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金の延べ棒「インゴット」とは?意味や重さ・価格・購入方法を解説

金の延べ棒「インゴット」とは?意味や重さ・価格・購入方法を解説
木村健一(きむら けんいち)
記事の監修者
査定歴15年以上
木村健一(きむら けんいち)

貴金属・ジュエリー分野で査定経験を持つ鑑定士。
テレビや雑誌、YouTubeなどへの出演経験もあり、専門的な知識と確かな鑑定力で信頼を集めている。

金インゴットとは、資産保有を目的として形状を整えた金の延べ棒のことを指します。今回は、インゴットの意味や価格、購入方法、保管方法など、幅広い内容について詳しく解説します。

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目次

金インゴットとは?

インゴット(英語:ingot)とは、日本語で「金属の塊」を意味します。

これは、精錬された金属を「インゴットケース」と呼ばれる鋳型に流し込み、固めて塊状に成形したものです。ここでは、金インゴットに関する基礎知識として、知っておきたいポイントをご紹介します。

金インゴットの種類と重量

金インゴットの重量は、大きく分けて5種類あります。その中でも、スモールバーやコインバーには複数のサイズがあり、すべて合わせると10種類以上になります。

種類 重量
ラージバー 約12.5kg(400トロイオンス)
キロバー 1kg
グラムバー 500g
スモールバー 500g未満
コインバー 50g以下

※上記の内容は、貴金属メーカーによって異なる場合があります。

テレビや映画で目にするインゴットは、1キログラム以上の大きなサイズであることが多く、非常に高価なものです。

中でも最も大きなサイズの「ラージバー」は、主にLBMA(ロンドン地金市場協会)が管理する銀行の金庫に保管され、中央銀行などの取引に用いられています。一般に流通することはほとんどなく、なかなか目にする機会もないかもしれません。

金インゴットの純度

金インゴットは純度が高いほど高価になります。

日本では純度99.99%以上が純金となり、インゴットの表面には999.9と刻印されています。これは、完全に混じり気のない物質を精製することは非常に難しく、最高でもこの純度が限界になるためです。

また、金の純度は、JIS(日本工業規格)およびISO(国際標準規格)により、千分率で表されています。もし、純度の低い粗悪品がインゴットとして出回ると、金の価値や信用が落ちるおそれがあります。

こうしたリスクを避けるために、金の取引市場ではインゴットに関する規格が設けられ、溶解業者や品質保証業者も認定リストに登録されています。これにより、インゴットの純度と信用が守られているのです。

金インゴットと金塊との違い

金塊とは、金でできた塊のことを指します。

このため、「金塊」と「インゴット」はほぼ同じ意味で使われることがあります。ただし、「金塊」は素材が金に限定されるのに対し、「インゴット」は金以外の金属にも用いられる点に違いがあります。

金インゴットと延べ棒との違い

「インゴット」と似た言葉としては、「金の延べ棒」も挙げられます。

金の延べ棒も純金の塊を指し、金で作られたインゴットとほぼ同じ意味です。ただし、冒頭のとおり、「インゴット」はもともと「金属の塊」という意味を持つため、金に限らず、さまざまな金属に対して使用されます。

詳しくは後述しますが、プラチナや銀、パラジウムなどのインゴットも存在します。

金インゴットと地金の違い

「インゴット」と「地金」はよく似た言葉ですが、それぞれ異なる意味を持ちます。

インゴットは資産保有を目的に製造され、厳格な規格に沿い形が整った金塊を指します。一方、地金は金属の原材料を示す言葉で、形状に関係なく使われます。

地金は日本工業規格(JIS)に成分が規定されていますが、形状についての規定はありません。したがって、小さな粒状の金も金地金として扱われます。

そのため、地金はインゴットよりも幅広い状態を指し、インゴットは地金の一部に含まれます。

金以外の3種類のインゴット

インゴットには、金以外にも「プラチナ」「銀」「パラジウム」といったさまざまな貴金属を素材としたものがあります。

ここでは、これら3種類のインゴットについて、それぞれの特徴について詳しく解説していきます。

プラチナのインゴット

プラチナは、貴金属の中でも特に採掘量が少なく、希少性が高いとされています。

しかし、2025年5月時点におけるプラチナの買取価格は、1グラムあたり約5,000円です。一方、金は約16,000円と、プラチナ価格の3倍以上で取引されています。

希少価値が高いはずのプラチナが金よりも安く取引されている主な理由は、需要の多くが工業用途に依存している点にあります。工業需要は景気や世界情勢の影響を受けやすいため、プラチナ価格も不安定になりやすいのです。

このような背景から、プラチナは金と比べて投資対象としての需要が低く、結果として価格水準も金より抑えられていると考えられます。

銀のインゴット

銀は、電子機器内の半導体や太陽光パネルにも使用されています。近年では、太陽光発電の需要増加にともない、価格上昇を期待して銀に投資する人もいるようです。

ただし、銀は金やプラチナと比べて変色しやすい特徴を持つため、インゴットを扱う際にはできるだけ素手で触れず、空気にさらさないなどの注意が必要です。

パラジウムのインゴット

パラジウムは、ジュエリーの割金や自動車部品など、さまざまな場面で利用されている貴金属です。金と比較して産出量が非常に少ないため、取引量も限られています。

希少価値が高い理由は、産地が南アフリカやロシアなどに限定されていることや、埋蔵量が少ないことが挙げられます。

金インゴットのメリット

金インゴットに投資する主なメリットは、以下の4つにまとめられます。

・一定以上の資産価値があり換金しやすい

・節税対策ができる

・有事に強い

・インフレに強い

ここでは、これらのメリットについて、それぞれ詳しく解説していきます。

一定以上の資産価値があり換金しやすい

金の大きな特徴は、「どんな状況でも一定の価値を保ち、いつでも換金できる」点にあります。

株式や通貨は、企業の倒産や国家体制の崩壊といった事態が起これば、価値を失うリスクがあります。

一方で、金は実物資産であるため、社会情勢に左右されにくく、常に一定の価値を持ち続けます。そのため、どのような状況下でも現金化できるという安心感があります。

また、不動産や車などの資産は、現金化に時間と手間がかかるのが一般的です。その点、金は買取店や換金所で即座に現金化できるため、流動性の高い資産として大きなメリットがあります。

節税対策ができる

金インゴットは、節税対策としても効果的な資産です。

例えば、金を売却する際、一定額を超えると所得税の課税対象となり、税金を支払う必要があります。しかし、インゴットを分割して売却することで、1回あたりの売却益を50万円以下に抑えられれば、課税対象とはなりません。

また、相続税対策としても有効です。

金インゴットを小分けにして生前に子どもや孫に贈与することで、贈与税の非課税枠を活用しながら、将来的な税負担を軽減することが可能です。

このように、金は節税に役立つ資産として注目されており、分割・贈与がしやすいインゴットは特に重宝されています。

有事に強い

「有事の金」と呼ばれるように、金は世界的な混乱時にも価値が安定している資産とされています。

例えば、リーマンショック、新型コロナウイルスの世界的流行、ウクライナ侵攻や中東情勢の悪化など、世界経済の落ち込みや地政学的リスクが高まった際には、株式市場や為替相場が下落しました。

しかし、そのような局面において、金価格はむしろ上昇する傾向が見られます。

また、歴史的に見ても、世界的な危機が発生しても金は大きく値崩れすることが少なく、長期的に安定した価値を維持しています。

このような特徴から、金は不安定な時代でも安心して投資できる資産として、多くの投資家に選ばれています。

インフレに強い

金は、インフレ時に価値が上昇する傾向があります。

そもそもインフレとは、物価が継続的に上がることで、お金の実質的な価値が下がってしまう現象を指します。

実物資産である金は、こうしたインフレに連動して価格が上昇するため、保有しているだけで資産の目減りを防ぎ、実質的に価値を維持・増加させることが可能です。

そのため、日頃からポートフォリオの一環として、金に投資しておくことで、万が一インフレが発生した際にリスクヘッジとして備えることができます。

金インゴットのデメリット

金インゴットを投資対象とする場合には、前述のようなメリットだけでなく、いくつかのデメリットも存在します。そこでここでは、金インゴットで投資を行う際に、押さえておくべき5つのデメリットについて、詳しく解説していきます。

盗難・紛失のリスクがある

インゴットを所有する際は、盗難や紛失に十分注意が必要です。

株式や仮想通貨などは金融資産であり、通常は現物を持たず証券口座や専用アカウントで管理するため、盗難リスクは比較的低いと言えます。しかし、現物のインゴットを金庫などで保管する場合は、盗難のリスクが常に懸念されます。

そのため、セキュリティ対策や適切な保管方法を徹底する必要があり、その分、費用や手間がかかるというデメリットがあります。

利子や配当金がない

金インゴットには、利子や配当といった収益(インカムゲイン)が発生しません。

例えば、株式であれば配当金、債券であれば利子など、保有しているだけで定期的な収入を得られる資産もあります。

一方、金はあくまで実物資産であり、保有しているだけではこのような収益は得られません。そのため、インカムゲインを重視する場合には、金ではなく株式や債券などの投資先を検討するほうがよいでしょう。

価値が下がる時期もある

金は安全資産として広く認識されていますが、決して万能ではなく、常に価格が上昇し続けるわけではありません。

確かに、「有事の金」と呼ばれるように、世界経済が不安定なときや地政学的リスクが高まった局面では、金の価格が上昇しやすい傾向があります。一方、世界経済が安定し、地政学的リスクも低下している時期には、金価格が下がる傾向にあります。

これは、経済が好調になると株価上昇が期待されるため、多くの投資家が金を売却し、より高いリターンが見込める株式などの金融資産へ資金を移すことが考えられます。

少額では購入できない

インゴットの投資には、ある程度まとまった資金が必要になります。

貴金属業者によっては、グラム単位で販売している場合もありますが、2025年5月時点で金の売却価格は、1グラムあたり15,000円以上となっています。

また、一般的には500グラム以上を購入しなければ、バーチャージ(手数料)がかかることが多いです。

そのため、少額から投資を始めたい方にとって、インゴットはあまり魅力的に感じられないでしょう。

精錬加工に手数料がかかる

インゴットを精錬・加工するには、専門的な技術と専用の設備が必要となるため、一定の手数料が発生します。

また、インゴットのサイズによっては、高額な手数料がかかる場合もあるため、事前の確認が重要です。特に、インゴットの精錬加工を通じて利益を得ようとする業者の中には、相場を大きく上回る手数料を請求するケースも見受けられます。

せっかく投資目的でインゴットを購入しても、高額な手数料によって赤字になるリスクもあるため、依頼先の信頼性や料金体系は慎重に見極めることが大切です。

金インゴットの品質保証をする2つの機関

金インゴットの品質を保証する代表的な機関として、次の2つが挙げられます。

・ロンドン貴金属市場協会(LBMA)

・造幣局

それぞれ、イギリスと日本を代表する信頼性の高い機関であるため、認定を受けた金インゴットは品質が保証されており、安心して取引することができます。

ここでは、これら2つの機関について、それぞれ詳しく解説していきます。

ロンドン貴金属市場協会(LBMA)

ロンドン貴金属市場協会(LBMA)は、ロンドンの専門市場で金地金・銀地金を扱う専門業者による自主規制団体です。厳しい規格をクリアすることで、「グッド・デリバリー・バー(GDB)」に認定されます。

グッド・デリバリー・バー認定のインゴットは世界的な信用度が高く、日本だけでなくロンドン、ニューヨーク、香港、チューリッヒなどでも取引が可能となります。

造幣局

造幣局では、公的な第三者機関として、金インゴットを含む貴金属製品の品位試験を実施しています。

試験に合格した製品には、「ホールマーク」と呼ばれる品位証明の刻印が施されます。このマークは、一般消費者からの信頼も高く、貴金属取引の安定や消費者保護に大きく寄与しています。

金インゴットは外見から品位を判別することが難しいため、こうした信頼性の高いマークがあることで、誰でも安心して品質を確認できるのです。

金インゴットの刻印が持つ役割

インゴットの刻印は、単なるデザインではなく、品位を証明する重要な役割も果たします。ここでは、インゴットの価値を証明するための主要な刻印を6つご紹介します。

ブランド・商標

インゴットには、製造元のブランド名が刻印されています。

この刻印は、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)が定める非常に厳格な審査基準をクリアした「認定ブランド」のみが許可されています。

そのため、ブランドや商標はインゴットの品質と信頼性を保証する刻印でもあり、安心して取引ができる重要な要素となっています。

製錬業者・検定分析業者のマーク

インゴットには、製錬業者と検定分析業者を示すマークが記載されています。

ただし、製錬業者と検定分析業者が同じ場合、マークは1つだけ刻印されます。また、製造ブランドが製錬業者と検定分析業者の両方を兼ねている場合、この刻印は入りません。

純度

金インゴットにおいて純度は最も重要な要素です。「999.9」と刻まれている場合、純度が99.99%以上であることを示しています。

なお、プラチナの場合は99.95%以上が最高品位となっており、素材によって刻印される純度は異なります。資産運用でさまざまなインゴットを保有する際には、素材ごとの最高品位も覚えておくとよいでしょう。

素材

金インゴットには、素材を示す刻印があり、純金を意味する「FINE GOLD」や「GOLD」と刻まれています。これらの刻印は、インゴットが金であることを示しています。前述の「純度表示」と併せて確認することで、インゴットの品質をより正確に把握できるでしょう。

重さ

インゴットにはさまざまな重さがあります。冒頭でもご紹介したように、一般的には以下の5種類に分けられます。

・「ラージバー」:約12.5㎏(400トロイオンス)

・「キロバー」:1㎏

・「グラムバー」:500g

・「スモールバー」:500g未満

・「コインバー」:50g以下

※上記の内容は、貴金属メーカーによって異なる場合があります。

最も大きなインゴットは「ラージバー」と呼ばれ、重さは約12.5キログラムにもなります。

一方、スモールバーやコインバーには多くの種類があり、1グラムから500グラム未満までさまざまなサイズが存在します。これらを含めると、貴金属メーカーによってはインゴットの種類が10種類以上に及ぶこともあります。

また、同じ重さであっても製造元によって形状が異なるため、興味のある方は詳しく調べてみるとよいでしょう。

シリアルナンバー

シリアルナンバーは、インゴットが本物であることを証明する識別番号です。

インゴット本体に刻印されることで、製造数の適切な管理が可能になるほか、偽物の判別にも役立ちます。

例えば、「同じシリアルナンバーが複数存在する」や「存在しない番号が使われている」といった場合、そのインゴットは偽物と判断できます。

特に高価なインゴットほど偽物が出回りやすいため、シリアルナンバーの刻印は信頼性を確保するうえで欠かせない要素です。

金インゴットを取り扱うブランド

インゴットは、「公式国際ブランド」の認可を得た信頼性の高いメーカーから購入することをおすすめします。

こうしたメーカーは品位が保証されており、本物のインゴットを手にすることができます。ここでは、国内外でおすすめのブランドをご紹介します。

国内ブランド

以下は、国内で金インゴットを取り扱っている代表的な10社です。

・三菱マテリアル株式会社

・田中貴金属工業株式会社

・株式会社徳力本店

・石福金属興業株式会社

・住友金属鉱山株式会社

・松田産業株式会社

・アサヒプリテック株式会社

・DOWAメタルマイン株式会社

・三井金属鉱業株式会社

・日本マテリアル株式会社

上記で紹介しているブランドはすべて公式国際ブランドであるため、安心して選ぶことができます。「老舗メーカーだから信頼できる」「取扱い店舗数が多い」など、購入するブランドの選び方はさまざまです。

また、ブランドごとの異なる刻印を楽しむこともできます。購入時の手数料や保管サービスについても、業者によって異なるため、事前に確認することをおすすめします。

国外ブランド

以下は、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)認定の国外ブランドです。

国名 ブランド
アメリカ ・ASAHI REFINING USA INC.
・METALOR USA REFINING CORP
中国 ・DAYE NONFERROUS METALS CO., LTD
・DONGWU GOLD GROUP CO., LTD
スイス ・ARGOR-HERAEUS SA
・MKS PAMP SA
ドイツ ・AGOSI AG
・AURUBIS AG
オーストラリア ・ABC REFINERY(AUSTRALIA)PTY LTD
・GOLD CORPORATION(T/A THE PERTH MINT)
カナダ ・CCR REFINERY - GLENCORE CANADA CORPORATION
・ROYAL CANADIAN MINT
その他 ・CHIMET S.P.A(イタリア)
・LS MNM(韓国)
・RAND REFINERY(PTY)LTD(南アフリカ)

金インゴットは密輸のおそれもあるため、国外企業と取引する際は、信頼性の高い公式国際ブランドを選ぶことで、安全な取引ができます。

金インゴットの価格と資産運用に向いている理由

近年、金価格の上昇に伴い、金インゴットの価格も高騰しています。また、金はインフレに強い資産とされており、資産運用の手段としても注目を集めています。

ここでは、金インゴットの価格がどのように決まるのか、そして資産運用に適している理由について詳しく解説します。

金インゴットの価格

金インゴットの価格は、当日の金相場と重量によって決まります。

多くの販売店では、グラム単位で価格が設定されています。

例えば、2025年5月時点で金の売却価格は、1グラムあたり15,000円以上です。そのため、100グラムのインゴットであれば、150万円以上になります。

また、金の取引価格は国際市場と連動しており、国内の販売価格も大きな差はありません。

ほとんどの店舗が当日の市場価格を反映した金額で販売しているため、どこで購入しても大きな価格差は出にくい点が特徴です。

金インゴットが資産運用に向いている理由

金インゴットが資産運用に向いている最大の理由は、価値が安定している点です。

現金、株式、債券などの金融資産は、通貨価値や国の経済状況に左右されます。例えば、日本円を保有していると、日本の不景気や円安、インフレなどの影響を受けやすくなります。

一方、金インゴットは世界的に高い需要があり、情勢不安や金融不安に影響されにくいです。過去には、世界恐慌やリーマンショックのような金融不安が広がった際に、金価格が上昇した事実もあります。

このように、金インゴットは大幅な値崩れが起こる可能性が低いため、資産運用に非常に向いていると言えるでしょう。

金インゴットの偽物を見分ける方法

金インゴットは非常に高価であるため、残念ながら偽物が多く出回っています。

しかし、専門業者に依頼しなくても、簡単な方法で、本物か偽物かをある程度は見分けることが可能です。ここでは、手軽にできる金インゴットの真贋方法をご紹介します。

持ち主だとわかるシリアルナンバー等の刻印が重要

シリアルナンバーは、インゴットが本物か偽物かを判断するための重要な要素です。

正規に流通しているインゴットの多くは、シリアルナンバーが刻印されています。この番号は個別に振られているため、ほかのインゴットと重複することはありません。

日本のお札に印刷されている記番号と同様に、シリアルナンバーもアルファベットと数字で構成されています。これは、商品管理に役立つとともに、所有者に対してインゴットが本物であることを証明するための手段でもあります。

専門機器なしで偽物かを見分ける方法

金インゴットの偽物を見分けるためには、専門機器がなくてもいくつかの簡単な方法があります。以下の特徴が見られる場合、偽物の可能性があります。

・刻印されている重量と1グラム以上の誤差がある

・刻印の仕上がりが雑に見える

・磁石を近づけるとくっつく

・水に入れて比重を調べる

自宅でも手軽に調べることができますので、まずはこれらの方法で確認してみることをおすすめします。ただし、100%偽物だと言い切ることはできませんので、確実に鑑定したい場合は、金を取り扱う専門業者に査定依頼をしてみましょう。

刻印なしの金インゴットでも買取自体は可能

インゴットによっては刻印が見当たらない場合もありますが、偽物でなければ買取は可能です。

通常、金インゴットの査定では「インゴット価格」が適用されるため、一般的な金の相場よりも高い価格で買い取られることがあります。

ただし、以下のようなケースでは、通常のK24として扱われることがあるため注意が必要です。

・元々刻印がない場合

・長期保管などにより、刻印が擦れて判別できなくなっている場合

これらのケースでは、査定額が下がったり、場合によっては買取自体を断られたりすることもあります。

とはいえ、買取業者によっては、刻印がないインゴットも買取が可能な場合がありますので、まずは査定依頼をしてみましょう。

金インゴットの具体的な作り方

金の埋蔵量が限られていることから、近年ではリサイクルによって金インゴットを製造するケースが増えています。

ここでは、リサイクル資源から金インゴットが作られる工程を、7つに分けて詳しく解説します。

1.金を含む素材の回収

金インゴットを作るには、金が含まれた素材の回収から始まります。

例えば、使われなくなったジュエリーや都市鉱山から多くの金を回収します。都市鉱山とは、パソコンやスマートフォン、ゲーム機器、デジタルカメラなど、部品に金が使用されている精密機器を指します。

現在、日本ではほとんどの金山が閉山されており、十分な金の採掘ができない状況にあります。そのため、都市鉱山から貴金属を回収するリサイクル方法が近年注目されているのです。

2.溶解して再度固体に戻す

次に、集めた金を「王水」と呼ばれる特殊な液体を使用して一度溶解させます。王水とは、通常の酸では溶かせない金やプラチナなども溶解できる強力な酸で、一般的には濃硝酸と濃塩酸を1対3の割合で混合したものを指します。

そして、還元剤を用いて金を固体粉末状にします。

3.ろ過して金の結晶粉末のみを抽出する

固体粉末状の金を含んだ液体をろ過することで、金の結晶粉末のみを抽出できます。その後、取り出した金の粉末を乾燥させて水分を飛ばします。

4.再び溶かしてろ過する

ここまでの工程では、金の純度が99〜99.9%ほどになります。純度99.99%を実現するために、再度、王水で金の粉末を溶かし、ろ過する精製作業を行います。

5.粒状の固体に仕上げる

粉末になったインゴットを高温で溶かしたら、いよいよ固体へと仕上げる作業に入ります。

金の融点である約1,064度以上(約1,200度)で加熱し、その後すぐに冷却します。この工程により、金はきらきらと輝く粒状になります。

6.固めてインゴットを形作る

数ミリサイズになった金の粒を再び1,000度以上で加熱し、液状に溶かします。溶かした金を鋳型に流し込み、冷えて固まれば、純度99.99%の金インゴットが完成します。

7.検査して刻印を刻み込む

完成した金インゴットは検査を経た後、刻印を施して仕上げられます。

この刻印によって、インゴットの品質と価値が正式に保証されます。また、刻印は正確な情報を伝えるだけでなく、偽物の流通を防ぐ手段としても重要な役割を果たします。

このような工程を経ることで、投資家たちは安心してインゴットを購入・取引できるようになるのです。

金インゴットの購入・保管方法

金インゴットの主な購入方法には、以下の2つがあります。

・直接購入

・純金積立購入

これらの購入方法によって、インゴットの保管方法にも違いが生じます。

ここでは、それぞれの購入方法と、それに応じた保管方法について詳しく解説していきます。

直接購入と保管方法

・直接購入

金インゴットは、地金商や貴金属メーカーの実店舗で直接購入することができます。

また、近年ではオンライン通販も一般的になっています。

ただし、いずれの方法で購入する場合も、偽物や粗悪品をつかまされないよう注意が必要です。購入の際は、国内外で信頼性の高い認定ブランドや正規取扱店を選ぶことが重要です。

・保管方法

現物の金インゴットは、自宅の金庫などで保管する人も少なくありません。

その際は、盗難や火災、水害といったリスクを考慮し、耐火性・耐水性に優れた金庫を使用することをおすすめします。

また、自宅以外で保管する方法としては、銀行の貸金庫に預ける方法や、購入先の貴金属業者が提供する保管サービスを利用する方法があります。

中には、一定条件のもとで無料の保管サービスを提供している業者もあるため、気になる場合は事前に問い合わせて確認するとよいでしょう。

純金積立購入と保管方法

・純金積立

純金積立とは、毎月一定額の資金で金を少しずつ購入し、継続的に積み立てていく投資方法です。

積み立てた金額に応じて、純金の現物と交換することも可能です。長期間積み立てることでインゴットとして引き出すこともできます。

また、毎月数千円からスタートできるサービスも多く、自分の予算に合わせて無理なく始められるのが特徴です。

ただし、積立手数料や年会費が別途発生する場合があるため、各サービスの内容をよく比較し、自分に合ったものを検討しましょう。

・保管方法

純金積立で得られる金インゴットの保管方法には、主に以下の2種類があります。

保管方法 特徴
混蔵寄託 金インゴットを業者の専用金庫に保管してもらう方法です。所有権は契約者にあるため、万が一業者が倒産してもインゴットは返却されます。ただし、保管期間や金の量によって別途手数料がかかることもあります。
消費寄託 業者の専用金庫に保管してもらう点では混蔵寄託と同様ですが、所有権が業者に帰属するため、倒産した際にはインゴットの返却ができない場合があります。ただし、保管料は無料の場合が多いです。

それぞれの特徴を理解した上で、自分に合った方法を選ぶようにしましょう。

売却の際にかかる税金について

個人が保有している金インゴットや金貨を売却して利益(譲渡益)が出た場合、原則として譲渡所得として扱われます。

譲渡所得は給与などほかの所得と合算され、総合課税の対象となります。そのため、所得税の確定申告が必要です。また、譲渡所得には年間50万円の特別控除が適用されます。

金インゴットは観光事業にも使用されている

金インゴットは観光事業としても取り入れられています。

観光スポットには、一般市場ではなかなか目にすることができない大きなサイズの金インゴットが展示されていることがあります。

ここでは、金インゴットの展示で話題になった2つの観光スポットをご紹介します。

佐渡金山の金塊取出体験

佐渡金山の名物イベント「金塊取出体験」は、多くの人に愛されてきました。

資料館に置かれた透明のケースに約12.5キログラムの金インゴット(ラージバー)が展示されています。これは、ケースに空いた小さな穴からインゴットを取り出すことができれば記念品がもらえるというチャレンジ企画でした。

しかし、現在は金価格高騰などの影響により、残念ながらこの企画は中止となっており、チャレンジすることはできなくなっています。

ただし、インゴットは引き続き資料館に展示されておりケースの中で触れることはできます。興味のある方はぜひ資料館を訪れてみてください。

淡路島の1億円金塊レンタル

兵庫県淡路島にある「静の里公園」の史料館では、1989年から2010年まで、本物の金インゴットが展示されていました。

このインゴットは、淡路島北部にあった津名町(現淡路市)が、「ふるさと創生事業」の1億円を活用し、三菱マテリアルからレンタルしたものです。

淡路島が1億円でインゴットをレンタルしたという話はニュースなどで取り上げられ、大きな話題を呼びました。これにより、淡路島観光の活性化に役立ちました。

レンタル期間が終了した現在、史料館にはインゴットの代わりにレプリカが展示されています。

まとめ

今回は、金インゴットについて詳しくご紹介しました。

近年は金の価格が高騰しており、資産運用やリスク分散の手段として高い関心を集めています。

インゴットの購入を検討している方は、信頼性のある公式国際ブランドのメーカーに相談することをおすすめします。知識と経験を持つ専門スタッフから、金投資に関する的確なアドバイスやサポートを提供してもらえるでしょう。

木村健一(きむら けんいち)
記事の監修者
査定歴15年以上
木村健一(きむら けんいち)

貴金属・ジュエリー分野で査定経験を持つ鑑定士。
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