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AMIRI(アミリ)のデニム

1691_アミリ デニム

アメリカのブランド「AMIRI(アミリ)」のデニムは、最近注目を集めています。ヒップホップアーティストの映像やファッション系インスタグラムのフィードを見ていれば、必然的にそのデニムを目にしていると言っても過言ではありません。しかし、実際購入しようとしてみると、数万~数十万円と決して手に取りやすい価格帯ではありません。高いのに何故そんなに人気があるのでしょうか?

AMIRIというブランドが誕生するまで

1976年9月6日、マイク・アミリ・プサ(Mike Amiri Pusa)は、高級住宅街ビバリーヒルズで生まれました。スケートボーダーやロッカー、グラフィティ・アーティストと一緒にいることが多く、その友人の影響もありラップやハードロックを聴いていたそうで、ギャングスタヒップホップグループ「N.W.A.」やロックバンドのGuns 'N' RosesやMötley Crüeなどを聴いて10代を過ごしたといいます。そのようなミュージシャンの存在は音楽だけでなく、スタイルとしてもマイク・アミリにとって大きいものでした。彼は13歳の時にMötley CrüeのTシャツを切り抜いて、デニムジャケットの背中に貼ってアレンジしました。これはマイク・アミリにとって初めてのデニムリメイクでした。

しかし、こうした好奇心とは別の未来、弁護士として約束された将来をマイク・アミリに望んだ両親は、彼に大学進学を促します。そうしてマイク・アミリは、上の空で大学を卒業すると、なんと、韓国へと飛び立ちます。

マイク・アミリが親友へ曲を書いたことがきっかけとなり、ミッキー・アイズという名前で、韓国のヒップホップグループ「ドランクンタイガー」に参加しました。ドランクンタイガーは韓国のヒップホップシーンでは先駆的な存在で、マイク・アミリ自身もドランクンタイガーで活動できたことを誇りに思っているようです。

2000年代半ば、カリフォルニアに戻ったマイク・アミリは、地元の小さなアパレルブランドのコンサルタントとして、弁護士よりはるかに安い報酬ではありましたが、自分の情熱を注げる仕事をみつけました。独学でスキルを磨き、徐々に人脈を広げ、空き時間には趣味でジャケットをカスタマイズしてインスタグラムに投稿していたそうです。そんな彼のジャケットは一流スタイリストの間でも評価され、エアロスミスのスティーブン・タイラーやアッシャーなどのミュージシャンの衣装としても着用されました。

そういった経験からマイク・アミリは、舞台用の衣装だけでなく、一つのスタイルつまり明確な自分の世界を表現できるのではないかと思いたちます。

2014年、AMIRIのゼロ年目

2014年、マイク・アミリは「AMIRI(アミリ)」を立ち上げます。ロサンゼルス サンセット大通りにある、タイ料理と60〜70年代のハリウッドカルチャーをミックスしたレストラン「Toi」の地下にアトリエを構え、求人広告を出しました。するとロックスターのジャケットを仕立てていたVad(ヴァッド)が求人に応募してきます。こうして二人は、簡単なミシンと数種類の型紙から、最初のAMIRIデニムをひとつひとつ作っていったのです。

最初のカプセルが完成すると、マイク・アミリはロサンゼルスで最も格式の高いブティックの一つであり、先鋭的なセレクションでセレブリティを惹きつけることで知られるmaxfield(マックスフィールド)に向かいます。maxfieldに認められたAMIRIは、瞬く間に商品ラインナップを多様化し(靴やメガネ、2017年にはレディースコレクションを展開)、販売拠点を増やし、その売上高は、創業からわずか4年の短期間で約4000万ドルに達するという、目を見張るスピードでブランドとして成長していきます。

著名な俳優や歌手、モデル、スポーツ選手などが、AMIRIのデニムを着用しているため、華やかなイメージが先回りしがちですが、マイク・アミリのクリエーションの根底にはシンプルな本質が根付いています。私はいつも「何がそんなに特別で、そんなに売れるのか?今の若いブランドは、ソーシャルメディアで見られることに重きを置きすぎています。華美な服は使い道がないわけではありませんが、誰かが身につけなくなったらどうするのでしょう?そういうこと以前に人が気持ちよく着られる服を作りたい。」と語ります。

ファッションのマーケティングにもこの考え方は通じています。マイク・アミリは、莫大なプロモーション予算を投じることも、ハイプビーストやブロガーなどのインフルエンサーに媚びることもしません。

スタイルが常に循環しているファッション界において、「AMIRIは新しいものを生み出していない」と批判する人々がいることも事実です。たとえば彼のスキニーデニムには、エディ・スリマンのサンローランや、オリヴィエ・ルスタンのバルマンにも通じるエッセンスがあります。しかし、彼の服には一目でわかるアイデンティティがしっかり宿っています。

メイド・イン・アメリカ

AMIRIの魅力はそのロックやパンクスとハイファッションの絶妙なミックスだけではありません。最も根本的なプロダクトの高い品質にあります。AMIRIのジーンズやブーツ、ジャケットは手作業や特殊な工程を必要とするものも多く、多大な手間がかかっています。たとえばジーンズはストレッチ効果を与えるシリコンウォッシュなど、特別な質感を得るために十数段階にも及ぶ工程を経ているピースも存在します。

ブランドとして評価も高い現在、簡単に儲かる方法はほかにもありますが、マイク・アミリはあくまで、利益より品質を優先させます。その彼の職人気質がAMIRIを唯一無二のものにしているのです。

まとめ

AMIRIの作品は、80年代のロックスターのスタイルにインスパイアされ、デカダンとハイファッションを織り交ぜています。「"服 "は、何も言わなくても、その人自身を表している。人は、自分らしさを反映した服に心を寄せるものです。」と語るマイク・アミリの生き様と「西海岸のロックンロール・スピリット」をAMIRIは映し出しているのです。

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