金とはどういうものか
金はAuの原子名をもつ金属で、原子番号は79番です。Auの名は、ラテン語で光り輝くものという意味の「aurum」に由来します。密度は19,300kg/m3と高いため、純金の金塊を持つとずっしりとした重みが感じられます。金は1064°Cで溶解し、2960°Cで蒸発します。化学元素であるため、金は製造できない金属です。見つけることしかできません。中世の錬金術師に代表される数々の科学者たちが金の生成を試みましたが、いまだに成功には至っていません。
また金は、すべての金属の中で最も可鍛性が高く、つまり柔らかく加工がしやすいという特性があります。さらに優れた電気伝導性と熱伝導性もあります。金は、耐蝕性も高く酸化の影響をほとんど受けません。このような非常に安定した金は、半永久的に保持することも可能です。純金は変色することもなく、あらゆる温度帯でも変質することなく、酸などの化学物質にも強い耐性があります。その上、磁気の影響を受けにくい金属でもあるため、電子機器の部品としても高い需要があります。
ジュエリーにおける金
鉄が錆び、銀が黒くなっても、金は変わりません。こういった不朽の特性や、眩く輝く黄金色を湛える金は、古来より貴重で価値の高い金属として宝飾品にも用いられてきました。金とヒトのかかわりには6000年以上の歴史があります。多くの文明では、金の黄金色は神に近しい、あるいは神そのものである太陽を連想させます。中国では、金は太陽、光、完璧さを象徴するものでした。ギリシャ人にとって、金は光、暖かさ、豊穣を表していました。エジプト人にとって、金はファラオの権威を高めました。このように金は古代文明以来、富や権力、宗教において象徴的な意味を持つ物でした。
現在、ゴールドジュエリーに使用されている金は純金であることはほとんどありません。というのも金は柔らかい貴金属であるので、純金は装身具にするには柔らかすぎるのです。そのため銀や銅、パラジウムなどの金属を混ぜて金合金にしたものがジュエリーの地金に使われます。金合金における金の品位(純度)は24分率で示されます。純金(純度99.9%以上)はK24となり、ゴールドジュエリーでよく使われるK18は75%の金純度ということになります。また金合金の強みとして、金の色を変えることができます。たとえばホワイトゴールドは、金にゴールドやパラジウムを割り金した金合金で、ピンクゴールドはゴールドに銅や銀を割り金した金合金です。また装身具における金のメリットとしては、アレルギー反応が出にくい金属であるという点があります。一方でほかの金属を含む金合金で、銅などが割り金に含まれている場合は、割り金の金属によってアレルギー反応が引き起こされる場合もあるので注意が必要です。
経済における金
金は古来より資産的な価値も高く、貨幣として経済的な役割を果たした金属でもあります。金をそのまま貨幣にした金貨や大判小判などの貨幣に始まり、19世紀にイギリスで確立された金本位制は、銀行の金保有量と紙幣の価値を等価関係にすることによって、紙幣の価値を保証するという制度でした。しかし、イギリスの経済後退や1929年の世界恐慌を機に、金本位制が廃れると第二次世界大戦後、圧倒的に強い貨幣であったドル基軸に置いた固定相場制で、ドルのみを金に交換できるとする金ドル本位制度が主流となりました(この制度が決議された場所の名前をとってブレトンウッズ体制とも呼ばれます)。しかし、金ドル本位制も1970年代に停止され、現在の変動相場制に至ります。しかし投資に関しては、金は今でも安全な“避難所”と考えられており「有事の金」と呼ばれ、不景気や情勢不安にも強い資産として投資家から信頼を得ています。金は比較的安全で持続可能な投資であるため、経済不安に際して金の価値が大きく上がります。
まとめ
金は遠い昔から、希少価値の高い金属として世界中で重宝されてきました。富や権力、宗教を司り、錬金術師は金精製を夢見て四苦八苦し、大航海時代の冒険家は黄金郷を目指して未開の地を切り開き、19世紀にカリフォルニアで金が出たと噂になれば、世界中から一攫千金を目指した「フォーティナイナーズ」が押し寄せました。現在においてもその価値は変わることなく、装飾品としても資産としても、工業用素材としても価値の高い存在です。