カジュアルラインの人気バッグ「エールライン」とは

エルメスのスピリットは、エレガントでユニークなプレイフル（遊び心）を忘れないことです。そのプレイフルで実現したのが、エルメスのエールバッグです。1998年の登場と共に話題を集めたエルメスのエールバッグは、バッグのハンドルやフラップを分解できるほか、好みの素材や色を選んで組み立てることができる斬新なハンドバッグです。ここでは、そのエールバッグの特徴や中古市場における相場動向などを紹介していきます。

エールバッグはハンドルやフラップ、ボディ（バッグの本体）など、すべて分解と組み立てができます。ボディは色や素材違い、サイズ違いなど、2種類がセットされています。ばらばらになったブランドバッグを見る機会は少ないため、誰もがびっくりします。

1998年に最初のエールバッグが発売されました。それまでのブランドバッグは、完璧に組み立てた完成品を販売するのが当たり前でしたが、バラバラに分解できたり、自由に組み立てられるバッグは、たいへんな話題となりました。

色や形が異なる替えのボディが付属されているため、その日の気分や用途に合わせてコーディネートを選ぶことのできる斬新かつ機能的なバッグです。エールバッグは基本的にボディ部分がキャンバス素材、ハンドルやストラップなどのパーツはレザー素材のものが主流となっています。キャンバス素材はカジュアルな印象になりがちですが、エルメス独自のキャンバス素材とレザーを組み合わせることで上品さと高級感が演出されています。こういったエルメスならではの斬新な発想が当時大きな話題を呼び、今でも高い支持を集めているバッグとなっているのです。

また発売当初は10万円台で購入できたため幅広い年齢層に支持され、上記の要因も相まって瞬く間に人気となり、エルメスのアイコンバッグとして広く認知されていきました。その後、2010年ごろに販売終了となりました。

廃番後もエールバッグの購入希望者が多く、再販の要望が多くすぐさま再販の流れができました。再販したエールバッグの名前は「エールバッグ・ジップ」です。これは、背面にファスナー付きのポケットがついた、新しいタイプのエールバッグです。おそろいのストラップ付ポーチやショルダーストラップも付属しています。販売終了のエールバッグとの違いは以下の3点です。

① 胴部分の付け替えバッグがなくなった

② 背面にポケットが付けられた

③ インバッグとして使えるポシェットが付属品になった

上記のように付け替えバッグとしての機能はなくなりましたが、小さい物を整理して入れることができるようになり、よりデイリーユースに寄り添う形に機能性が向上していると言えます。定価は2022年2月現在で約30万円前後と、1998年の発売当初と比較すると上がっていますが依然として人気が高いバッグです。

バリエーションも豊富で使い分けの仕方で選べるエールバッグ

エールバッグはスタンダード以外にも、カバス・アド・ジップといった個性豊かなバリエーションが展開されています。カバスは、フラップのないオープンタイプで大きさの違うボディが付属されており、バッグからスムーズに小物類を取り出せる点が便利です。ベルトを外したりフラップを開けたりといったエルメス独特の動作はできませんが、素材とデザイン性に高級感があるので、上品で優美な印象を与えることが可能となっています。

アドはサイズ違いのバッグが付属するリュックタイプのバッグで、ハンドルがついているためハンドバッグとしても使うことが可能です。手が塞がるのは困るという女性に最適でしょう。ジップは、背面のファスナー付きポケットが大きな特徴となっており、付属のストラップを利用することでショルダーバッグとしても活用することができます。

エールバッグは、その日の気分や用途によって2種類のパターンが楽しめるところが魅力ではありますが、初めて手にした女性は分解や組み立てができるその特徴に驚くことも少なくないでしょう。その分自分で分解したり組み立てたりという作業ができるのか不安になる人も多いようです。

しかし、エールバッグはシンプルな構造となっているため、何度か試すとすぐに慣れることができます。また、バッグを購入する際に悩みがちな色の選択に関しても、レッド系とオレンジ系などの個性的な色とブラック系やナチュラル系などといった無難な色との両方をセットしたタイプから選ぶことができる点が魅力です。

無難な色のバッグが欲しい一方で他の人が持っていないような色のバッグが欲しい場合でも迷う必要がありません。その日の気分やコーディネートに合わせて2種類の色を使い分けることが可能になっています。

気分や好みに合わせて、エールバッグの4つのサイズ

エールバッグの多くは、ハンドルやフラップがレザー、ボディ部分がキャンバス地です。色やサイズ、素材の違う2種類のボディがついているので、気分や好みに合わせて交換できます。まずは人気を博した旧型からご紹介いたします。

■GM

・高さ33cm×幅50cm×奥行25cm

・高さ41cm×幅50㎝×奥行25cm

エールバッグ最大のサイズです。高さの違うボディが、2種類ついています。JIS規格のB4サイズが257×364mmですから、どちらもB4ファイルが丸ごと入る大容量です。GMサイズはかなり大きく、2泊3日程度の旅行であれば荷物がすべて入るくらいの容量があります。ボストンバッグの代わりとして旅行のお供に最適です。日本での販売は少なく、海外での販売が主です。

■MM

・高さ30cm×幅38cm×奥行13cm

・高さ38cm×幅38cm×奥行13cm

日本でも入手しやすく、ボディの高さが30cmと38cmの2種類あります。JIS規格のA4サイズは210×297mm、A4ファイルが余裕で入る大きさです。A4ファイルが入るサイズは、ビジネス用のバッグに必須の条件とも言えます。エルメスのバッグをビジネスに使いたい女性に、大人気のサイズです。MMサイズからは本体のバッグと替えバッグで縦のサイズが異なります。カラーだけでなくシルエットも変わるので、バッグを変えるだけでコーディネートがガラッと変わります。

■PM

・高さ25cm×幅30cm×奥行10cm

同じ大きさで、色違いや素材違いのボディが2種類ついています。Vogueなどのファッション雑誌が入るくらいのサイズです。お買い物やビジネスというより、デートなど荷物をつめこまない外出に向いています。肩掛けショルダーとしてもハンドバッグとしても使えるPMサイズは、持ち運びやすさと容量を兼ね備えた、まさにデイリーユースにちょうど良いサイズ感です。

■TPM

・高さ20cm×幅15cm×奥行7cm

エールバッグでもっとも小さい、可愛らしいサイズです。色違いや素材違いで、同じ大きさのボディが2種類ついています。ハンドルがないタイプですが、ストラップをつけてショルダーバッグとして使えます。最もコンパクトなTPMサイズは、バゲットバッグを彷彿とさせる縦長のシルエットです。ちょっとしたお出かけのアクセントにピッタリです。ビジネスにもおでかけにも、人気の新型のご紹介です。

■PM

・横×縦×幅：約30cm×25cm×10cm

エールバッグ ジップPMは、エールバッグとほぼ変わらないサイズ感のまま、背面のジッパーポケット+ポシェット付きで見た目以上に容量があり、小回りの利くバッグに進化しました。2WAYで使える点も魅力的で、いつも通りの日常に特別感を与えてくれます。

■MM

横×縦×幅：約38cm×34cm×14cm

PMサイズよりも大容量になり、荷物が多くなってしまったときにも安心なサイズ感のMMサイズは、女性にはもちろん、男性にもおすすめです。

素材・バリエーションについて

エールバッグはキャンバス生地を用いたバッグと紹介しましたが、キャンバス生地と言っても様々な種類があります。以下にエールバッグで用いられる代表的な素材や素材ごとの違いを細かく紹介します。エールバッグには、カデナのないオープンタイプ、カデナのついたタイプ、ショルダータイプなどがあります。自由に分解・組み立てができること、2種類のボディから自由に選べることは共通です。

■エールバッグ カバ トワルオフィシエ

横×縦×幅：約41cm×21（30）cm×16cm（）内は付属バッグのサイズ

通常のエールバッグよりも横長になり、よりショルダーバッグとして使いやすい形です。マチが広くとられているため、替えバッグに付け替えるとさらに高い収納力を発揮します。フラップのないオープンタイプで、サイズ違いのボディがついています。エルメス独特のベルトを外して、フラップを開けて・・・というしぐさはできませんが、素材とデザインに高級感があるため、エレガントな雰囲気を失うことはありません。なにより、バッグからスピーディに物を取り出せるメリットがあります。

■エールバッグ（サック）アド トワルアッシュ

横×縦×幅：約29cm×26（35）cm×12cm（）内は付属バッグのサイズ

アド（A Dos）のDosは背中という意味のフランス語で、その名の通りリュックタイプの構造です。キャンバス生地で軽く、そのうえ耐久性のあるトワルアッシュを用いているため実用性も兼ね備えています。エルメスのアイコンであるカデナやベルト、フラップもついているリュックサックです。エルメスのカデナやベルトが好きだけど、手がふさがるのも困るという女性に、大人気のタイプです。ハンドルがついているので、ハンドバッグのように手に持って使うこともできます。

■エールバッグ ジップ キャビン トワルミリタリー

横×縦×幅：約48cm×40cm×22cm

ボストンバッグサイズのエールバッグ ジップが”キャビン”です。エールバッグのGMサイズと比べるとやや横長なシルエットになり、長方形のデザインとなっています。背面のジッパー付きポケットもサイズに合わせて大きくなっており、たくさんの荷物であってもすっきりと整理して収納できるのが魅力です。前から見ると普通のエルメスのバッグですが、後ろにファスナー付のポケットがついています。付属のストラップをつけて、ショルダータイプとしても使えます。エルメスとしては珍しく、ファスナー付きのポーチがついていることでも話題を呼びました。

内縫いと外縫い

エールバッグ ジップにはバーキンやケリーのように内縫い／外縫いの違いがあります。

内縫い：エールバッグ ジップ トワルミリタリー

縫い目を内側に織り込んでいる方が、若干カジュアルな印象になります。日常に溶け込むようなゆったりとしたバッグを探している人にとっては、内縫いのほうがイメージに近いバッグではないでしょうか。

外縫い：エールバッグ ジップ トワルオフィシエ

縫い目が外から見えるように真っ直ぐ縫い付けてあり、内縫いと比較してかっちりとした印象があります。デイリーユースの中にも、少しフォーマルな印象を求めている人には外縫いをオススメします。

遊び方は自由、エールバッグで遊ぶ3つの方法

エルメスのエールバッグは、いろいろな遊び方で楽しむことができます。遊び方は思いつくまま自由ですが、誰でも簡単にできる遊び方を3つご案内します。

遊び方① さくっと組み立てて、お出かけする

エールバッグを初めて見た女性は、分解や組み立てができることにびっくりします。「これを自分で分解したり、組み立てたりできるのかしら？」と不安になるようです。ところがこれは、バラバラになったブランドバッグを見たのが初めてなので驚いただけ、エールバッグの構造はシンプルなので、何度かやってみるだけで、すぐに慣れることができます。その日の気分やファッションにあわせて、さくっと組み立てて出かけることも可能です。

遊び方② エルメスの職人技を鑑賞する

エールバッグが手に入ったら、バッグの部品を1つずつチェックしてみてください。形がキレイだったり、素材の手触りが良かったり、チープなバッグの部品と見比べると、より違いが判りやすくなります。エルメスがエールバッグを開発できたのは、部品の一つずつが、どこから見てもキレイで格好良いからです。もしエルメスのバッグの部品が美しくなかったら、分解できるバッグを作ってもサマになりません。エールバッグの部品のキレイを作り出したのは、エルメスのスタッフや職人の技術です。

遊び方➂ 2種類の色を使い分ける

エルメスのバッグを買う時に悩ましいのが、色の選択です。「他の人が持っていない色が欲しい」という気持ちがある一方で、無難な色のバッグが必要な時もあります。ところがエールバッグには、この悩みを解消できるタイプがあります。レッド系やオレンジ系などの個性的な色と、ナチュラル系やブラック系など無難な色と、両方をセットしたタイプがあるからです。

また、エールバッグで遊ぶ方法の一つに、エルメスのチャームやアイテムを合わせる方法があります。エルメスのバッグと同じ色や素材で作られているので、テイストの相性が抜群です。エルメスのチャームでおすすめなのは、ロデオチャームです。エルメスのバッグと同じ色や素材で作った、可愛い馬のチャームです。エールバッグと同じ色のロデオチャームをつけても良いし、あえて違う色をつけるとファッションのポイントになります。

エルメスのバッグアクセサリーに使えるのは、ロデオチャームだけではありません。ハートがモチーフのプティアッシュ ハート、犬やジョッキー（騎手）をモチーフにしたチャームなど、いろいろなタイプがあります。スカーフのツイリーやヌーパピヨンで、バッグのハンドルを飾る方法もあります。バッグのアイキャッチとなるだけでなく、傷つきやすいハンドルを保護する効果もあるそうです。エルメスの革小物には、キーホルダーやブックマーカーなど、バッグのアクセントになるものがあります。

たとえばレトル・オ・カレは、エルメスらしい色と形で、DやKなどアルファベットの文字をデザインしています。お気に入りのアルファベットがあったら、合わせると良いかもしれません。

また、他のバッグと個性をつけて楽しみたいならエルメスのバッグインバッグを使ってみることです。バッグを見ただけでは判らない、ないしょの遊びになりますが、他のバッグインバッグを使う時とは、なぜか気分が違います。エルメスはバッグのブランドで、バッグインバッグは売っていない、と思っていませんか。ところがエルメスでは、「フールビ 20」、「フールビ 25」というポーチを販売しています。エルメスが選びぬいたとっておきの素材で作った、ジャストサイズのバッグインバッグです。

■ポーチ フールビ20

サイズ：H16×W20×D8cm

バーキン25、ケリー32などにジャストサイズです。サイズによっては、エールバッグにも使うことができます。カラーバリエーションは以下3種類です。

・トワル・シェヴロン/バレニア（カラー：ナチュラル/フォーヴ）

・シルク/ヴォー・バレニア（カラー：オレンジ＆フォーヴ）

・シルク/ヴォー・バレニア オン・ア・サマー・デイ プリント（カラー：トスカ＆ブルー パン＆フォーヴ）

■ポーチ フールビ25

サイズ：H20×W25×D10cm

バーキン30、35、ケリー35などにジャストサイズです。サイズによっては、エールバッグにも使うことができます。カラーバリエーションは以下4種類です。

・トワル・シェヴロン/バレニア（カラー：ナチュラル＆フォーヴ）

・シルク/ヴォー・バレニア（カラー：オレンジ＆フォーヴ）

・シルク/ヴォー・バレニア オン・ア・サマー・デイ プリント（カラー：トスカ＆ブルー パン＆フォーヴ）

・シルク/ヴォー・バレニア（カラー：ブルー・ニュイ＆フォーヴ）

エールバッグで楽しむ、エルメスのプレイフル

エルメスを代表するキャンバスバッグの1つ、エールバッグをご紹介しました。遊び心にあふれたエールバッグも、実用性が大幅に向上したエールバッグ ジップも、それぞれ似ていながらも独特の良さを持った名作です。特にエールバッグは自分で組み立てられるという唯一無二のバッグであると同時に、生産が終了しているため今後の流通量は減っていく希少性の高い一品と言えます。エールバッグの楽しみ方は、分解したり組み立てたり、2種類のボディを使い分けるだけではありません。エールバッグが分解しても組み立てても面白いのは、部品の1つずつが美しいからです。

部品を見ても、完成品を見ても美しいという、エルメスの自信のあらわれです。エルメスのチャームやアクセサリー、バッグインバッグをプラスすれば、遊びの選択肢はさらに広がります。エルメスの不朽のスピリット・プレイフルを、エールバッグで存分に楽しんでください。

エルメスのエールバッグは、自分で分解や組み立てができる2WAY仕様のバッグとなっているため、その日の気分や用途に合わせて使用することができます。バリエーションも豊富でバッグの素材や色も変更できるため、コーディネートによって変化を加えるほか、無難な色を選ぶことでプライベート用だけではなくビジネスバッグとしても活用することができるでしょう。廃番後も再販の要望が多かったほど人気の高いモデルのため、中古市場においては今でも需要があるアイテムとなっています。