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市場を支配する「デビアス社」の仕組み|ダイヤモンド産業の頂点に立つ戦略とは?

1063_ダイヤモンド デビアス

創業以来130年以上ダイヤモンドの製造に携わり、ダイヤモンド業界最大級のブランドとして君臨するデビアス社が、どのように拡大したのか、取り扱うダイヤモンドの特徴もあわせて紹介します。

ダイヤモンド産業のトップ「デビアス社」とは

19世紀末に創業し、ダイヤモンド産業の発展に深く関わってきたデビアス。ダイヤモンドが貴重な物であるという意識を高め、プロポーズや婚約にふさわしいジュエリーとしての地位を確立した企業です。最初にデビアス社とはどのような企業なのかを紹介します。

デビアス社の概要

デビアスは、ダイヤモンドの採掘や加工、流通を主な事業とする企業です。南アフリカに端を発し、世界のダイヤモンド流通に大きな影響を与えてきました。

現在はアングロ・アメリカンの子会社ですが、世界のダイヤモンド市場シェアの大半を支配してきた歴史があります。現代のダイヤモンド産業の発展は、デビアス社の歴史ともいえるほどです。

デビアス社がダイヤモンド産業を支配するまでの歴史

デビアスのブランドの歴史は1880年に始まります。セシル・ローズが、アフリカ大陸の南端に位置する南アフリカ共和国のケープ植民地(当時)で、デビアス鉱山会社を設立しました。

社名の「デビアス」の由来は、地元のダイヤモンド鉱床の近所で農場を営んでいたデビア兄弟から取っています。

そして、金鉱山企業のアングロ・アメリカンを立ち上げたアーネスト・オッペンハイマーの存在も、デビアス社の発展の歴史には欠かせません。

彼は1929年にデビアスの筆頭株主となり、会長に就任しました。オッペンハイマーが確立したダイヤモンドの生産・販売戦略は、今日のデビアス社の基盤ともいえるでしょう。

デビアス社とロスチャイルド家の関係

キリスト教では、金儲けは卑しい行為とされ、ダイヤモンドなどの宝飾品を扱うことは金儲けと同じと考えられていました。

ダイヤモンドに携わる仕事はキリスト教徒がやらないため、ユダヤ人商人がダイヤモンドに関わる仕事をするようになりました。

ダイヤモンドを取り扱っているデビアスは、イギリス人のセシル・ローズが設立した会社ですが、ユダヤ人のロスチャイルド家から支援を受けていることから、ユダヤ人やイスラエルとのつながりが強いといわれています。

デビアス社のダイヤモンドのマーケティング戦略

デビアス社はマーケティング戦略にも成功し、ダイヤモンドの価値を高めました。ここでは、デビアス社のマーケティング戦略と内容を解説します。

有名人を起用した発信

王室メンバーやハリウッドスターを起用した広告を展開することで、ダイヤモンドが価値ある宝石であることを広めていきました。

ラジオや新聞でハリウッドスターが身につけるダイヤモンドを紹介したほか、ハリウッドスターが授賞式に出席する際には、ダイヤモンドのアクセサリーを貸し出したのです。

さらに、デビアスは英国王室にダイヤモンドを献上し、ダイヤモンドの価値を高めることに成功しました。

生産したダイヤモンドを一括買い上げする

ダイヤモンドの原石を生産する段階では、DPA(ダイヤモンド生産者協会)と呼ばれる生産者の組織が結成され、生産はこの組織によって調整されます。これは、過剰なダイヤモンドが市場に出回らないように生産が規制されているのです。

次の段階では、DTC(ダイヤモンド商社)と呼ばれる組織が、DPAが生産したダイヤモンド原石をすべて買い取り、選別します。DPAに加盟している鉱山で産出されるダイヤモンド原石は、すべてDTCに集められるという流れです。

限定した業者にのみダイヤモンドを販売する

DTCに集められるダイヤモンド原石は、「CSO(Central Sales Organizations)」と呼ばれる販売組織によって世界中に販売されます。

なお、CSOからダイヤモンド原石の購入が許可されている会社は世界で数十社であり、一握りです。デビアス傘下のダイヤモンド鉱山から採掘されたダイヤモンド原石を購入できるのは、デビアスが選んだ僅かな業者のみというシステムです。

販売価格や各業者に割り当てられる原石の量など、すべてをCSOが決定します。業者は、異議を申し立てることすらできません。

デビアス社の今後の戦略

デビアス社に圧倒的に有利なシステムは、現在でもあまり変わることなく続くでしょう。

しかし、システムがあるからこそダイヤモンドの価値が下がることなく維持され、最終価格まで大きく変動することがないといえます。

CSO(中央販売機構)とデビアス社の関係

デビアス社は巨大な企業連合を築き上げ、一時は世界のダイヤモンド市場を100%独占していました。南アフリカのデビアス社の存在は、世界のダイヤモンド業界において非常に重要です。

ここでは、CSOとデビアス社の関係、ダイヤモンドを販売する方法について解説します。

ダイヤモンドを販売する業者の決まり方

デビアス社の現在の市場シェアは50%程度とされていますが、ダイヤモンド業界に強い影響力がある企業である点は変わりません。

デビアス社は、現在もダイヤモンド原石のほとんどを生産しています。ダイヤモンド原石は、ダイヤモンドを販売するデビアス社のグループ、「CSO(Central Sales Organization)」によって、世界中のダイヤモンドディーラーに流通しています。

「サイト」と呼ばれる特殊な販売方法

原石は「サイト」という販売会でのみ売買されますが、サイトに参加できるのは、デビアスが認定したサイトホルダーの資格を持つ会社のみです。

サイトホルダーの認定は簡単に取れるものではなく、デビアスが一方的に認定します。現在、サイトホルダーに認定されている企業は100社もなく、うち日本企業は1社のみです。

デビアス社が生産するダイヤモンドの魅力

デビアス社が生産しているダイヤモンドが世界中の人を魅了するのには理由があります。ここでは、デビアス社のダイヤモンドの特徴、魅力を紹介します。

カッティングの美しさを測る3つの基準を定めた

デビアスのダイヤモンドは、職人技によるカッティングで石本来の美しさを際立たせ、身に着けたときに自然と輝きます。

ファイヤー:石の内側に虹が見える
ライフ:ダイヤモンドを動かした際に輝く
ブリリアンス:正面から見た際の反射光

ダイヤモンドのリングやネックレスの台座や爪に使用する金属は、ダイヤモンドの美しさを損なわないよう最小限に抑えられています。

ダイヤモンドの鑑定や保証の信頼が厚い

デビアス社はダイヤモンドのカッティングを重視しているだけではなく、鑑定や保証にも強いこだわりがあります。

デビアス社のグループ会社「IIDGR」は、ダイヤモンドを専門とした研究を行っている企業です。

IIDGRでは、デビアス社のダイヤモンドに付属する鑑定カードの発行を行っています。鑑定カードには、ダイヤモンドの評価、カッティングの図面のほか、ダイヤモンドの細かいサイズまで記載されています。

ダイヤモンドの生産や流通が正しく行われている

デビアスは生産から販売までの全工程を管理するために、3つの団体を作りました。

①ダイヤモンド生産組合(DPA):ダイヤモンドの採掘を管理、ダイヤモンド原石の生産量をコントロールする
②ダイヤモンド貿易会社(DTC):ダイヤモンド原石の取引、分類作業を担当し、生産した全ダイヤモンドを購入している
③中央販売機構(CSO):ダイヤモンドの販売、世界中の販売店へダイヤモンドを卸す

また、0.2カラット以上のダイヤモンドには、目視では確認できない「デビアスマーク」が入っていることが特徴です。デビアスマークは「アイリス」と呼ばれる機械を使用すると見ることができるものであり、偽物の流通を防いでいます。

デビアス社が人工ダイヤモンドを販売する新ブランドを発表

デビアス社は、新ブランド「Lightbox(ライトボックス)」で合成ダイヤモンドジュエリーを販売すると発表しました。

合成ダイヤモンドは、科学技術を駆使して作り出された人工物であり、人造ダイヤモンドとも言われます。ダイヤモンドの合成方法には、2種類があります。

HPHT法:地下の奥深くの高温・高圧の場所に炭素を設置し、ダイヤモンドに変える
CVD法:炭化水素の混合ガスを蒸発させてダイヤモンドを成長させる

デビアスの人工ダイヤモンドは、CVD法を用いています。ブルーやピンクなどの美しい色だけではなく、無色透明なダイヤモンドも生成できるため、ジュエリー用ダイヤモンドとして活用されるでしょう。

また、人工ダイヤモンドの価格は1カラットあたり約83,000円で、低品質のダイヤモンドよりも安いことが特徴です。Lightboxは、美しいダイヤモンドに憧れながらも、価格面で諦めていた方たちから大きな期待を寄せられている新ブランドです。

まとめ

採掘段階でダイヤモンド原石の採掘量を調整し、採ったダイヤモンド原石は簡単に売りません。顧客への販売価格と販売量を調整するという仕組みを確立しています。結果、世界中の人々に「ダイヤモンド価格は長期的に上がっていく」という安心感を与えているのです。デビアス社のダイヤモンドの価値を知り、知識を身に着け、購入や売却時に役立ててください。

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