エルメスはバッグの老舗
エルメスは1837年、ティエリ・エルメスがパリで創業した馬具工房がルーツのブランドです。創業当時、交通手段でありブルジョワのステータスシンボルでもあった馬車は、人々の必需品でしたが、産業革命が完了し、馬車に代わる交通手段が登場するにつれて、馬具の需要は減っていきます。そういった時代の変化に対応し、エルメスは早くから馬具製造の技術を活かして、バッグをはじめとする皮革製品を製造していました。エルメスが最初に手掛けたバッグとして有名なのが「オータクロア」です。これはもともと鞍や乗馬ブーツなどをスマートに持ち運べるようにとデザインされたバッグでしたが、洗練されたデザインと旅行用カバンとしても便利だったため、現在に至るまで販売され続けている、エルメス随一のロングセラーアイテムです。ちなみにこのオータクロアは、ケリーやバーキンのデザインのベースとなったバッグでもあります。
3代目のエミール・エルメスの時代には世界で初めてファスナーによる開閉機構を備えたバッグ「ボリード」が発表されます。ファスナーによる開閉はバッグの口を完全に閉じきることができるので安全性が高く、荷物が多くなる旅行カバンにはうってつけでした。ボリードは1923年に誕生しましたが、この頃、機能的でファッショナブルな女性のためのスタイルを打ち出し、レディースファッションに革命を起こしていたシャネルが、先駆的にファスナー開閉を服に採用します。しかし、まだファスナーを縫い付ける技術が十分に発達していなかった頃は、エルメスがシャネルの服にファスナーを縫い付けていた時代もあったようです。
コンスタンスはエルメス ショルダーバッグの代表格
コンスタンスは、バーキンの生みの親でありエルメス5代目社長のジャン=ルイ・デュマが、バッグデザイナーのカトリーヌ・シャイエにコンセプトを伝え、彼女がデザインしたバッグです。このバッグは1967年に誕生しましたが、時期を同じくして誕生したカトリーヌのご息女の名前がこのバッグにも与えられました。コロッとしたスクエアフォルムのショルダーバッグで、シティな洗練とスポーティな軽快さを持ち合わせた雰囲気があります。装飾的な要素はH型のクラスプだけで、ミニマルな印象があり、服装やTPOを選ばない普遍的なデザインも人気の理由でしょう。コンパクトながら、スクエアフォルムは収納面で考えても使いやすいです。シンプルなぶん、エルメスの上質な革の個性が前面に出るので、上級者は個性的な色やエキゾチックレザーのコンスタンスを、コーディネートのアクセントとして使うようです。
コンスタンスのサイズ展開
コンスタンス 14(ミクロ)
W 14cm × H 11cm × D 3cm
※エルメスのバッグは手作業で作られているのでサイズには誤差がある場合があります。
コンスタンスの中でも特にコンパクトなサイズです。スマホの直径くらいの大きさなので、持ち物は最低限の貴重品+α程度というミニマリストにぴったりです。ミニバッグは最近のトレンドでもあり、ユニークな色や素材のものを選べば、装いのワンポイントとしても引き立ちます。ボディが小さい分、相対的にH型クラスプの存在感が印象的です。
コンスタンス 18(ミニ)
W 18cm × H 15cm × D 4cm
コンスタンス ミクロよりも一回り大きく、文庫本なども収納できるサイズです。ミクロよりもバッグとしての収納力が増しており、ミクロはアクセサリー的な性格がある一方、ミニはよりバッグとしての本領を発揮してくれるサイズと言えます。
コンスタンス 24
W 24cm × H 16.5cm × D 8cm
24はコンスタンスの定番といえる立ち位置のサイズです。奥行きはミニの倍あり、コンパートメントで4つの空間に区切られているので、物を取り出しやすいという点もポイントです。
コンスタンスエラン
W 25cm × H 14.5cm × D 5cm
コンスタンス 24よりも横長のフォルムが特徴的なモデルです。コンスタンスはコロッとした見た目がどちらかと言えばチャーミングな印象ですが、エランはレクタングル フォルムでよりエレガントな印象を醸し出しています。
まとめ
エルメスのコンスタンスについて紹介しました。コンスタンスが登場した1960年代は、ファッションの主たる舞台が、オートクチュール(オーダーメイド)からプレタポルテ(既製服)に移り変わっていった時代でもあり、膝上丈のワンピースやミニスカートが登場し、女性の装いにアクティブなエッセンスが表れていました。コンスタンスも、そんな街に飛び出したくなるようなコンパクトで小回りの利くショルダーバッグとして、すぐに女性たちに受け入れられました。そして今なおエルメスの人気モデルの一つとして愛さえ続けています。