目次
バロックパールとは
バロックパールとは、丸い形ではない変形した真珠の総称です。一般的な真円の真珠と異なり、表面に凹凸があったりしずくのような形をしていたりと、さまざまな形をもちます。
バロックパールの意味
バロックパールという名称は、ポルトガル語で「いびつな真珠」を意味する「barroco」に由来しています。
もともとは、完璧な球体ではないいびつな真珠を指す言葉でした。しかし現在は、不完全さこそが最大の魅力として肯定的に捉えられています。
ひとつずつ異なる表情を見せるバロックパールは、持ち主の個性を引き立てる唯一無二の存在感を放ちます。まさに自然が生み出した偶然の産物であり、同じ形のものは存在しません。
決まった形がないからこそ、身に着ける人の創造性を刺激し、自由な発想で楽しめます。
フォーマルな印象が強い真円の真珠とは異なり、日常のファッションにも取り入れやすく、自分らしさを表現するアイテムとして多くの人々に愛されています。
バロックパールの由来
バロックパールは、当初いびつな形から揶揄する言葉として使われたとされています。これが16世紀末から17世紀にヨーロッパで栄えた「バロック美術」の語源になったともいわれています。
しかし時代が移り、画一的な美しさよりも個性が尊重されるようになると、評価は一変しました。養殖技術の発展で、均質な真珠が量産され始めたことも、偶然がもたらす自然の造形美をもつバロックパールの希少性を高めました。
現在では、ユニークな形が個性として認められ、多くの人々を魅了しています。
バロックパールの母貝
バロックパールは、特定の種類の貝から採れるわけではありません。アコヤ貝や白蝶貝、黒蝶貝、淡水に生息するイケチョウ貝など、さまざまな母貝から生まれる可能性があります。
つまり、変形した真珠であれば、どの母貝から生まれたものでもバロックパールに分類されるということです。
母貝の種類によって、できあがるバロックパールの色や大きさ、輝きは異なります。たとえば、アコヤ貝からは上品なホワイト系の小ぶりなものが生まれるのに対し、白蝶貝からは大粒で華やかなものが生まれます。
バロックパールの産地
バロックパールの産地は、母貝の種類によって世界各地に広がっています。たとえば、アコヤ真珠のバロックパールは、主に日本の三重県や愛媛県、長崎県で生産されます。
大粒のものが採れる白蝶真珠のバロックパールは、オーストラリアやインドネシア、フィリピンなどが主な産地です。また、神秘的な色合いをもつ黒蝶真珠のバロックパールは、フランス領ポリネシア産が市場で大きな存在感を持ちます。
なお、カラーバリエーションが豊富な淡水パールは、主に中国で養殖されたものです。このように、母貝の主な生息地がそのままバロックパールの産地となっています。
バロックパールの価値
バロックパールの価値は、かつて「不出来な真珠」とされていたころとは大きく異なります。現代では、個性やオリジナリティを尊重する価値観が広まり、唯一無二の形が高く評価されています。
意図的に同じ形を作り出すことが難しく、同じものを量産できない点も希少性を高める要因です。さらに、これまで評価されにくかった真珠に新たな価値を見いだす姿勢は、SDGs(持続可能な社会)への貢献にもつながるといえます。
偶然が生んだ自然の造形美は、多くの人々を惹きつけており、価値が高まっています。
バロックパールと他のパールとの違い
バロックパールは真珠の形状による分類名であり、ほかのパールと区別される基準がいくつかあります。ここでは、バロックパールとケシパール・淡水パールとの違いを解説します。
ケシパールとの違い
バロックパールとケシパールの違いは、主に生成過程にあります。
多くのバロックパールは、人の手で貝殻を丸く削った核を母貝に入れ、周りに真珠層が形成されることで作られる有核真珠です。真珠層が形成される過程で、何らかの要因で均一に層が重ならず、いびつな形になったものがバロックパールと呼ばれます。
一方、ケシパールは、養殖工程の副産物として生じる無核の真珠です。名前の由来は、芥子の実に似ているためとされています。
ケシパールは中心まですべてが真珠層でできているため、独特の輝きをもち、小粒なものが多く見られます。
意図的に核を入れて養殖されたか、偶然の産物として自然派生的に形成されたかという生成過程の違いが、両者を区別する主なポイントです。
淡水パールとの違い
バロックパールと淡水パールの違いは、分類の基準そのものにあります。
バロックパールが「真円ではない、いびつな形の真珠」全般を指す形状の分類であるのに対し、淡水パールは「湖や川などの淡水で育つ真珠」という生育環境による種類の名称です。
つまり、バロックパールは形に注目した言葉であり、淡水パールは出自に注目した言葉といえます。
なお、淡水で育った真珠のなかに、いびつな形をした「淡水産のバロックパール」も多く存在します。淡水パールは、主にイケチョウ貝などを母貝とし、一度に複数の真珠を養殖できます。
比較的リーズナブルな価格帯で、カラーバリエーションが豊富な点も特徴です。一方でバロックパールは、淡水産のものだけでなく、海水産のアコヤ真珠や白蝶真珠、黒蝶真珠から生まれるものも含んだ総称です。
バロックパールの種類
バロックパールは、ユニークな形状によっていくつかの種類に分類されます。代表的なものとして、しずくのような形をした「ドロップ」は、イヤリングやペンダントトップとして優雅な印象を与えます。
細長い棒状の「スティック」は、シャープでモダンなデザインのアクセサリーに最適です。コインのように平たい円形の「コイン」は、光を受ける面積が広く、独特の輝きを放ちます。
また、お米の粒に似た「ライス」のように、見た目を食べ物になぞらえた呼称も存在します。
バロックパールの形状は、真珠が母貝のなかで育つ過程で偶然生まれるものです。世界にひとつだけの形から、お気に入りを見つける楽しみがあります。
【母貝別】バロックパールの特徴
バロックパールは、育つ母貝の種類によって色や大きさ、輝きが異なります。ここでは、母貝別にバロックパールの特徴を解説します。
アコヤ真珠
アコヤ真珠のバロックパールは、きめ細やかで上品な輝きが大きな特徴です。国内での養殖が盛んで、三重県の伊勢志摩や愛媛県の宇和島などが養殖地として有名です。
色はホワイトやクリーム系が中心で、サイズは比較的小ぶりなものが多く見られます。主張しすぎない奥ゆかしい美しさは、日本人の肌によく合います。
そのため、さりげなく日常の装いに取り入れやすく、清楚で洗練された印象を与えてくれるでしょう。
白蝶真珠
白蝶真珠のバロックパールは、大粒で華やかな存在感が魅力です。主にオーストラリアやインドネシアといった南の海で育つ白蝶貝は、大型であるため大粒の真珠を生み出します。
色はホワイトやシルバー系のほか、温かみのあるゴールド系もあり、どちらも上品な雰囲気をまとっています。「南洋真珠の女王」とも称されるシルクのようになめらかな光沢は、バロックパールになっても失われません。
豪華な輝きは、特別な日の装いをいっそう引き立てます。
黒蝶真珠
黒蝶真珠のバロックパールは、神秘的で深みのある色合いが特徴です。主な産地がタヒチであることから、タヒチ真珠とも呼ばれます。
黒を基調としながらも、グリーンやレッド、パープルといった複雑な色が混ざり合った多様な色調を生み出すのが魅力です。とくにグリーンの干渉色が強い「ピーコックカラー」は高く評価される傾向にあります。
シックで落ち着いた輝きをもつ黒蝶真珠のバロックパールは、個性的でモダンなスタイルを演出してくれるでしょう。
淡水パール
淡水パールのバロックパールは、色の豊富さと比較的手に入れやすい価格帯が魅力です。
主に中国の湖や川でイケチョウ貝などを母貝として養殖されており、オレンジやパープルなど、多彩な色合いがそろっています。ひとつの貝から複数の真珠が採れるため、海水パールに比べて安定した供給が見込めます。
また、形も十字や四角など、ユニークなものが多く存在するのが特徴です。カジュアルなアクセサリーとして、気軽にファッションに取り入れられます。
バロックパールを選ぶ際のポイント
バロックパールを選ぶ際は、真珠としての品質を見極め、自分自身の感性に合った形を探すことが大切です。品質を確かめる基準は、真円の真珠と基本的に同じです。
まず、真珠層の巻きの厚さを示す「巻き」と、輝きを意味する「テリ」を確認しましょう。巻きが厚くテリの良いものは、深みのある美しい輝きを放ち、耐久性にも優れます。
基本的な品質を確認したうえで、最後は自分の直感や感性に合う形を選びましょう。
バロックパールのお手入れ方法
バロックパールの美しい輝きを長く保つには、日ごろのお手入れが必要です。
真珠の主成分は炭酸カルシウムで、汗や皮脂、化粧品に含まれる酸や油分に弱い性質をもちます。そのため、汗や皮脂が付いたままにしていると、光沢が失われていきます。
バロックパールの使用後は、真珠専用のクロスや、研磨剤・薬品などを含まない柔らかく乾いた布で優しく拭いてください。汗をかいた日や汚れが気になる場合は、固く絞った布で拭き取ったあと、乾拭きをして水分をしっかり取り除きましょう。
バロックパールに関するよくあるQ&A
ここでは、バロックパールに関してよく寄せられる質問に回答します。人工真珠との違いや、今後の人気について解説しますので、参考にしてみてください。
バロックパールは人工真珠が多い?
市場で目にするバロックパールの多くは、人工真珠ではなく養殖の本真珠です。人工真珠はガラスやプラスチックに真珠層風の塗料を塗った模造品を指します。
一方、バロックパールは、母貝のなかで真珠層が形成される過程で偶然いびつな形になったもので、多くは人の手によって育てる養殖真珠です。
なお、自然のなかで生まれる天然のバロックパールは、非常に希少で高価です。養殖であってもバロックパールは、貝が育んだ本物の輝きをもつ宝石といえます。
バロックパールはこれからも人気?
バロックパールの人気は、一過性の流行ではなく、今後も続くとして注目を集めています。バロックパールは同じ形状をもたないため希少性が高く、他人とは違う自分だけのものを求める人々のニーズに応えているためです。
また、これまで規格外とされてきたものに新しい価値を見いだす姿勢は、持続可能な社会を目指すSDGsの理念にも通じます。時代の求める価値観と合致しているため、バロックパールはこれからも人気を維持すると考えられます。
まとめ
バロックパールは、真円ではない不定形なフォルムそのものに価値がある、唯一無二の宝石です。自然が生み出した個性的なフォルムは、日々の装いに特別な彩りを与えてくれるでしょう。


