|---|
275円(税込)/枚 | 77円(税込)/枚 |
※手数料は変更される場合がありますので、取引の際には証券会社のウェブサイトを確認することをおすすめします。
金先物取引を行う条件
金先物取引には、取引単位や取引できる時間帯、場所など特定の条件があります。この条件を覚えることで、個人でも金の先物取引を始めることができるでしょう。
取引単位や証拠金
金は、キログラム(㎏)単位で取引されています。1kgを一枚、金ミニは100gを一枚と数えます。
2024年5月現在の価格は、1g 1万3,000円台であるため、一枚の価格は約1,300万円です。金ミニはその10分の1の価格となるため約130万円です。
先物取引はあらかじめ金の価格を決めて、将来に取引を実行します。すぐに全額を支払う必要はなく、証拠金だけで取引ができます。
また、金先物取引の証拠金は「AS-VaR方式」で算出されるため、週一回の更新となります。
金先物取引の場所や時間
1982年3月23日、東京商品取引所(TOCOM)で日本で初めて金の取引が開始されました。そして、2020年7月27日には大阪取引所(OSE)へ移管されています。
日本の取引時間は、日中が午前8時45分から午後3時15分、夜間が午後4時30分から翌朝の6時00分となっています。
長い時間帯にわたって取引が行われるため、さまざまな職種の人々が取引のタイミングを選ぶことができるでしょう。
金先物取引のメリット
金先物取引には、他の金投資方法と異なるメリットが二つあります。
・ハイレバレッジ取引
・買い、売り、どちらからでも取引を開始できる
これらは、先物取引だからこそできるメリットだといえるでしょう。
ハイレバレッジ取引でハイリターンを期待できる
金先物取引はレバレッジを効かせることで、通常よりも大きな利益を得られることが期待できます。
たとえば、一万円の資金でレバレッジをかけない場合は一万円分の取引になります。
もしもレバレッジを二倍にすれば、一万円の資金で二万円分の取引が可能です。つまり、利益が二倍になるという仕組みです。
このように、レバレッジの設定を高くするだけで「少額の資金で始められ、大きなリターンを狙える」メリットがあります。
レバレッジ:投資家が自己資金よりも大きな取引を行うことができる仕組み
買いだけでなく売りでも取引を開始できる
投資では、これから価格が上がると予想されるときに買いポジションを取ることが基本です。しかし、金先物取引においては、買いだけではなく、売りからスタートすることも可能です。
価格差が利益となる性質があるため、買いの場合は買値を上回れば利益に、売りの場合は売値を下回れば利益になります。
そのため、「相場環境に左右されず、常に取引のチャンスがある」ことがメリットなのです。
金先物取引のデメリット
金先物取引にはメリットだけではなく、デメリットもあります。
・ハイレバレッジのリスク
・中長期の投資には向かない
これらは、金先物取引における二つのデメリットだといえるでしょう。
ハイレバレッジ取引で大損する危険性がある
レバレッジをかけられることは、メリットであると同時にリスクにもなります。少額で大きな取引ができる反面、損失がでればその分ダメージを受ける可能性があります。
確かに大きなレバレッジで取引することで、一時的に大きな利益を得られるかもしれません。しかし無理な取引により、得た利益だけではなく元本まで失ってしまっては意味がありません。
そのためハイリターンでありハイリスクであることを理解したうえで、過剰なレバレッジをかけずに、リスクヘッジを図ることがポイントになります。
中長期投資には向いていない
金先物取引は基本的には決済期限が決められているので、中長期的な資産形成には向きません。前提として短期取引であるため、期限が来る前に決済する必要があります。
また、通常の先物取引とは少し異なる証券CFD取引なら、決済期限を設けていない証券会社もあります。
この証券CFD取引は、注文を入れてから翌日以降に持ち越すと、ファンディングコストがかかる場合があるため、いずれにしろ中長期投資には向いていないのです。
金先物取引が向いている人
人によっても投資のスタイルというのは異なるものです。現物取引が向いている人もいれば、先物取引が向いている人もいます。では、金先物取引はどんな人に向いているのでしょうか。
ハイリターンを狙っている人
金先物取引は、レバレッジが効くためハイリターンを狙うことができます。
たとえば、現物の金投資はレバレッジがかけられないため、利回りはどうしても低くなります。一方で金先物取引は、レバレッジの分だけ利回りを期待することができます。
レバレッジはリスクにもなりますが、上手に資金管理ができる人にとっては強い味方にもなります。そのため、できるだけ多くの利益を得たい人に向いているでしょう。
安全に取引したい人
金先物取引は、むやみなレバレッジを効かせなければ比較的安全な取引ができます。
金の価格は比較的安定しているので、大きく下落する心配は少ないといえます。価格変動の激しい銘柄と比べると、リスクへの対策を講じやすいのです。
値動きも緩やかなので、たとえ投資経験が少なかったとしても、焦らず着実に取引できるでしょう。
少額資金で始めたい人
取引のメリットであるレバレッジを活用すれば、少ない資金から始められます。証券会社によっては数千円から金先物取引を始めることもできるのです。
もちろん、証拠金維持率などを考慮すると、資金は多いことに越したことはありません。しかし、少額から金投資を始めたい人には適しているでしょう。
ただし、レバレッジはリスクもあるため、無理のない取引を行うことがポイントになります。
金先物取引をすると危険な人の特徴
投資として、金先物取引を選ぶと危険な人の特徴は三つあります。
・資金に余裕がない
・長期保有したい
・日課として相場市場をチェックできない
余裕資金がない人や、老後資金を地道に増やしたい人には向いていません。ゆっくりと長期的な資産運用をしたいなら、NISAやiDeCoなどの方法が適しています。
さらに、金先物取引は短期間での利益を狙うため、日々の値動きを確認できない忙しい人にも難しいでしょう。
先物取引の初心者は金がおすすめ
先物取引は簡単に始められますが、その分リスクも大きいので初心者には向いていません。しかし、すべての先物取引が向いていないわけではなく、中には相性の良い銘柄もあります。
その銘柄の一つが「金」です。初心者に金がおすすめなのは、価格変動が少なく、相場を予想しやすいからです。そのため、利益と損失の差が少なく、リスクを最小限に抑えることができます。
また、金は短期間での大きな価格変動がないため、落ち着いて取引に取り組むことができます。一分一秒が命取りとなるデイトレードほどの緊張感はありません。余裕を持って取り組めるので「金」がおすすめなのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は金先物取引について解説しました。レバレッジは間違えた使い方をすれば危険ですが、正しく活用すれば資金効率を上げられます。
投資先の一つとして、金先物取引を選択肢に加えても良いかもしれません。ただし、投資には必ずリスクが伴いますので堅実な取引を行いましょう。