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宝石の中のガーネット
ガーネットと聞けば、皆様どんな色をご想像されますか?
アルマンダイトガーネットは、ガーネットを代表する宝石で、古代エジプト文明のころよりすでに宝石として使用されている歴史のある宝石です。採石量も豊富で、安価に入手することも可能なことから、パワーストーンとしての流通など天然石市場でも多くの石が扱われています。
そして、ガーネットと一般的に呼ばれるものの大多数はアルマンダイトガーネットと呼ばれています。
ガーネットには多くの種類があり(商品名や歴史上の名前も含めると、現在知られているだけで38のガーネットの名前があります)、色も豊富ですが、「ガーネット」と言うとほとんどの人が小さな濃紅のジェムストーンを思い浮かべると思います。実際にはガーネットはバラエティ豊かで、どんな趣味の人にも必ずぴったりのものが見つかり、流行の移り変わりにも十分対応できるほどのバリエーションがあります。
アルマンダイトガーネットの採掘について
アルマンダイトガーネットが採掘できる場所は、主に火成岩の一種であるペグマタイト層と、変成岩が見られるところになりますが、変成岩の層にあるものは不透明になることが多いため、宝石には向いていません。
宝石になるアルマンダイトガーネットはペグマタイト層付近で採石されるものだということがわかります。
しかし、この層からは、ほとんど綺麗な結晶としてのアルマンダイトガーネットは採掘されません。
変成岩からは12面体の綺麗な結晶として産出されることが多く、中には24面体の結晶も見られるため、変成岩から採石されるアルマンダイトガーネットにも需要があります。
また、アルマンダイトガーネットは世界中で採掘されているガーネットの中でも特に多い採掘量を誇ります。
アルマンダイトガーネットの名前の由来
アルマンディンという名前は、トルコのアラバンダ(Alabanda)という都市の名前を由来としているそうです。現在のアラフィサールと呼ばれる町「アラバンダ」は、古来からこのアルマンダイトの研磨をしてきたという歴史をもつことから、このように呼ばれるようになったと言われています。和名では「鉄礬柘榴(てつばんざくろ)石」と呼ばれています。
柘榴石はガーネットの和名で、鉄礬(鉄とアルミニウム)を含有する柘榴石であることから、名付けられたといわれています。現在のトルコ南西部あるアイドゥン県にはギリシア時代の遺跡があり、神殿遺跡周辺からは当時珍重された大理石と共にガーネットの痕跡が発見されています。このことは当時からガーネットが宝飾品に利用されていた歴史と、この土地で加工されていたことを示します。そして、こうした遺跡の残る地域のひとつがアラバンダと呼ばれており、アルマンディンの名称はこのトルコ南西部に存在したアラバンダの地名に由来しているのです。
ガーネットにまつわる伝説
ガーネットは長年ザクロの象徴とされてきました。
興味深いことに、発掘された太古のジュエリーの中には、小さな赤いガーネットをザクロの実を思わせる房状にはめこんだものもありました。ザクロは、ギリシャ神話では永遠という意味を持ち、冥界の王ハデスがペルセポネを誘拐する物語にも登場しています。 ガーネットはまた火とも関連づけられ、闇夜に空を照らす力があると考えられました。今日でも、ガーネットは信仰、真実、光のシンボルです。グリム童話にも、そのつながりがはっきり分かる物語があります。
「昔むかし、おばあさんがケガをした鳥を見つけました。そのおばあさんが鳥を家に連れて帰り、介抱してやったところ、鳥は元気になり、ある日飛んでいきました。おばあさんは鳥にはもう二度と会うことはないだろうと思いましたが、鳥はガーネットをくわえて戻ってきました。おばあさんは、それを枕元に置いておきました。驚いたことに、毎晩夜中に目をさますと、ガーネットはたいまつのように輝いているのでした。まるで、親切にしてくれたことに対する鳥のお礼の気持ちが、輝いているかのようでした」
ユダヤ人の伝説には、大洪水の時にガーネットが光を放ってノアを導き、方舟を救ったという話があります。またイスラム教で は、ガーネットが4番目の天国を照らしてくれると信じられていたそうです。
古代スカンジナビアで は、ガーネットのジュエリーがヴァルハラ(英雄の霊を祀る場所)への道を照らしてくれると考え、死者とともに埋葬しました。
また、アビシニアの皇帝の宮殿を照らすのにも使われました。 十字軍の戦士はガーネットが守ってくれると信じ、甲冑にはめこみました。中世においては、よくないことを追い出し、損害を退け、健康と騎士道的精神、忠誠心、誠意を高めてくれると信じられていました。中世には、ガーネットを贈り物として受け取ると幸運が来ると言い、ガーネットを盗んだ泥棒には不幸が訪れると言いました。
また、ガーネットが輝きを失うのは、破滅が迫っている兆しだと信じられていました。
18世紀から19世紀にかけては、ガーネットは「流行の宝石」でしたが、化学テストをきちんと行わなかったため、色の濃いルビーと混同されることもしばしばありました。チェコスロバキア産のガーネットをはめこんだジュエリーは特に珍重され、今日では他でも採掘されているにもかかわらず、ボヘミア・スタイルのガーネットのジュエリーは変わらぬ人気を誇っています。
1912年、アメリカ全国宝石商協会が、ガーネットを正式に1月の誕生石に定めました。ガーネットはまたみずがめ座の星座石でもあり、結婚2周年と19周年にプレゼントされる記念石でもあります。
アルマンダイトガーネットの色や種類
アルマンディンガーネットは、アルミニウムガーネットの一種とされています。鉄とアルミニウムのケイ酸塩鉱物で、他のレッド系ガーネットよりも濃い赤色のものが多いのが特徴です。主に多いのは濃い赤色から黒赤色ですが、他にも褐赤色、さらには紫、黒、ピンク味を帯びたものなども見つかっています。このアルマンダイトガーネットの深い色味は鉄の含有量が他の赤色系ガーネットよりも多いことから、より濃くて黒っぽい赤色になると考えられています。
アルマンディンガーネットは暗赤色が特徴のガーネットのため、色の濃さから透明感や輝きを強く感じられない場合があります。それ故に華やかさより落ち着きの印象が強い宝石ですが、大人びた印象ですので年齢を重ねてもなお使いやすい宝石です。それと共に深い色合いはアンティーク調のデザインにもマッチしますので、アンティークデザインやシックな装いに合わせやすく、カーバンクルの技法を用いたカボション・カットのジュエリーには古典的な美しさが感じられます。スター効果を持つ個体は古典的なカボション・カットの美しさと希少な存在感をまとっており、神秘的な魅力を持っていると言えます。
アルマンダイトガーネットの創られる石
ケイ酸塩鉱物の一種であるアルマンダイトガーネットは、変成岩中や火成岩中に生成されると考えられています。そしてその結晶は12面体または偏菱24面体をしているといいます。透明な結晶は、ほかのガーネットと比較して濃い赤色を呈することが多く、不透明に近い結晶も産出されることがあるそうです。世界中で広く産出されており、中には4~8㎏を超える大きな原石が採掘されることもあるとのことです。
また、ダイヤモンドの内包物としてアルマンダイトガーネットが含まれていることもごくまれにあるようです。
ガーネットの中には緑色をしたデマントイドや、オレンジ色が特徴的なスペッサルティンなどのバリエーションが存在していますが、アルマンディンに属するものは濃い赤色です。暗赤色であるため大きくなるほどに透明感を感じづらい宝石ですが、カットや研磨を工夫することで濃い色の中にも輝きが生じるよう加工されます。
その一例が「カーバンクル」と呼ばれる透明度を増すために編み出された技法で、表面をカボション・カットにより丸く仕上げた後、底面を薄く仕上げることで光の透過性を高めることができます。
また、色と共に注目したいものがスター効果が現れた特別な個体の存在です。スター効果は宝石の内部にルチルと呼ばれる内包物が存在している場合に発生し、宝石表面に白い帯が現れます。白い帯が2条以上交差しているとき、この現象をスター効果と呼びます。
ロードライトガーネット
「ロードライト」という名は、ギリシャ語の「ロードン」と「リトス」が合わさったもので、直訳すると「バラの石」という意味になります。この名前は、アメリカのノースカロライナ州で見つかったシャクナゲの花を思わせる色をしたガーネットのために、19世紀後半に初めて使われました。 きわだった美しさを見せるロードライトは、アルマンディンとパイロープガーネットが混じりあい、自然にできあがったものです。
ロードライトにはピンクからラベンダーまでの色合いがあり、もっとも価値があるとされるのはラズベリー色です。ロードライトは沖積鉱床で、水で削られた小石の形で発見されることが多いのですが、時には変成岩の母岩から直接掘り出されることもあります。見事なロードライトが採掘されているのは、スリランカ、ジンバブエ、そしてタンザニアのカンガラ鉱山で1987年に発見された比較的新しい鉱床からです。その後、きらびやかなラズベリー色のロードライトがタンザニアのルブマ、ムトラワ、リンディなどの地方でも見つかっています。
硬く、耐久性があり、品質向上処理の必要もなく、汚れを取りやすいロードライトは、ジュエリーに理想的です。その明るく透明な輝きから、ロードライトは可愛らしい形にカットされることもあります。
ガーネットのメンテナンス方法
ガーネットは比較的モース硬度も高く、取り扱いはしやすい宝石になります。
汗や水にもさほど影響は受けませんが、そのままにしておくのはやはり禁物です。柔らかい布でお手入れをするか、汚れが気になる場合は中性洗剤やぬるま湯を使用したお手入れも可能です。
ですがガーネットの性質上、衝撃にはあまり強くありませんので、お手入れで洗浄器具にうっかりぶつけてしまったり、落としてしまったりすると簡単に傷や割れが生じてしまいますから注意しましょう。またブレスレットなどの重ね付けでも傷が入ります。
アルマンダイトガーネットの価値
アルマンディンは一般的に肉眼で見えるほどの内包物が含まれることは少ないといわれていますが、やはり透明感が高いほど高評価となります。比較的手ごろな価格帯の宝石であるアルマンディンガーネットですが、クオリティによる価格の変動や希少性に伴う付加価値はあります。カラーの面では赤ワインのような深い赤色が最も評価されており、黒っぽいものや褐色に近いものよりも高価です。
大きなサイズも多く産出されるため、大きくなると価格がグンと高騰するということもなく、カラット数相当の値段が付くことが多いようです。
アルマンディンガーネットは流通量も多く安価で手に入るものも多い印象です。購入できる場所も多く、ルースでもジュエリーでも比較的取り扱いが多い宝石ではないでしょうか。
クォリティによっては、イベントなどで五千円以下で販売されているものも見かけます。しかしトップクォリティでカラットが大きいものですと、数十万円程の価格が付くものもあります。
まとめ
アルマンディンガーネットはあらゆる種類のジュエリーに使用されており、あらゆるデザインに最適です。それらは優れた硬度、輝き、耐久性を備えているため、指輪、ネックレス、ブレスレット、ブローチ、ペンダントでの使用に最適です。通常、ガーネットは手頃な価格であると考えられていますが、非常に高価であると考えられている珍しい品種もあります。赤い宝石と赤い宝石用原石の宝石に関しては、アルマンディンとパイロープガーネットが今日の宝石で使用される最も人気のある宝石の種類です。アルマディンガーネットは実りを結ぶ石として有名です。恋愛、仕事、受験、出産とあらゆるシーンにおいての成功を祈願する人が持つと良いとされています。
また、友愛の印ともいわれているので、友人やパートナーなどにプレゼントするパワーストーンとしても◎。血の色にも近いアルマディンガーネットは、身体の血流を活性化させる働きもあるので、健康運アップの効果もあるといわれています。
宝石の中でも価格帯や加工の技法、カラーバリエーションも幅広いことから、気軽にアクセサリーやジュエリー、御守りとして身に着けることができるのも、アルマンダイトガーネットの魅力の一つと言えるかもしれません。