持ち主に不幸を招くホープダイヤモンド
ホープダイヤモンドとは、現在アメリカのスミソニアン博物館のひとつである国立自然史博物館に所蔵されている、45.5カラットと非常に大きなブルーのダイヤモンドのことです。王族や大富豪が所有しましたが、彼らには必ずというほど悲劇が訪れました。ヘンリー・ホープ一族が所有したことから「ホープ」という名が付けられましたが、皮肉にもホープ(希望)とは裏腹なストーリーに付きまとわれた宝石です。フランスのルイ14世が所有していたことでも知られており、受け継いだルイ15世は天然痘で死亡、ルイ16世と王妃マリー・アントワネットはギロチンにより処刑されました。その後ホープダイヤモンドを手にした富豪が破産した、その他の持ち主は全員亡くなった、といった伝説もありますが、最終的には1910年にカルティエが購入します。これらの伝説はカルティエが売り込みのためにでっちあげたという話もあります。
世界最大級のカットダイヤモンド「カリナン」
世界最大級のカットダイヤモンドが見れる場所、それはロンドン塔です。ロンドン塔は「女王陛下の宮殿にして要塞」と呼ばれるように、英国王室の多くの財宝が保管されており、世界最大級のカットダイヤモンド「カリナン」もここに展示されているのです。嬉しいことに入場料を払うことで、誰でも見学をすることが可能です。
「ダイヤモンドの谷」の伝説について
宝石にまつわる伝説は世界中に数多く残されています。中でも、鷲を利用して深い谷底に転がっているダイヤモンドを拾い出すという伝説は、いくつもあります。その一つですが、人類が最初にダイヤモンドの採掘をおこなった場所とされる、インドのゴダバリ川とクリシナ川の間の谷にも同様の伝説があります。ダイヤモンドが転がるその場所は、とても深く、険しい谷です。さらにその谷には猛毒を持った蛇が生息していて、人を寄せ付けません。まるでダイヤモンドを守っているかのようです。そこで、鉱夫たちは谷底に羊の肉片を投げ込みます。それを狙っていた鷲が肉片を持ち帰ります。その肉片には、やはりダイヤモンドが付着しているのです。鉱夫たちは、鷲が持ってきたダイヤモンドを回収するというわけです。古代ローマの「プリニウスの博物誌」にも、ダイヤモンドの採取方法としてそのような話が記述されているそうです。
お守りとしてのダイヤモンド
ダイヤモンドはその硬さゆえに、旧い時代においては今のような美しい宝石に磨き上げることができませんでした。そのため石の表面が白っぽく曇っていたこともあり、意外にもダイヤモンドは宝石としての価値はかなり低かったのだとか。また、かつてダイヤモンドと言えばインドでしか採れないものだったので、とくにヨーロッパでは、はるか遠くの異国からやってきた神秘的な石というイメージが一般的だったのです。そうしたことから、当時のダイヤモンドの位置づけは、現代のようなジュエリーというよりも、むしろ男性が戦いのお守りとして身につける、魔術的な意味を持つ石とされていたようです。そして「不屈」であることから、ダイヤモンドは「正義」のもとに「勝利」をもたらすともされ、それらも同様にダイヤモンドの石言葉となりました。また、中世とルネッサンス期にも、宝石をはめこんだ指輪は、身につける者に魔法の力をもたらしてくれるお守りとして考えられていました。ダイヤモンドがついたゴールドのリングを左手に付けると、悪夢を追い払い、悪魔や幽霊を退け、獰猛な野獣をおとなしくさせることができると信じられていました。家や庭のすべての角をダイヤモンドでなでると稲妻や嵐、葉枯れ病から守るといわれ、ダイヤモンドは美徳や寛大さをもたらし、精神病を抑えるとも言われています。ダイヤモンドは、幸運と成功を呼ぶだけでなく、占星術の影響から身を守ってくれると、広く信じられていました。上記のように宝石は長い間、癒しやお守り、さらには魔法の力を持つと信じられてきました。 今日、宝石はジュエリーとしてその美しさが愛でられていますが、もし虫除けや病気の治癒、旅行者の守護、あるいは愛を引き寄せるといった不思議な力があるとすれば、偶然の幸運を呼び寄せてみない手はありません。
まとめ
ダイヤモンドは美しく幸運の象徴というイメージもありますが、中には不幸を呼ぶダイヤなどと言われる物もあります。しかし、その多くは根拠のない話であり、語り継がれるうちに、どんどん尾ひれがついていったと考えられています。ダイヤモンドは決して不幸を招く石ではなく、幸運と成功を呼ぶ石といえるでしょう。