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金は一体どこから

金は一体どこから

日本の金採掘に関しての現状と未来に期待される金採掘について簡単に解説いたします。

黄金の国ジパングは本当に金の国だった?

かつてマルコ・ポーロは日本を訪れ、「黄金の国ジパング」と伝えました。金箔で飾られた仏像や、中尊寺金色堂を前にすれば、その感想が出るのも当たり前かもしれません。しかし、果たして日本は本当に黄金の国だったのでしょうか?少し日本の金採掘の歴史を紐解いてみましょう。日本で金の採掘が盛んになったのは【佐渡金山】がきっかけになります。佐渡金山は日本の新潟県の佐渡島に金鉱山です。この佐渡金山は発見されてから、時待たずして大名徳川家康によって幕府の直轄領にされ、金を本格的に採掘するようになりました。

この当時の採掘方法には、簡単に採掘をすることができるとして有名な露天堀りが採用されていました。この佐渡金山で採掘された金の量は、最盛期で年間400kgでした。そしてこの金の採掘は江戸幕府が終わりを迎えるときまでの約270年間ずっと続き、その量は41トンにのぼると言われています。この金は徳川幕府の財政を支える一役を担いました。ですが、金の価値はもっと古い時代から注目されており、日本人が金資源の価値に気付いたのは、日本書紀の記述から西暦600年から700年頃ではないかと言われています。渡来人からもたらされた金の生産技術を用い、平安の頃には佐渡金山に関する記述が出るなど、積極的に金を採掘している様子が見て取れます。金鉱山の開発が飛躍的に伸びたのは戦国に入ってからと言われ、雄を競い合う各国の武将が自国の資金を高めるため、領内の金山を次々と発掘していきました。

しかし、明治以降になるとほとんどの金山は資源が枯渇し、現在日本国内で金が産出するのは鹿児島にある菱刈鉱山のみになってしまいました。菱刈鉱山は世界的にも稀に見るほどの金含有量の高さを誇り、一般的な金鉱山の約10倍の40g/tもの金を含む優秀な鉱山です。日本が金鉱山から産出する金はわずか年間8トン程度で、この菱刈鉱山から採掘されています。また、銅の精製時にも副産物として金が精製されるため、金鉱山を持たない製錬会社は銅鉱石から金を抽出しています。菱刈金山は優秀ですが、日本が黄金の国というにはたった一つの鉱山では説得力がありません。しかし実は、産出ではなく総量を見ると日本は現在も黄金の国なのです。日本が保有する地上資源として存在する金の総量は、なんと6800トン。これは全世界の現有埋蔵量の約16%にも匹敵します。過去ではなく、今、まさに、日本は黄金の国ジパングなのです。

現在金を産出する主な国を知ろう

現在、金を世界で最も産出しているのは中国です。その量は外務省の資料によれば2012年の時点で約400トンと日本の約50倍の産出量を誇ります。1970年台に産出量の7割を占めていた南アフリカは、現在は鉱山施設の老朽化や国内情勢の不安定化、電気供給の不安などからここ数年急速に産出量が低下し6位に転落していますが、先カンブリア紀に形成された400kmにも及ぶ金鉱床が集中しているため、現在も金にかぎらずプラチナなどの豊富なレアメタルを産出しています。現在2位と3位を争うのはオーストラリアとアメリカ合衆国でどちらも250トンと230トンと、中国には大きな差を付けられています。アメリカのあとはロシア、ペルー、南アフリカ、カナダと続き、8位のメキシコ以下は90トン以下となります。

現在、世界最大の産出国は中国と言って問題ないでしょう。中国は国内の金需要の高まりもあり、積極的に金鉱山とレアメタルの採掘を進めています。今後もしばらくは、南アフリカなどの今までのトップ産出国を抑えて中国産の金が市場の需要を満たしていくのは間違いありません。ところで金鉱脈は古い地層からしか算出しないのでしょうか?実は、海底にある熱水鉱床など、まだまだ様々な金鉱床が存在しています。技術の発展によっては、今後思わぬ国がトップ産出国になる可能性があるかもしれません。

都市鉱山という新しい存在

全世界で年間に使用しなくなった携帯電話の総量1万トンから1500キログラムの金が回収できると言われると、1万トンもあってたったそれだけ?と思われるでしょう。しかし、携帯電話は1トンあたりなんと150gもの金が含まれている、とてつもなく優秀な鉱脈でもあるのです。金は通常の鉱山から採掘される鉱石には1トン当たりわずか3~5g、優秀と言われる鉱脈でも10g程度しか含まれていません。前述の菱刈鉱山と比較しても3倍以上、他の鉱山に比べるとなんと30倍~50倍もの金を含んでいるのが、世界中で廃棄される携帯電話の基板なのです。金はパソコンや携帯電話、電子家電などの基板に多く使用されており、気付かないところでたくさん使用されている非常に身近な貴金属でもあります。

一方で、この基板を含んだまま廃棄されている電子機器は非常に多く、大量の金がそのままゴミとして捨てられてしまっているのです。近年、この存在に目を付け、金を含むさまざまなレアメタルを回収するビジネスが展開され始め、捨てられていく携帯電話などの電子機器類を「都市鉱脈」と呼ぶようになりました。前述の日本が保有する6800トンの金の大半はこの都市鉱脈が含有する金なのです。現在、市場の需要を満たす金の一部には、こうして回収された都市鉱脈生まれの金が流通しています。

新たな可能性?海底の金鉱脈「海底熱水鉱床」

金鉱産からは1トンの金に対し5グラム程度の金しかとれませんが、海底熱水鉱床からは倍以上の金がとれるとされています。2020年に奄美大島沖で発見された海底熱水鉱床は、高品位の金や銀が確認できました。ほかにも、今回見つかった海底熱水鉱床では金よりも希少とされるレアメタルの採掘もされています。錆びにくくしたり強度を高めたりできる素材であることから、レアメタルの幅広い利用価値にも期待の声が寄せられました。しかし、海底熱水鉱床の採掘は簡単ではありません。海底探査は宇宙開発よりも難しいとされており、当然海底熱水鉱床での金採掘も容易ではありません。

ゆくゆくは海洋鉱物資源の商業化を目指している日本。現在日本で行われている海底探査は技術の向上により、無人で行われています。海底に敷設し、水圧の耐久性低下から破断の恐れがあった海底ケーブルも使用しなくなりました。努力の一例に過ぎませんが、地道な進化を続けてきた日本だからこそ今後の発展にも多くの期待が寄せられるでしょう。

まとめ

かつて日本に存在した金鉱山は閉山し、現在も商業採掘をしている金鉱山はひとつしかありません。地下資源に恵まれない日本ですが海底の鉱脈へさらなる金産出の可能性を見つけました。日本は、現代に至るまで採掘技術の向上を繰り返してきた歴史があります。海底から多くの金が採掘できる技術を実現したとき、世界へ誇れる金産出国となるでしょう。

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