ユニークな個性を持つ金
世界共通言語ともいえる元素記号において、金は「Au」ですが、これはラテン語で金を意味するaurumに由来します。また、金は貴金属といわれますね。貴金属とは日本大百科全書(ニッポニカ)によると「化学的にみてイオン化エネルギーが水素のそれよりもはるかに大きく、酸および酸化剤に侵されない金属。」ということだそうで、つまり、「酸化と腐食に強い金属」であるということです。これらの性質を持っているからこそ、海水に浸かったり、地中に埋められたり、外気にさらされたりしても、変質することなく元の姿を保つことができるため、古代の金製品が出土するということがあるのです。ただし、臭素、王水、塩素、セレン酸、塩化第二鉄、アルカリシアン化物、硫酸などの化学薬品を使えば腐食します。
また、金はあらゆる金属の中で最も可鍛性と延性があり、つまり、衝撃が加わっても変形はするが壊れはしない性質を有しています。この可鍛性により、特に他の金属と合金化されていない場合、容易に引き伸ばしたり、成形することができます。裏を返せば金は他の金属に比べて非常に柔らかい金属なので、ゴールドジュエリーでは、変形を防ぐために他の金属と組み合わせて「金合金」化して使用されます。
金の鉱床
ダイヤモンドすら人工的に作ることができる現代においても、金はいまだ人工的に生成できない金属です。金は、金を含む鉱床から産出されます。金は主に2種類の鉱床に含まれています。金鉱石の原石がそのまま存在する一次鉱床と、一次鉱床の金鉱石が雨や風によって運ばれ、海や川の底に沈降した二次鉱床です。
一次鉱床
金を含む原石が採れる鉱床を一次鉱床と呼びます。時間の経過や火山の噴火、地殻変動などにより、地下深くにあった金を含むマグマは地表に上昇し、この液体が冷却されて結晶化したときに(特に石英の形で)金を含む岩石となるのです。そのため、金鉱床はマグマが噴出する火山の近くにみられることも多いです。金は、火山性火成岩(玄武岩、流紋岩、安山岩、蛇紋岩など)、堆積岩(粘板岩や砂岩など)など、さまざまな種類の岩石に含まれています。一次鉱床は非常にさまざまな時期に形成されています。30億年から25億年前に形成されたものもあれば、わずか100万年前のものもあります。したがってさまざまな岩が金を含有する可能性があります。例えば石英(クォーツ)には、金がしばしば含まれる鉱物です。
二次鉱床
金を含んだ溶岩流が地表に噴出されて一次鉱床が生成されますが、一次鉱床が雨や風にさらされ侵食されると、風や水流にのって、金を含む土砂が川底や海底などに堆積します。金が主に収集されるのはこの漂砂鉱床です。こうした漂砂鉱床は一次鉱床に対して「二次鉱床」と呼ばれます。
古くからヒトの営みと密接にかかわってきた金
金は古来より世界中の文明と関わりがあったため、金の発見を特定の人や文明に帰することは非常に困難です。現在までに、最古の金は1972年に現在のブルガリア・ヴァルナで発見されたトラキア文明のネクロポリス(集合墓地)で発掘されました。トラキア文明はブルガリア周辺で興隆した古代文明で、その金細工はすでに高度な技術を有していました。
世界の金
金は世界各地に存在しますが、金の世界的な分布は、地質学的要因に加え、歴史的、経済的、地政学的要因にも左右されます。金産出量の多い国は以下の通りです。
1位:中華人民共和国、370(トン)
2位:オーストラリア、330
3位:ロシア、300
4位:アメリカ合衆国、180
5位:カナダ、170
6位:ガーナ、130
7位:メキシコ、南アフリカ、ウズベキスタン、100
10位:インドネシア、ペルー、90
現役の主要な鉱山は世界中で枯渇しつつあるという説があり、新たな金鉱山が見つからない場合、金の採掘量は急速に低下する可能性があります。一方で新たなテクノロジーにより、今まで採掘不可能だった領域の金を採掘できる可能性も期待されています。
ゴールドジュエリーにおける金
金という金属は、可鍛性のある金属で、非常に柔らかく加工しやすい反面、ジュエリーとしては強度が不十分です。そのため、金でジュエリーを作る場合、他の貴金属と組み合わせて強度をもたせた金合金が使用されます。また、金合金は組み合わせる金属の性質によってさまざまな色合いを金に持たせることができます。この金の含有量は品位ともいわれ、一般的に24分率または1000分率で表されます。
K24(999/1000)なら金含有率99.9%以上=純金
K22(916/1000)なら金含有率91.6%
K20(833/1000)なら金含有率83.3%
K18(750/1000)なら金含有率75%
K14(585/1000)なら金含有率58.5%
K9(375/1000)なら金含有率37.5%
K24は主にインゴットやコイン、K22はハイジュエリー、K18はジュエリーによく使われます。K14やK9などは安価なジュエリーや高級文房具などに使われることが多いです。
まとめ
金の特性を様々な角度から紹介いたしました。古くから人類と密接な関係のある金は現在においても様々な場面で活躍しています。