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時計の豆知識

時計の豆知識

日時計は太陽が照らないと時刻が分からないので、水や砂を利用した時計や灯油を燃やして灯油の減り具合から時間を計る時計などが考案されましたが、信頼性が低いものでした。そこで人間は水や砂などの流動物を使わない機械時計を発明しました。AD(西暦)1300年頃には重りを動力にした歯車機構を、棒てんぷと冠歯車からなる脱進機(だっしんき)の機構(歯車を間欠的に回転させるしくみ)によって規則正しく回転させて時刻を示す時計がつくられました。
教会の塔などに取り付けられるようになり、機械時計の時代が始まりました。1582年頃ガリレオ(イタリヤ)が振り子の等時性原理を発見、1656年頃ホイヘンス(オランダ)による振り子時計の開発によって、精度が画期的に向上する次世代の機械時計に引き継がれていきます。

グランドコンプリケーション

最近グランドコンプリケーションという言葉を耳にしますが、皆さんは何のことだかご存知でしょうか?時計業界では、重要な発明とされる複雑機能が6つあります。機械式時計でこの6大複雑機能のうち3つ以上搭載している時計をグランドコンプリケーションと呼びます。6つの複雑機能とは以下のものになります。

 

1.ムーンフェイス

月の満ち欠けを表示します。多くの場合、扇形の窓と月の絵を描いた円盤の回転で表示しますが、中には宝石をあしらった球体が回転するゴージャスなものもあります。

 

2.スプリット セコンド クロノグラフ

単なるストップウォッチではなく1回目の時間計測を行ったあと、その表示を残したまま別の針で2回目の計測を継続して行う機能です。レースで周回ラップを測るとき便利です。

 

3.ミニッツ リピーター

ボタンを押すと、音で現時刻を教えてくれる機能です。音の音色と鳴る回数で時刻を判断します。もともとは暗闇の中でも時刻を把握するために発案されたもので、機械式ではゴングを内蔵して、それをハンマーで叩く方法がとられます。

 

4.永久(パーペチュアル)カレンダー

大小の月の日数に対応して全月末の翌日に自動的に1日を表示でき、閏年調整のため4年に1度動く表示が付加されたカレンダー機構のことです。通常2100年まで無調整で対応できるものを指します。

 

5.ウルトラスリム

全パーツが極薄いケースに組み込まれたムーブメントのことです。明確な基準はないようですが、厚さが4mm以下のものを指すようです。しかし、ここまで薄くすると、他の複雑機構を組み込むことが難しいため、グランド コンプリケーションには殆ど使われません。ウルトラスリムの代表格として、ブランパンのキャリバー21が有名ですが厚さはなんと1.7mmかありません。

 

6.トゥールビヨン

脱進調速機(テンプとガンギ車、その他の歯車を組み合わせたもの)を1つのかごに収め、それ自体を一定の速度で回転させることにより、時計の姿勢によって生じる重力差でテンプの振動が変化するのを平均化させて自動補正する複雑機構です。6大複雑機能の中で最も製作が難しく、トゥールビヨンを組み込んだ時計は数百万~数千万円するものもあります。トゥールビヨンはフランス語で渦巻きを意味します。

オーバーホール

オーバーホールとは簡単に言えば、時計を分解して手入れすることです。車の場合は、オイルの入れ替えやブレーキパッドの点検等が行われますが、機械式時計の場合は、部品ひとつひとつに完全に分解して、洗浄し、再組み立て、注油が行われます。もちろんその過程で分解した部品の状態、動作状況、精度確認など、様々なチェックが行われます。

数多くの部品から成り立っている機械式時計の場合、機械が動けば必ず金属の磨耗が起こります。もちろん磨耗を防ぐために、稼動部にはオイルが塗布されていますが、完全に磨耗を防ぐには至らず、微細な金属片がオイルに混入していきます。これがオイルを劣化させ、さらに古くなったオイルはべとべとに固まって、機械の動きを阻害し、故障の原因にもなります。そこで機械の耐久性を高めて精度を維持してゆくために、汚れたオイルを奇麗に除去して、新しいオイルを塗布します。これがオーバーホールの最も重要な役割なのです。

オーバーホールの手順は、ケースやブレスレットなどの外観チェックから始まります。分解作業は、各部品の状態を見ながら慎重に行われます。不良個所が見つかればその都度、修理または部品交換をしていきます。全ての分解、不良個所の修正が終われば、洗浄作業に入ります。

ムーブメントの洗浄は、ケース、ブレスなどの外装部品とは別に、専用の自動洗浄装置で行われます。洗浄が終わり、十分に乾燥させたあと、組み立てが始まります。これも洗浄と並んで重要な作業です。必要な個所に、必要な量のオイルを注油しながら(多すぎても少なすぎてもダメ)、なおかつ部品と部品の隙間の微調整を行いながら組み立てて行きます。そして、テスターを使った精度チェックや、防水性能のテストおよび最終調整を行い、オーバーホールは完了します。オーバーホールに要する時間は、特に問題の無い場合、時計の分解、洗浄、組み立てに2~3日、精度チェックに4~5日かかり、トータルでどんなに早くても10日程度かかります。

精度チェックで問題が出たら、再度微調整を行い、ときには再度分解する場合もあります。また混んでいる場合、すぐに作業にかかれないこともありますので、そうした余裕も含めて、どこの時計店、メーカーでもだいたい1~2ヶ月位の納期をいってくるのが普通です。また、クロノグラフなどの複雑機構をもつ機種は3~6ヶ月位かかる場合もあります。

一般にオーバーホールは3~5年に一度の目安で行うべきです。長い間、オーバーホールしないでおくと、汚れや磨耗によって故障が起き易くなり、修理やパーツ交換の費用なども、オーバーホールよりずっと高くついてしまう場合があります。ロレックスの場合、2~3年毎にオーバーホールを行えば、30~40年は十分にもちます。

クォーツ時計

現在、世界で生産されている時計の90%以上はクォーツ時計です。一般にクォーツ時計は安価なものとして扱われており、時計専門雑誌でもあまり評価されていないようです。確かに、精巧な工芸品のように職人が組み立てる機械式と違って、クォーツムーブメントは工場で機械により大量生産されているものがほとんどのため、単に時間を知るための道具として見なされてしまうのは、しかたのないことかもしれません。

しかし、多くのデザイナーブランドでクォーツ時計をラインアップしており、カルティエ、ブルガリの場合、同じデザイン、同じサイズでクォーツ式と機械式を揃えています。価格もあまり変わらないことから、クォーツ式と機械式を同格に扱っていることがわかります。また、グッチ、エルメス、ショパールなどのように、クォーツ式の割合が圧倒的に多いブランドや、クォーツ式しか製造していないブランドも数多くあります。

クォーツ式の利点は、なんといってもその精度です。クォーツ時計の精度は、平均月差(1ヶ月の進み、遅れ)が0.3~1.5秒となるのに対し、機械式は平均日差(1日の進み、遅れ)が10~20秒で、クォーツ式は機械式の500倍以上の正確さを持っています。

また、小型、薄型にでき、時計のデザインの自由度が大きいことも利点です。外周をダイアの駒が動くショパールのハッピーダイアモンドはその代表で、クォーツムーブメントでなければ、実現できなかったでしょう。そして電池が切れるまで動き続けるため、メンテナンスフリーであることも大きな利点です。

機械式では、ゼンマイをフルに巻いても36~48時間で止まってしまいます。手巻きなら、毎日ゼンマイを巻く必要がありますし、自動巻でも、毎日8時間程度は腕に着けていなければなりません。休みに時計を1日しなかったら、止まっていたということもよくあります。当然、再度時刻合わせ、日付合わせが必要になり、メカに弱い人にとっては大変で憂うつな作業になります。

また、よくわかっている人でも朝の忙しい時に、時刻合わせなど、ゆっくりやっていられないでしょう。そういう点では、クォーツ時計は大助かりです。最近はエコ意識の高まりから太陽電池や自動巻と同じ方式で発電して蓄電池にため込む方式など、電池交換不要なクォーツ時計も出ています。

クォーツ時計の原理ですが、人工クォーツ(酸化シリコン)の単結晶に電圧をかけると、非常に高く安定した周波数で振動することを利用し、その周波数を電子回路で処理して1秒間に1回のパルスに変換し、ステップモーターを回転させて、針を駆動するというものです。アナログ(針表示式)クォーツ時計の場合、ステップモーターより先の構造は機械式時計とまったく同じです。よく、機械式時計と比べてクォーツ式時計は針がピッピッと1秒ずつ飛んでゆく、といわれますが、それはステップモーターの特性によるものです。

クォーツ時計の場合も、モーターより先の構造が機械式時計と同じなのでオーバーホールが必要ですが、電池交換以外は行われていないのが現状です。理由としては、ステップモーターが極めて正確なので、オイルの劣化による抵抗が増えても、時間の遅れがほとんど無いこと、ムーブメントの価格が安いため故障してもムーブメントそのものを交換する方が、分解修理するより確実で安上がりなこと、などがあげられます。

時計の磁気帯び

時計の精度を狂わせる要因の1つに磁気帯びがあります。以前は、時計の精度を狂わせる要因の大半は水、および衝撃でしたが、防水性能の向上、およびカシオのGショック等の対衝撃性を備えた時計が開発されたことにより、これらの割合は低くなってきています。代って急浮上しているのが、「磁気帯び」なのです。

ここ十年の間に、パソコンや携帯電話など、強い磁気を発生する機器が身の回りに急速に増えました。そして、時計もその強い磁気にさらされるようになったのです。水や衝撃とは違い、磁気は目に見えず、いつのまにか時計内部に入り込み、残留してしまいます。

また、すぐに外的障害が現れるわけではありませんので、余計に厄介です。時計が磁気を帯びてしまうと基本計時(規則正しく時間を刻む機能)が乱れて、時刻合わせを何度してもすぐに時刻が狂うようになってしまいます。磁気による影響は、機械式、アナログ式クォーツ、デジタル式クォーツによって異なります。

まとめ

高級時計は一生ものといえる逸品ですから、本当に良いものを慎重に選びたいものですよね。自分自身が十分に納得した品物を購入するためには、まず、時計についての基礎知識を持っておくことがおススメになります。

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