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金価格は今後どうなる? 長期的な見通し

金価格の長期的な動向は、多くの投資家が関心を寄せるテーマです。過去のデータを見ると、一時的な変動はあるものの、緩やかに上昇傾向が続いています。
世界情勢が不安定で上昇する
2000年から現在にいたるまで、金は長期的な上昇トレンドにあります。コロナショックが終息の兆しを見せていますが、ウクライナ侵攻や台湾問題など、世界経済に影響を与える問題が相次いでいるからでしょう。
こうした地政学的リスクや経済危機は、金の需要を高め、価格を押し上げる一因になります。
ただし、これらの要因による価格変動は一時的なものであり、収束に向かうと沈静化する傾向にあるため、取引のタイミングには慎重さが求められます。
金の希少価値が高まり上昇する
将来的に金の希少価値は高まると予想されており、それに伴い価格が上昇すると考えられています。金は限られた埋蔵量を持つ資源で、需要に対して供給が不足する可能性があります。
地球上の金が枯渇すれば再利用が主な手段となるため、金の希少価値はさらに高まるでしょう。そうなれば、価格もさらに上昇する見込みです。
金の採掘に多くのコストがかかり上昇する
金の採掘には多大なコストがかかります。理論上は人工的に生成することも可能とされていますが、現段階では実用化には至っておらず、新たに金を得るには採掘に頼るしかありません。
これまで掘り出された量はおよそ18万トンとされ、埋蔵量は限られていると考えられています。
将来的に技術の進歩によって採取可能な範囲は広がるものの、海底などの困難な環境から金を回収するには、さらに高額なコストと精密な手法が求められます。
このように、採掘にかかる負担の増加が金価格に影響を及ぼすと見られています。
金需要はなくならないので上昇する
金の需要は依然として高く、多様な用途があります。装飾品や投資対象に加え、医療や産業分野でも重要な役割を担っています。たとえば、スマートフォンやパソコンなどの電子機器にも金が使われており、私たちの日常に深く関わっています。
こうした背景から、金の需要が消える可能性は低いといえるでしょう。人口の増加や技術の進展に伴い、今後も価格の上昇すると予想されています。
金の投資家が増え上昇する
近年では、金を投資目的で保有する人が増加しています。安定した現物資産である金は、世界共通の価値を持ちどの国でも売却可能です。
さらに、株取引のように破綻や倒産のリスクがなく、経年劣化により価値が下がることもありません。また、インフレ対策やリスク分散の手段としても重宝されます。
このようなメリットから、金への投資家は今後も増えると予想されています。金の需要が増加すれば、その価格も上昇するでしょう。
10年後など短期的な金相場予想が難しい理由

短期的な金の価格予想は、専門家でも難しいといわれています。では、なぜそれほどまでに困難なのでしょうか。
直近の世界情勢を正確に予想できないから
金相場は、米ドルを基準に決められているため、アメリカの金利が上昇するとドルが買われ、金の価格は相対的に下降傾向を示します。
そのため、世界情勢によって金の価格は変動します。戦争など地政学的リスクやコロナショックなどの経済危機であれば、金が安全資産として買われ価格が高騰します。
当然ながら、突発的な国際情勢を正確に予測するのは難しいでしょう。そのうえ、日本での金価格は為替相場の影響も受けるので、短期的な目線で予想するのは困難です。
投資家が金の売りや買いを行うから
需要と供給のバランスが崩れると、金の値崩れが起こる可能性があります。金は保有しているだけでは利益を生み出さないため、他の投資資産で利益を得るために売却されることがあります。
金が一気に売却されると市場に金があふれ、金相場が下落します。逆に金を購入する投資家が増えれば供給が追いつかず、金相場は高騰します。
近年では宝飾産業や工業分野でも金の需要が高まっており、相場は上昇傾向にあります。しかし、短期的にはバランスが崩れることもあるのです。
金価格が上昇している理由

近年、金は最高価格を更新し続け、2025年5月には、ついに1万7,000円を超える高値を記録しました。昔から価値の下がらない資産として高い人気を博してきましたが、なぜ高値で取引されるようになったのでしょうか。
景気の不透明性
金価格が高騰した理由の一つに、新型コロナウイルスの影響によって引き起こされた、景気の不透明性が挙げられます。
2020年頃から世界中で大流行したこの未曾有のパンデミックは、経済活動に大きな打撃を与えました。そして、2025年現在でも景気の不透明性は続いています。
経済が不安定な状況では、安全資産とされる金への投資が増えるため、金価格が上昇しました。
ロシアによるウクライナ侵攻
金価格が高騰した二つ目の理由は、ロシアによるウクライナ侵攻です。戦争が起こると急激なインフレが生じます。インフレとは「継続的に物価が上がり、自国の通貨価値が下がる状態」のことです。
資産構成の一部として金を保有することで、インフレの影響を軽減できるため、金への需要が高まりました。
投資家は安全資産である金に資金を移し、その結果、金価格の高騰が続いています。
円安・ドル高
金は円安・ドル高の影響を受けて価格が上昇します。円安により海外からの需要が高まり、価格が高騰する傾向にあります。企業破綻のリスクがなく、世界中で換金しやすい点も魅力です。
景気に左右されにくい安全資産として、2022年以降の経済不安を背景に注目が集まり、現在も価格は上昇を続けています。
| 金のメリット | 企業破綻による無価値化リスクがない |
| 世界中で価値が認められ換金しやすい | |
| 景気の影響を受けにくい |
供給量に対する需要が高い
近年、金の需要は増加傾向にありますが、供給が追いつかず不足感が強まっています。金はジュエリーだけでなく、スマートフォンやパソコンなどの電子機器にも欠かせない素材です。
これらの機器の普及により、金の必要量が増えているのです。一方で、金の埋蔵量は限られており、現在の採掘速度が続けば約20年で枯渇すると予想されています。このため、金の需要は今後も高まる見込みです。
世界的な低金利
低金利の状況が続くことで、債券の利回りは低迷しています。そのため、投資家の間では金の価値が一層注目されるようになりました。
利息収入が見込みにくい環境で、金の安定した価値が評価され、その需要が高まっています。
こうした流れが、価格の上昇を促しているのです。金融市場の先行きが見通しにくい状況下で、この傾向はさらに強まっています。
今後の金価格に影響を与える5つの変動要因

金価格の変動には、多くの要因が複雑に絡み合い影響を与えます。では、特に重要な5つの要因をそれぞれ解説していきましょう。
需要と供給の変動
金の価格は需要と供給のバランスによって変動します。一般的に需要が供給を上回れば価格は上昇し、逆に供給が需要を上回れば価格は下落します。
需要の主な内訳は、宝飾品としての消費、電子部品などに使われる産業用途、そしてインフレヘッジや安全資産としての現物投資需要です。一方、供給は鉱山からの新規生産に加え、スクラップを再利用するリサイクル供給の2つに大別されます。
【需要】宝飾品と産業用
金の最も一般的な用途は結婚指輪やネックレスなどの宝飾品で、2025年時点の年間需要は約1,750トンと、依然として全体の需要で最大の割合を占めています。
産業用途では年間約330トンが消費されており、主にパソコンやスマートフォンなどの電子機器、半導体、自動車部品などに使用されています。
宝飾品の高い需要に加え、産業分野での利用も着実に増加しているため、金の需要は安定的に推移しており、これが金価格の動向に影響を与えています。
【需要】現物投資
現物投資としての需要は、投資家が金を実物資産として取得・保有することを指します。宝飾品が金需要の大部分を占める中、次に多いのが投資需要です。
2025年の現時点における現物金と「ETF(上場投資信託)」を合わせた世界の金投資需要は、約1,190トンと前年から約1%増加し、引き続き高い水準を維持しています。金地金およびコインの需要は約1,190トンで前年とほぼ同じ水準です。
一方、金ETFについては2025年に入りわずかな純流入に転じており、2024年の流出傾向から安定的な需要に回復しています。
【供給】鉱山生産
2025年、世界の金鉱山からの年間生産量は約3,680トンと、前年に続き緩やかに増加しています。これにより、世界の金供給量の約73%を占める重要な供給源であり続けています。国別では、中国が約375トンで引き続きトップの座を保っています。
オーストラリアとロシアはそれぞれ約315トン前後で安定した生産を維持し、カナダやアメリカも変わらず堅調な供給を続けています。一方で、かつて主要な金産出国であった南アフリカの生産量は約95トンに減少し、その影響力を大きく後退させています。
【供給】リサイクル
リサイクルとは、使用済みの宝飾品や電子機器から金を回収し、溶解して再利用する二次供給のことです。特に電子部品は「都市鉱山」と呼ばれ、日本国内には約6,800トンの金が眠っていると推定されています。
前年2024年のリサイクル供給量は約1,250トンで、鉱山生産量の約三分の一にあたります。将来的な採掘制限が懸念される中、リサイクルは持続可能な金の供給源として重要な役割を果たしています。
米ドルの値動き
金は米ドル建てで取引されるため、金と米ドルは逆相関の関係にあります。一般的に、米ドルが上昇すると金価格は下落し、逆に米ドルが下落すると金価格は上昇します。
そのため、金の取引には米ドルの変動要因を把握することが重要です。
米ドルの変動には米金利が大きく関係しています。一般に、金利が上がると金は売られやすくなり、反対に金利が下がると金は買われやすくなります。したがって、金相場を読み解くには、米金利の動向を見極めることが欠かせません。
地政学リスク
金は「有事の金」として知られ、地政学リスクが高まると需要が増える傾向があります。地政学リスクとは、特定地域の政治・軍事的な問題が経済に影響し、先行きの見通しが不透明になる状況を指します。
2025年も引き続き、ロシア・ウクライナ情勢や台湾周辺の緊張が注目され、世界の安全保障環境に不安が広がっています。こうした背景から、金価格は依然として高値圏で推移し、投資需要も増加傾向にあります。
インフレ
実物資産である金は、物価が上昇する局面で価格が上がる傾向があります。これはインフレにより通貨の購買力が低下するためです。たとえば、以前は100万円で購入できた品物が、同じ金額では手に入らなくなることがあります。
こうした状況下でも金は価値を維持するとされており、1970年代のオイルショック時に価格が急騰しました。そして、2022年の世界的な物価上昇を受け、2023年には過去最高値を更新しています。
これは、2025年に入っても変わらず、世界経済の不確実性やインフレ圧力が続く中、金への関心は依然として高まっています。
新興国の動き
金は投資資産として高い需要がありますが、新興国の経済成長もその必要性を押し上げました。
2020年代に入ってからは、特に中国やインドの中央銀行は、米ドル資産から金への移行を積極的に進めています。
これらの新興国は今後の経済成長が期待されており、金の需要がさらに増加する可能性があります。また、新興国の需要は金の価格下支えにもつながっています。
これまでの金価格の推移

2000年からの価格推移を見ると、上昇と下落を繰り返しながら、長期的に上昇トレンドが発生しています。そこで、これまでに金価格へ影響を及ぼした出来事を振り返ってみましょう。
【2000~2012年】約1,500ドル上昇
2000年から2012年にかけて、金価格は上昇トレンドが発生しました。この背景には、さまざまな政治的・社会的・軍事的な国際関係の緊張が相次いでいます。
これらの地政学リスクや世界的な金融危機が、約12年間で金価格を約1,500ドル上昇させたのではないかと考えられています。
| 2000年 | ITバブル崩壊 |
| 2001年 | アメリカ同時多発テロ |
| 2003年 | イラク戦争 |
| 2007年 | サブプライム住宅ローン問題 |
| 2008年 | リーマンショック |
| 2010年 | 欧州債務危機(欧州ソブリン危機) |
【2012~2015年】下落トレンドに
2012年から2015年にかけて、金価格は2010年以来の安値まで下落しました。
2000年からの約12年間、金価格は上昇傾向にありましたが、その後は鈍化しています。この下落における主な要因は、米国の金融緩和策の縮小が示唆されたためです。
2008年の金融危機対策として実施された緩和策が、2013年以降に終焉の兆しを見せ、米国の景気回復が見込まれたため、金への投資需要が減少し、金価格は下落しています。
| 2013年 | バーナンキ・ショック(テーパリング発言) |
| 2014年 | ウクライナ危機(クリミア併合)/ 原油価格の急落 |
| 2015年 | 中国株バブル崩壊(チャイナ・ショック) |
【2020年】新型コロナウイルスの影響で高値更新
過去24年間を振り返ると、世界経済や情勢の不安定化に伴い、金需要の高まりがうかがえます。2025年現在も史上最高値を塗り変え続けています。
2015年以降は比較的安定していた金価格ですが、2020年に新型コロナウイルスの影響で急騰し、2011年の最高値を超えました。その後、2023年にはロシア・ウクライナ情勢や世界的なインフレ圧力が重なり、さらなる高値を記録しています。
過去数十年を振り返ると、世界経済の不安定化や地政学リスクの高まりに伴い、金の需要が着実に増加していることがうかがえます。そして2025年に入っても、金価格は過去最高値を更新し続けています。
| 2016年 | ブレグジット決定(イギリスEU離脱国民投票) |
| 2018年 | 米中貿易戦争の激化 |
| 2020年 | 新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック) |
| 2022年 | ロシアのウクライナ侵攻 |
| 2023年 | イスラエル・ハマス戦争(ガザ危機) |
| 2023年 | 世界的なインフレと金利上昇(主要国の金融引き締め) |
| 2024年 | 紅海情勢の悪化(フーシ派による商船攻撃)とサプライチェーン混乱 |
金相場の見方は保有期間で変わる

金の価格動向は、保有する期間によって捉え方が大きく変わります。短期と長期、それぞれに適した戦略を知っておくことが、より堅実な金投資を行う鍵となるでしょう。
短期保有の場合
金を短期的に保有する場合には、相場の一時的な変動に注目する必要があります。金価格は、金利の動向や主要国の経済指標、さらには地政学的なニュースなどに敏感に反応するためです。
また、投資家の心理や一時的な需給の偏りも価格に大きく影響します。こうした背景から、短期での売買を考える際には、チャート分析や市場の流れを細かく読み取る姿勢が求められます。
価格の変化に的確に対応できるかどうかが、投資成果を左右するといえるでしょう。
短期投資が向いている人とは
短期で金を保有するなら、市場の値動きを細かく観察し、機敏に売買を行う姿勢が求められます。判断の速さやリスク管理の力が不可欠であり、ある程度の投資経験が前提となるでしょう。
また、金は流動性が高く、資金の出し入れがしやすいため、柔軟な運用を重視する方にも適しています。
| 短期の価格変動を利用して売買益を狙う人 | |
| 短期投資がおすすめ | 相場の急変に対応できる経験豊富な人 |
| 資金の出し入れがしやすい資産を好む人 |
長期保有の場合
金を長く保有すれば、短期的な価格変動にとらわれず、経済の大きな流れを見据えることが求められます。インフレの進行や通貨の価値下落、地政学リスクの高まりといった局面では、金の価値が見直されやすくなります。
そのため、金は景気の波に左右されにくく、通貨不安が強まる時期でも資産価値を維持しやすい資産とされています。
長期投資が向いている人とは
金を長期にわたって保有する投資は、価値の安定性を重視される方に向いています。他の資産と相関性が低い金は、ポートフォリオのリスク分散に効果的です。
こうした特性から、資産の保全やインフレ対策としての役割が期待できます。長期的な視野で、安定性を重視する投資家に適した選択肢となるでしょう。
| 長期投資がおすすめ | 安定した資産価値を求める人 |
| 経済変動に強い投資を望む人 | |
| リスクを抑える目的で分散投資に関心がある人 |
まとめ
金価格は過去数年で堅調に推移し、経済の不確実性や地政学リスクの影響を受けています。
2025年もこれらの要因が価格変動を左右し、安定資産としての役割から需要が続く見込みです。今後の動向を、慎重に見極めるべきでしょう。


