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ポートフォリオに入れるべき金の割合
金をポートフォリオに組み込む場合、全体の25%が理想とされています。
具体的には、「株式」「債券」「現金」「金地金」の4つを均等に25%ずつ保有します。これは、アメリカのハリー・ブラウンが考案した「パーマネントポートフォリオ」に基づいています。
4つの異なる金融商品をそれぞれ25%ずつ保有することで分散投資を実現し、どのような市場環境でも、安定したリターンを確保しようという考え方が特徴です。
一見すると保守的なアプローチに見えるかもしれませんが、現在でもこの手法は多くの投資家に採用されているため、勝つためのセオリーの1つであることを時代が証明しています。
また、リスク管理を目的とした金投資の割合としては、5~10%程度を目指す人が多く、統計的にも有意性が確認されている水準とも考えることができます。
金をポートフォリオに入れるメリット
金をポートフォリオに加えるメリットとして、以下の3つが挙げられます。
・価値がなくならない
・分散効果がある
・現物が存在する
ここでは、これらのメリットについて詳しく解説します。
価値がなくならない
金は価値がなくなることがないため、ポートフォリオに入れることは大きなメリットになります。
例えば、株式や債券などは、世界的な不況によって価値が暴落すると、損失が発生するリスクがあります。一方で、金は世界中で価値が認められている実物資産であることから、価値が失われることはないと考えられています。
分散効果がある
金をポートフォリオに加えることで、分散投資の効果が期待できます。
昨今の投資環境では、世界的にインフレが高水準で推移することが予想されるとともに、国家間・地域間の対立や主要国の金融政策など、数多くの不確定要素が存在しています。
このような状況下では、インフレや不確実性に対するリスクヘッジとして、金をポートフォリオに加えることが効果的です。
実際、過去の金の価格変動を振り返ると、株式や債券とは異なる動きをしていたことから、金をポートフォリオに組み込むことで分散投資の効果が期待できるでしょう。
現物がある
「実物資産」として現物が存在することには、大きなメリットがあります。
例えば、最近注目されているビットコインなどの仮想通貨はデジタル資産です。そのため、海外からのハッキングによって証券口座から資産を奪われるリスクがあります。
これに対して、現物の金はインターネット上で簡単に奪われたり、消失したりすることがないため、非常に高い安全性を誇る資産と言えます。
さらに、金貨などの実物資産は、災害の影響を受けにくく、時間が経過しても摩耗や損壊の可能性が低いため、長期間にわたって資産として保持しやすいという利点もあります。
金をポートフォリオに入れるデメリット
金をポートフォリオに加えるデメリットとして、以下の3つが挙げられます。
・盗難・紛失の可能性がある
・売買時に手間がかかる
・利益は売却益しか狙えない
ここでは、これらのデメリットについて詳しく解説します。
盗難・紛失の可能性がある
金を実物資産として手元に保管する場合、盗難のリスクが高まります。
このリスクを軽減するためには、以下のようなセキュリティ対策が求められます。
・自宅に金庫を設置する
・セキュリティ会社に依頼して防犯強化を行う
・貸金庫や保管サービスを利用する
ただし、保管を委託する会社によっては、保管する金の量が多いほど、料金が高くなるプランもあります。このような場合、実質的に金の価値が目減りする可能性があります。
また、万が一に備えて金に保険をかけることもできますが、この保険にも費用がかかることを覚えておきましょう。
売買時に手間がかかる
現物の金は流動性が低く、売買に手間がかかるというデメリットがあります。
例えば、株式や債券はネット証券のマイページから手軽に注文できますが、現物の金を購入する場合は、銀行や貴金属メーカーで購入する必要があります。そのため、受け取りや売却には時間がかかります。
このように、即座に売買できない点が、現物投資の欠点と言えるでしょう。
利益は売却益しか狙えない
金で利益を得るためには、購入時よりも価格が上昇したタイミングで売却する必要があります。ほかの資産のように、保有しているだけで利子や配当金を得られるような仕組みがありません。
さらに、金の売却はタイムラグが生じる可能性もあります。前述のとおり、売却時には手続や手間がかかるため、その点にも注意が必要です。
このように、金投資には金利や配当といった収益がないというデメリットがあります。
金はポートフォリオに不要?債権とどっちがいい?
金と債券は、株式を始めとしたほかの金融商品と相関性が低いため、ポートフォリオにおいて有効的な分散投資です。
ただし、これらは資産形成の目的が異なるため、一概にどちらが優れているとは言えません。
金は債券に比べてインフレに強く、長期的に右肩上がりの成長を続けているため、長期間保有することで利益を得やすい資産です。一方で、債券は保有することで金利収入を得ることができるため、安定した収益を期待できます。
このように、金と債券はそれぞれ異なる特性を持っているため、保有目的に応じて選択する資産も変化します。
金をポートフォリオに組み入れるべきタイミング
金をポートフォリオに加えるタイミングを考える際、価格が大きく下がったときが1つのポイントとなります。しかし、分散投資を考える場合はそれほど重要ではありません。
パーマネントポートフォリオでは、金をポートフォリオの25%の割合で保有することが推奨されているため、金価格の上下に関係なく、金の割合は一定に保たれます。
価格がどのような変動をしても、保有する割合は変わらないため、タイミングを気にする必要がないのです。
金をポートフォリオに入れる際の注意点
金をポートフォリオに加える際の注意点として、「売買時に手数料がかかること」や「為替の影響で金価格が変動すること」が挙げられます。ここでは、これら2つの注意点について詳しく解説します。
売買時に手数料がかかる場合がある
金を売買する際には、手続に伴い、手数料が発生することがあります。
例えば、500g未満の金を購入する際、基本的には販売価格に加えて手数料がかかります。しかし、販売業者によっては手数料が発生しないこともあるため、購入前に確認しておきましょう。
それとは別に、金の売却益は原則、譲渡所得として課税対象になります。
また、金は所有期間が5年を超えると、その譲渡益は長期譲渡所得として扱われます。長期譲渡所得は、課税される譲渡所得の金額が半分になるため、節税したい方は所有期間が5年以上経過してから売却しましょう。
為替によって金価格が変動する
金を売買する際には、為替動向に注目することが重要です。
一般的に、金価格が下落する傾向にある、円高ドル安の時期が購入のチャンスとなります。逆に、円安ドル高の場合は金価格が上昇する傾向にあるため、売却のタイミングと言えます。
このように、金価格の動きと為替相場を照らし合わせることで、最適な売買タイミングを見つけることができるでしょう。
金の現物投資の2つの方法
金の現物投資には、投資向けに作られた金貨を集める「金貨投資」や、金塊を保有する「金塊投資」などがあります。ここでは、これら2つの特徴について詳しく解説します。
金貨投資
ポートフォリオに金を組み込む基本的な方法は、政府が投資家向けに製造した地金金貨に投資することです。特に流通量が多い金貨として、ウィーン金貨ハーモニー、メープルリーフ金貨、カンガルー金貨、アメリカンイーグル金貨などが挙げられます。
これらの金貨は、証券会社や貴金属販売店、銀行などで購入することができます。
金塊投資
金塊とは、インゴットやゴールドバーと呼ばれる金地金のことです。
通常、金地金には純度や製造メーカーの情報を示す刻印によって、品質が保証されています。投資の世界では、信頼性と品質が重視されるため、刻印のあるインゴットは投資家から高い支持を受けているのです。
特に、田中貴金属や三菱マテリアルなどは、国際的に認められた業者であるため、信頼できる購入先として挙げられます。
そのほかにも、金を自宅で保管せず、業者に預けたまま運用する純金積立なども存在します。
現物以外の投資
補足として、現物以外の投資についても解説します。
金投資を手軽に始めたい場合、金に関連する株式銘柄に投資する方法もあります。
具体的には、金の採掘や精製など、金の生産に関わる企業の株式を購入する方法です。これらの株価は、金価格と連動する傾向がありますが、金価格だけでなく、その企業の収益にも影響を与えます。
それ以外にも、投資信託をポートフォリオに組み込むことがあります。主な投資先としては、国内のETF(上場信託投資)や、ロンドンの金価格に連動するものなどが挙げられます。
現物の金塊を売買するときは一定の資金が必要であったり、手間がかかったりしますが、この方法であれば、比較的手軽に金投資を始めることができるでしょう。
まとめ
今回は金投資における適切なポートフォリオの割合について解説しました。
金だけでなく、株式、債券、現金の資産をそれぞれ25%ずつ保有すると、安定したポートフォリオを構築できると考えられています。金投資を検討している場合は、今回ご紹介した「パーマネントポートフォリオ」を、ぜひ参考にしてみてください。