はじめに
高級ブランド品は、定価が高額であったり希少で買えなかったりするものもあり、そんな場合に中古市場で購入する方も多いと思います。中古市場は多様化しており、質屋やブランド買取販売店、フリマアプリやリサイクルショップなど様々な業態が存在します。
しかし中古市場が身近になった分、様々なリスクが潜んでいるのも事実です。その中でも深刻なのが偽物(フェイク)による詐欺被害です。偽造品にも色々なクオリティがあり、子供だましのようなものから、プロの査定士でも判断できかねるような巧妙なものまで千差万別です。
そういった偽物に騙されるリスクを減らせるポイントを紹介します。
偽造により失われるもの
高級品の偽造は、ブランドにとっても深刻な問題です。問題の一つは本物と思って購入したら偽物だったという場合です。この場合は単純に詐欺として、被害者が損害を被ってしまうという損失があります。
もう一つ考慮しなければならない問題が、フェイク(偽物)とわかっていて製品が売買される場合です。この場合の問題点はブランドの持つブランド価値が下がるという点です。
ラグジュアリーブランドのブランド価値は、プロダクトの高いクオリティに対する信頼の証です。これが粗悪な偽物が流通することで、クオリティへの信頼が揺らぎブランドの水準が下がることにつながってしまうのです。ひいては正規店で購入したものでさえも偽物ではないかと疑いの目でみられることになってしまいます。
印象論でいえば、製品自体よりも、持っている人の雰囲気にブランドイメージが左右されるということもあります。エルメスのバーキンは、ジェーンバーキンから、ケリーはグレースケリーから寵愛を得たバッグです。
逆に偽物とわかっていて購入するような人が偽物を片手にストリートに溢れたらどうでしょうか?果たしてそこに上質のオーラは漂うでしょうか?
そんな悪名高き偽物に騙されぬよう、ここからは真贋を見極めるポイントについて紹介します。
価格
もっともシンプルで簡単な方法の一つです。もし、ルイ・ヴィトンのバッグが数千円でたたき売りされていたら、絶対に手に取らないことをお勧めします。
素材
高級ブランドのプロダクトは素材も上質です。肌触りのよさ、肌理の細かさ、耐久性、発色の良さなど、「育ちの良さ」的な品のある佇まいが感じられます。モノグラムなどのパターン化されたモチーフがあしらわれている生地はプリントの細かさ、滲み、プリントの均一性も判断材料になります。
小さなパーツやディティール
ジッパーのつまみやボタン、フラップなどのメタルパーツにブランドの名前やアイコニックなモチーフが刻印されているかも真贋を判断の一助となります。
縫製やカットワーク
縫い目の粗さや縫製の雑さはクオリティのよくあらわれる箇所です。バッグであればストラップなど付属品、服であれば裏地や裏面の縫製まで丁寧に作られてるなら、本物である希望が持てます。(油断は禁物です。)
ケーススタディ:DIESELのデニム
しかし恐ろしいことに、こういったディテールにまである意味”こだわっている”模造品も存在します。ここで、具体的なケースを見てみましょう。巧妙なDiesel の偽造デニムの例を紹介します。
ラベル
本家と見紛うパッケージ、よくできた偽造ラベル、滲みなどのない優れた印刷品質、パターンがオリジナルにかなり忠実に似ているなど、手の込んだ作りこみがなされています。しかも、在庫切れのモデルと実質的に同じ価格で売られていました。
この現象に直面して、ディーゼルは、模倣品対策としての効果的なシステム、マイクロステッチを開発します。マイクロステッチとは、すべてのディーゼルデニムの品質表示ラベルに施された銀色の刺繍です。そのデニムが本物の場合、「DIESEL」という細い文字が表示されます。
そしてディーゼルは必ずしも「made in Italy」とは限りませんし、他国製でも必ずしも偽物とは限りません。たとえ中国製でも偽造者は偽造モデルに「イタリア製」と表示することに何の躊躇もありません。
パーツ
今度はパーツに注目してみます。この偽造品は非常に巧妙で、リベット(ポケットの角に打たれた小さな鋲)にはDIESELと刻まれているものを使用しています。しかし、本物のモデルではブランド名はなく星のマークが刻まれたリベットが使われているのです。これは余程そのブランドに精通していないと見抜けないですね。
しかし、生地の品質と仕上げは、本物と偽物を見分けるための最良の味方です。基本的に偽造品のクオリティは、本物のクオリティを大幅に下回っているため、その違いで製品の真贋を実感することができます。この偽造品のデニム地は薄くぺらぺらした生地です。
縫製
縫製に注目してみましょう。縫い目の細かさ、糸の丈夫さ、接合部の仕上げ方などが注目すべきポイントです。偽物の糸の始末をみると随所にほつれがあります。こういった感覚は日々のショッピングで磨くことができます。百貨店であればふらっと立ち寄りやすい高級ブランドブティックもあります。美しいディスプレイなども楽しみつつ自分の感性を研ぎ澄ませるでしょう。
こういったディティールに関してはオンラインショッピングではなかなか精査しづらいポイントです。高価なものは実際に手に取って精査することをお勧めします。また実際にその場にいると、販売者の雰囲気やしぐさなども、真贋判定の助けになります。なにか胡散臭さを嗅ぎつけたならば、取引をすぐにやめるのが賢明です。
まとめ
このように、ブランド偽造品のリスクが常に存在する中古市場では、自分で真贋を意識的にみていくことでフェイクに騙されるリスクを軽減することができます。ただ先述のように、非常に巧妙につくられた偽造品も数多く存在しています。信頼できる販売元をみつけることや、ブランドネームに頼らない自分の感性を磨くことも大切なポイントと言えるでしょう。