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金のインゴットの支払調書制度とは?
金のインゴットを売却すると、取引によっては「支払調書制度」が関わってきます。聞き慣れない制度かもしれませんが、一定額以上の取引について税務署へ報告される仕組みです。
支払調書とは
金の支払調書とは、金地金などの売買に関して、取引の内容を税務署に報告するための書類です。具体的には、1回の取引額が200万円を超える場合、買取業者が作成し、税務署へ提出することが義務づけられています。
支払調書には、金地金などを一定額以上で買い取った業者が、誰にいくら支払ったかを記載して提出します。税務署はこれをもとに、売却益に対する課税の有無を確認します。
支払調書が法整理された理由
支払調書制度が導入された背景には、インゴット取引に関する譲渡所得の申告漏れが、相次いで発覚されたという事情があります。
税漏れを防ぐための制度強化
金やプラチナなどのインゴットを売却して得た利益は、本来なら所得税の課税対象です。しかし、取引が現金で行われることも多く、把握が難しいという側面がありました。
こうした実態を受け、課税の適正化と脱税の防止を目的として法整備が進められたのです。現在は、一定額以上の取引について、支払調書の提出が義務づけられています。
この制度の根拠となる規定は、「所得税法 第225条 第1項 第14号」に明記されています。
支払調書の記載項目
支払調書には、取引の相手方に関する氏名や住所、マイナンバーのほか、売却金額や取引日などが記載されます。いずれも取引時に把握できる基本的な情報が中心です。
記載項目 | 氏名 / 住所 / 個人番号(マイナンバー) / 金地金等の種類 / 重量 / 数量 / 支払金額 / 支払確定年月日 など |
支払調書の必要書類
200万円を超える金インゴットを売却する際には、本人確認書類の提示が求められます。代表的なものとしては、「顔写真付きの本人確認書類」と、「マイナンバー(個人番号)を確認できる書類」の2点が求められます。
運転免許証やパスポートが前者に該当し、後者にはマイナンバーカードや通知カードなどが該当します。
本人確認書類の準備ポイント
注意したいのは、パスポート単体では不十分な場合がある点です。2020年2月以降に発行された日本のパスポートには、住所欄がなくなっています。そのため別の書類で住所を確認する必要があります。
ただし、マイナンバーカードを提示すれば、これらの要件を1枚で満たすことができます。また、準備する際は、有効期限が切れていないかもチェックしておきましょう。
顔写真付きの本人確認書類 | 運転免許証(運転経歴証明書) / マイナンバーカード / 住民基本台帳カード / 特別永住者証明書 / パスポート ※新型は補助書類が必要 |
マイナンバーを確認できる書類 | マイナンバーカード / 通知カード(個人番号通知書) ※氏名・住所が最新であること / マイナンバー入りの住民票の写し |
支払調書の対象・対象外の取引
金のインゴット取引に関する支払調書制度では、すべての売却が対象となるわけではありません。課税の公平性を確保するために設けられた制度ですが、実際には一定の条件を満たす取引に限って提出が求められます。
支払調書の対象取引
インゴットなどの貴金属を売却する際、取引額によっては「支払調書」の提出が求められることがあります。特に注意すべきなのが、1回あたりの取引金額です。
200万円以上の売却は提出が必要
売却額が1回あたり200万円以上となる取引には、支払調書の提出義務が生じます。ただし、取引を分割し、それぞれの取引額を200万円未満に抑えれば提出は不要です。
たとえば、1キログラムのインゴットを10本に分けて100グラムずつ売却すれば、1回あたりの取引額は約50万円となり、制度の対象外となります。基準となるのは「1回ごとの取引金額」である点を理解しておくことが重要です。
支払調書の対象外取引
一方で、条件を満たせばこの提出を避けることができます。取引金額や売却方法によっては、制度の対象外となることがあるため、あらかじめ把握しておくと安心です。
取引を分ければ提出義務は生じない
売却額が1回あたり200万円未満であれば、支払調書の提出義務はありません。たとえば、100グラム50万円のインゴットを複数本まとめて売却しても、合計額が200万円を超えなければ提出の対象外です。
さらに、高額なインゴットを「精錬分割」によって小分けにすれば、1回ごとの取引額を抑えることができます。制度では1回ごとの取引金額が基準とされているため、取引を分けることで提出を回避できます。
支払調書と税金の関係
支払調書が発行されたとしても、必ずしも納税義務が生じるとは限りません。仮に売却額が購入時の価格を下回り、損失が出ている場合には課税対象外となります。
申告義務の有無は利益額で決まる
年間を通じた譲渡益が50万円以下であれば、他の課税対象と合算しても申告は不要です。金やプラチナなどの貴金属を売却した場合でも、この基準を超えない限り確定申告の義務は生じません。
ただし、利益が大きくなると申告が必要となるため、取引内容はきちんと記録しておきましょう。状況によっては税務署から確認の連絡が入ることもありますので、正確な情報を把握しておくと安心です。
まとめ
支払調書制度は、資産として金を保有しているなら、知っておきたい基本的なルールといえるでしょう。取引後に思わぬ課税が発生しないよう、制度の概要をあらかじめ把握しておくことが大切です。