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プラチナの過去10年の価格推移
プラチナの10年間の推移を年代別に以下の表にまとめました。こちらは、2015年1月から2024年7月19日現在までの最高価格と最低価格のデータです。
2016年以降に大きく下げているのは、チャイナショックなどの経済不安が原因として考えられます。
そして、2020年以降は顕著に上昇を見せていますが、これはコロナ禍明けの経済回復が要因として挙げられます。以下の表からも、プラチナ相場は金と比べても価格変動を起こす傾向があるのもわかります。
プラチナ価格 | ||
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最高価格 | 最低価格 | |
2024年 | 5,877円 | 4,584円 |
2023年 | 5,197円 | 4,289円 |
2022年 | 5,076円 | 3,841円 |
2021年 | 4,798円 | 3,536円 |
2020年 | 3,921円 | 2,331円 |
2019年 | 3,591円 | 2,961円 |
2018年 | 3,843円 | 2,970円 |
2017年 | 3,992円 | 3,421円 |
2016年 | 4,072円 | 3,333円 |
2015年 | 5,193円 | 3,504円 |
参考元:株式会社ネットジャパン
プラチナの価格はなぜ高騰している?
2024年のプラチナ相場が高騰している要因の1つに、コロナ禍からの景気回復が挙げられます。2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中の経済が停滞し、景気後退に陥りました。
しかし、経済活動が回復すると、自動車産業をはじめとするプラチナの需要が増えたことで、価格上昇につながったと考えられます。
また、プラチナは自動車産業だけでなく、産出国の経済状況や財政状況によっても、価格変動が起こることもあります。
【価格予想】プラチナの価格はこれからどうなる?
近年、プラチナの価格が目立った高騰を見せていることから、資産としても注目されています。では、今後プラチナ相場はどうなるのでしょうか。さまざまな角度から考えていきましょう。
短期予想:上昇が継続する可能性あり
短期的に見た場合、プラチナ需要が増加することが考えられます。2024年現在、コロナ前と比べても世界経済は回復傾向にあり、自動車をはじめとする工業需要が高まる可能性が十分に予想できるからです。
さらに、水素社会の実現に向けた世界的な脱炭素化推進や燃料電池の普及により、プラチナ需要の拡大が期待できます。
また、インフレによる物価高騰、ロシア・ウクライナ情勢の悪化、超過需要による供給不足を考慮すると、今後もプラチナ価格が上昇する可能性が考えられます。
長期予想:どっちに転ぶか不透明
プラチナ価格の長期的な予想は不透明と言えるでしょう。世界的に脱炭素社会の推進が進んでいるものの、燃料電池自動車の普及が実現できるかどうかは、現段階では明確な見通しが立っていません。
もし燃料電池自動車が普及しなければ、プラチナ価格に悪影響を及ぼす可能性があります。
しかし、脱炭素社会が一層進んだ場合は、産業分野におけるプラチナ需要が高まり、価格が上昇する可能性を秘めています。
20年後ガソリン車廃止でプラチナ相場は上がる予想
20年後のプラチナ相場は、ガソリン車の廃止により上昇することが予想されます。例えば、日本の経済産業省は、脱ガソリンを目標に、2035年には販売する乗用車のすべてを電動車にすると発表しています。
一方、イギリスなどの主要国は、ガソリン車やディーゼル車の新車販売を2035年までに、世界全体では2040年までに停止することを目指しています。
このように、すでに世界中でガソリン車からの離脱の動きが強まっています。そのため、これから10年、20年先を見据えると、現在よりもプラチナ相場が上昇することは十分期待できるでしょう。
今後のプラチナの価格に影響を与える要因
プラチナ価格が上昇するという見解が有力だと考えられますが、金とは異なり、さまざまな理由で変動する資産でもあります。そこで、今後のプラチナ価格に影響を与える要因を5つご紹介します。
パラジウムからプラチナへの代替需要
昨今、自動車産業では排ガス媒体に利用する素材として、パラジウムからプラチナへ切り替える動きが見られます。
以前は安価だったパラジウムが利用されていましたが、2016年以降、パラジウムの価格が高騰しました。そして、2018年から2023年まではプラチナの価格を上回っていました。
そのため、近年、パラジウムからプラチナへ切り替える動きが強まっています。それに伴いプラチナの価格が高騰し、パラジウムの価格が大きく下落しました。2024年7月現在では、プラチナがパラジウムの価格を上回っています。
米国の金利
アメリカの高金利維持により、プラチナ価格が下がる可能性が考えられます。一般的に、金利が引き上げられると景気が減速し、商品需要が低迷します。
そのため、金利引き上げにより、自動車の生産が減少すれば、プラチナ価格は下落する可能性があります。
このように、アメリカの金利政策はプラチナ価格に大きく影響します。2024年7月現在は7会合連続で金利据え置きが続いていますが、今後、高金利が維持され、自動車産業が低迷した場合、プラチナ価格が下がることが懸念されます。
自動車産業の需要
景気回復により自動車産業の需要が増えれば、プラチナ価格が上がる可能性があります。それは、金など他の貴金属と比べて工業需要が高く、実需の影響を強く受けるからです。
また、プラチナの全需要の約6割が工業用途で、そのうち4割が自動車産業で利用されています。
そのため、自動車産業の影響を受けやすいことがわかります。このように、景気が回復し自動車需要が増えることで、プラチナの実需が高まり、価格上昇が見込まれます。
脱炭素対策での需要
脱炭素対策に伴う需要拡大が、プラチナ価格上昇のカギとなるでしょう。プラチナは、脱炭素対策において期待されている燃料電池やグリーン水素の水電解装置に使用されています。
そのため、燃料電池やグリーン水素の普及が進むと、さらにプラチナの需要が拡大すると予想されます。これにより、プラチナ価格が現在よりも大幅に上昇する可能性があります。
プラチナ産出国の情勢
プラチナは、産出国の情勢により大きな価格変動を起こすことがあります。過去には、主な産出国である南アフリカの鉱山が稼働停止になったときは、プラチナの供給が追いつかず価格が高騰しました。
一方で、同国の通貨(ランド)の価値が下落したことで、プラチナ価格も下がったこともありました。このように、プラチナ産出国の経済動向がプラチナ価格に大きな影響を与えることがあります。
プラチナ消費国の情勢
日本や欧州、中国など、プラチナの消費国の景気も価格に影響します。例えば、世界各国が金融緩和による経済活性化を行った際には価格が上昇しました。
これは、これらの消費国の経済が活性化し、工業需要が拡大したためと考えられます。
反対に、新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化は、世界各国の経済を低迷させ、プラチナ価格は下落しました。このように、プラチナは消費国の動向によって価格変動を起こしやすい特徴があります。
これまでのプラチナの価格変動
プラチナは、これまで急騰や急落を繰り返してきました。では、過去にはどのような理由で価格変動が起こったのでしょうか。そこで、2002年から2024年現在までの世界情勢とプラチナ相場を振り返り、当時の様子を確認しましょう。
【2002~2008年】世界経済の成長
2002年以降、世界経済はITバブルのショックから回復し、プラチナの需要が増加しつつありました。
当時、世界経済をけん引していたのはBRICsと呼ばれる国々で、ブラジル、ロシア、インド、中国などが著しい成長を遂げていました。
緩やかに上昇していたプラチナ価格は2007年後半から急騰し、2008年には最高値を記録しました。これは、南アフリカの電力不足問題や一時的な鉱山閉鎖が原因として考えられています。
【2008~2011年】リーマンショックでの急落と回復
2008年9月に起こったリーマンショックがきっかけで世界は大不況に陥りました。プラチナ相場はその直前から下落傾向にありましたが、この世界的な金融危機により、2008年9月に急落しました。
その後、2008年10月には最高値の半分以下まで下落しました。2010年に5,000円台まで回復したこともありましたが、リーマンショック以降、最高値の7,000円台に戻ったことはありません。
【2011~2020年】世界経済の鈍化と実需の減少
リーマンショック以降、徐々に回復基調にあったプラチナ相場ですが、2014年以降は地政学的リスクの悪化や世界経済の低迷により大きく下落しました。2014年2月にウクライナ紛争が勃発、同年夏には中東問題が起こり、地政学的リスクが拡大しました。
さらに、2015年にはチャイナショックにより中国株価が暴落し、世界経済の低迷が起こりました。
プラチナ消費国である中国の経済が落ち込んだため、プラチナ価格も大きく下落しました。また、プラチナの主要産出国である南アフリカの通貨(ランド)の価値が下落したことも、プラチナ価格下落に拍車をかけました。
【2020年】新型コロナウイルスの拡大
2020年の新型コロナウイルス感染拡大により、プラチナ価格が下落しました。この背景には、自動車産業の落ち込みと南アフリカの自国通貨(ランド)の急落が考えられます。
コロナ禍による自動車需要が低下に伴い、排ガス処理に利用されるプラチナの流通量も減少し、価格の下落が起こりました。
そして、プラチナ産出国である南アフリカで新型コロナウイルスが流行すると、投資家による資金流出により、自国通貨のランドが急落しました。それにより、プラチナの輸出量増加の観測が高まり、価格が押し下げられることとなりました。
【2022年~】ウクライナ情勢や米金利の上昇
2022年前半のプラチナ相場は、ロシア・ウクライナ情勢の悪化により一時的に上昇しましたが、その後は米金利の上昇に伴う米ドル高で停滞気味となりました。
また、2024年5月にも上昇を見せましたが、全体的に見ると方向性がなく、目立ったトレンドは出ていません。現在は中東情勢の悪化が懸念されていますが、その影響は限定的で、今後の価格動向が注目されています。
プラチナが無価値になる可能性はある?
プラチナが無価値になる可能性は極めて低いと考えられます。確かに、価格変動の大きな貴金属であるため、保有している方は不安に感じることがあるかもしれません。
しかし、プラチナは実物資産としてモノ自体に価値があります。また、その生産量は金よりも少なく、非常に希少価値が高いです。
さらに、世界中の産業を支える重要な素材でもあります。そのため、短期的に価格が大きく変動したとしても、全く価値が無くなることは考えにくいのです。
プラチナの買い時と売り時の見分け方
プラチナの売り時・買い時を見分けるには、為替レートから円安・円高を判断することが重要です。
例えば、2024年7月現在、日本は円安傾向にありますので、プラチナは「売り時」と判断できます。プラチナ価格は米ドルから日本円へ換算して決まるため、円安になるほど日本でのプラチナ価格は上昇します。
ただし、プラチナは世界経済の影響も受けやすいため、価格変動に備えて市場の動向を注視しながら売買のタイミングを見極めることもポイントです。
まとめ
今回は2024年のプラチナ相場の予想についてご紹介しました。コロナ禍明けの現在は景気も回復し、自動車需要の高まりとともにプラチナ相場も上昇しています。
今後、燃料電池やグリーン水素の普及が本格的に始まれば、プラチナ価格はさらに上昇するでしょう。ただし、経済状況によって左右されやすい特徴があるため、取引する際には細心の注意が必要です。