目次
金地金の贈与が無申告でもバレる理由
金地金の贈与を申告しなくても税務署にバレる理由として、以下の3つが考えられます。
・税務署は被相続人と相続人の出金履歴を確認できる
・金地金を売買する際にシリアルナンバーが刻印される
・本人確認が行われている
これらの要因により、贈与の事実が連鎖的に発覚する可能性があります。ここでは、この3つの理由について詳しく解説します。
被相続人・相続人の入出金履歴が確認されるため
相続税が発生すると税務署は税務調査を行います。預金やクレジットカードの履歴などから購入履歴を調査するため、金の売買によるお金の流れは、税務署に筒抜けとなります。
仮に、相続税申告で金の購入を隠したとしても、この調査によって税務署は把握していることでしょう。
金地金にシリアルナンバーが付いているため
インゴットやゴールドバー、金の延べ棒とも呼ばれる金地金には、盗難防止や品質保証を目的とした刻印があります。
その中のシリアルナンバーは、購入者情報と紐づけてデータを保管しているため、税務署が照会すれば購入者を特定することができます。
もし無申告だった場合、税務署から指摘されるでしょう。
金の売買時に本人確認を行っているため
個人で金を売買するとき、多くの販売店では本人確認を行っています。その際、運転免許証等の本人確認書類の提示を求められることが一般的です。
また、金地金を売却する場合、業者は本人確認書類のコピーを保存しなければなりません。さらに、一日で金地金の買取金額が200万円を超えると、税務署に支払調書を提出する義務が生じます。
支払調書には、取引内容のほかにマイナンバーも記載する関係で、このような取引ではマイナンバーの提示が必要となります。
このように、金地金の取引は記録に残されているため、税務署が調査するとその情報が把握できるようになっています。
金地金は贈与資産として注目されている
金地金は、世代を超えて財産を引継ぐ手段として、現在でも注目されています。
その理由の1つとして、金地金が経済的不安定な時期にも価値が安定していることが挙げられます。価格変動のリスクが低く、保管や運用が容易であるため、安全資産として選ばれることが多いのです。
また、相続税対策として生前贈与が選ばれるケースも増えています。ただし、生前贈与には複雑なルールや注意点が存在し、気を付けなければ、追加課税等のペナルティが発生することもあります。
そのため、節税をしたい方は、これらを正しく理解することがその第一歩となるでしょう。
生前贈与に関する詳しいルールや注意点については、次の章で詳しくご紹介します。
贈与税とは?相続税との違い
贈与税と相続税の大きな違いは、資産を継承するタイミングが、生前か、亡くなった後かという点です。また、控除額の計算方法や税率にも違いがあります。
ここでは、相続税と贈与税の違いについて詳しく解説します。
贈与税
贈与税とは、個人が財産を贈与したときに課される税金です。
贈与税の課税方式には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類がありますが、どちらの方式でも年間の受贈額が110万円以下であれば申告は不要です。
また、贈与と言えば、通常は両親から子ども、もしくは、祖父母から孫へ贈与するケースが多いですが、家族や親族間で行われた贈与でも、課税の対象になります。
暦年課税
1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与額に対して課税される方式です。
相続時精算課税
60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫へ贈与する際に選べる贈与税の制度です。
特例贈与財産
直系尊属(父母・祖父母など)から、18歳以上の直系卑属(子・孫など)へ贈与される財産のことです。
贈与税(一般贈与財産)の適用税率や控除額については、以下のとおりです。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ― |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
また、贈与税は次の計算式から求められます。
[基礎控除後の課税価格] × 税率-控除額 = 税額
一例として、1年間に贈与を受けた金額の合計が500万円だった場合の税額を計算してみましょう。まずは、基本控除後の課税価格を求めます。
500万-110万 = 390万(円)
次に、税率と控除額を適用します。今回の課税価格は390万円であるため、400万円以下の税率20%と控除額25万円を使用します。そうすると、計算式は以下のようになります。
390万 × 0.2-25万 = 53万(円)
このように、500万円の贈与を受けると53万円の税金が課せられることが分かります。
なお、特例贈与財産では、税率や控除額が一般贈与財産とは異なるため、ご注意ください。
相続税
相続税とは、故人(被相続人)から遺産を相続した際に、相続を受けた側(相続人または受遺者)に課せられる税金です。
具体的な税率と控除額は、正味の遺産額から基礎控除額を差し引いた金額(課税遺産総額)に、法律によって定められた相続割合を適応させた上で、次の表に当てはめると算出できます。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | ― |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
また、正味の遺産総額は「遺産総額+課税適用後の贈与財産-(非課税財産+葬式費用+債務)」で算出できます。基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。
なお、正味の遺産額が基礎控除額を下回る場合、相続税の申告をする必要はありません。
相続税と贈与税のどちらが節税効果が高い?
相続税と贈与税のどちらが節税効果の高い税金なのかについては、状況によって異なるため一概に比べられません。
税額だけを見ると、相続税の方が有利に思えるかもしれませんが、贈与の方法次第では、贈与税の方が大きな節税効果を得られることもあります。
例えば、1億円を1度に受け取る場合、相続税の方が税額を抑えられることが多いですが、毎年少額ずつ生前贈与を受けることで、結果的に節税できる場合もあります。
また、不動産や株式など、数年後に価値が上がると予想される資産については、価値が上がった後に相続するよりも、評価額が低い間に贈与税を支払って受け取る方が、納める金額を抑えられるケースもあります。
このように、どちらの税金も方法やタイミングを工夫することで、節税対策につなげることができます。
金を贈与資産として活用するメリット
金を贈与資産として活用するメリットとして、以下の4つが挙げられます。
・ランニングコスト(維持費用)がかからない
・価値が安定しておりインフレ対策になる
・ほかの資産と比較して遺産分割がしやすい
・換金しやすい
ここでは、これらのメリットについて詳しく解説します。
ランニングコストがかからない
不動産を購入したとき、頭を悩ませるのが維持費です。主に修繕費用や管理費用、固定資産税がそれに当たりますが、このようなランニングコストの負担は、財産にも大きく響いてしまいます。
ですが、金は実物資産であるため、このようなコストがかかりません。長期保有しても固定資産税のような税金がかかることはなく、不要であれば現金に換えることで、遺産分割にも利用できます。
価値が安定しておりインフレ対策になる
「有事の金」ともいわれるように、金は経済や世界情勢の変化に強い資産です。
2025年4月現在、日本経済では円安による物価上昇が問題となっています。このようなインフレが続いたときは、金の価格は上昇していきます。
そのため、通貨や株式などの一部を金地金に置き換えれば、実質的な価値の低下を抑えられるでしょう。
ほかの資産と比較して遺産分割しやすい
相続財産の中には遺産分割が困難であるものもあります。例えば、遺書や遺言で不動産の相続先が決まっておらず、相続人が複数いる場合、公平な遺産分割は非常に難しいことが一般的です。
また、不動産を換金してから分配しようとしても、購入希望者が現れなければ分配できません。
一方で金は、実物を分配するため、遺産分割がしやすい資産です。売却することも容易で、買取価格も安定しているため、公平な分割ができるでしょう。
換金しやすい
安定した価値があり、埋蔵量にも限りがある希少性から、金は需要が高い実物資産です。世界各国で求められている資産であるため、どこでも売却できるでしょう。
また、日本国内でも多くの企業が金の買取事業を展開しています。純金の価格は重量で決まるため、価格差を気にすることなく売却できます。
金地金の贈与税の節税方法
生前贈与を活用することで、金地金を継承する際の税金を抑えることが可能です。
これは、毎年非課税枠の範囲内で贈与をすれば、税金を納めることなく金地金を継承できるからです。ただし、生前贈与には注意すべきポイントがあります。
ここでは、生前贈与を活用した節税方法と注意点について詳しく解説します
生前贈与で節税
生前贈与とは、贈与者が存命中に贈与する方法です。相続するときの総資産が減少するため、相続税の節税ができます。
通常、個人から財産をもらうと、贈与税を納めなければなりません。ただし、贈与税には年間110万円の基礎控除額(非課税枠)があるため、この範囲内であれば申告する必要はありません。
また、基礎控除額は来年になれば満額の110万円にリセットされます。そのため、毎年110万円以内で繰り返し贈与することで、税金を納めることなく財産を継承できます。
生前贈与の注意点
生前贈与を活用することで節税と資産の継承が可能ですが、3つの注意点があります。
金地金の価値が変動する
金価格は常に変動しています。そのため、贈与する金の量が同じでも、金価格の高騰によって一年間の贈与額が110万円を超えてしまうと、贈与税の発生につながるおそれがあります。
金価格の動向を把握し、非課税枠を超えない範囲で贈与できるように、計画的な進行が重要となります。
相続トラブルが起こる可能性
生前贈与は、遺産相続と比較して人間関係の摩擦を避けることができますが、完全になくなるわけではありません。
贈与する際は、全員が納得できることが大切です。また、贈与契約書を残すなどの対策を講じることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
贈与者の生活資金にも配慮が必要
贈与者自身の生活資金や今後の医療費など、必要な資金を確保した上で贈与を行いましょう。贈与後に生活資金で困らないよう、余裕のある資産管理が重要です。
このように、税法上の問題や人間関係のトラブルを引き起こす可能性があるため、生前贈与を進める前に、自分の今後についても十分に考慮してから実行するようにしましょう。
金地金の売却時の注意点
金地金の売却で得た利益は、基本的に譲渡所得として扱われます。
譲渡所得の特別控除額は最大50万円です。適用される金額は、金地金の譲渡益(※)を含む、総合課税の譲渡益全体となります。また、合計額が50万円を下回る場合は、その金額までが控除対象となります。
なお、金地金の所有期間によって、課税率や課税額の計算方法が異なるため、所有期間に応じた税務処理を行うことが重要です。
※ 売却時の価格から、取得時の価格と売却時の費用(手数料など)を差し引いた金額のことです。なお、この金額がマイナスになると譲渡益ではなく譲渡損と呼ばれます。
金地金を所有してから5年以内に売却する場合
「短期譲渡所得」が適用されます。
この場合、金地金の譲渡益とほかの譲渡益を合算し、50万円の特別控除額を差し引いた金額が課税対象となります。
金地金を所有してから5年を超えてから売却する場合
「長期譲渡所得」が適用されます。
この場合、金地金の譲渡益とほかの譲渡益を合算し、50万円の特別控除額を差し引いた金額の半分(2分の1)が課税対象となります。
このように、譲渡所得が大きくなるほど納税額も増加します。節税を考えるのであれば、金地金を5年以上保有し、長期譲渡所得が適用されてから売却することをおすすめします。
まとめ
今回は、金地金の贈与や節税について解説しました。
税金の種類によってさまざまな節税対策がありますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
また、金地金の相続を受ける際、税務署はお金の流れを調査できるため、無申告には十分注意しましょう。
金地金の贈与を受けるとき、できるだけ納税する金額を抑えたい方は、今回の記事を参考にしてみてください。