目次
ロレックス アンティークとは?

高級時計ブランドでは、古い個体のことをアンティークモデルとしてまとめられます。
明確な定義はありませんが、ロレックスでは基本的に「1960年代までに製造されたモデル」を指すことが多いです。ただ、広義的な意味合いとして、「製造から50年以上経過したモデル」と定義されることもあるようです。
現行モデルよりも個性的なデザインに溢れているのが特徴で、ロレックスが培ってきた技術の歴史的背景を垣間見ることができ、耐久性も優れているため着用することが可能です。
コレクションとして求めるファンも多く、資産価値は年々高まっています。
なぜロレックス アンティークは安い?

ロレックスのアンティークモデルは、以下のような理由から、安い価格に設定されることが多いです。現行品と比較して、どのような点が異なっているのでしょうか。
現行モデルと比べ需要が劣るため
ロレックスの現行モデルの需要は非常に高く、正規店を巡らなければ購入できないほど困難です。革新的な技術の導入や時代のニーズに合わせて製造されており、人気モデルは買取店で高額取引されることもあります。
一方で、アンティークモデルはすでに廃盤となったモデルであり、性能面では現行モデルよりも劣ります。一部のモデルを除くと人気も需要も低下しているため、現行モデルよりも比較的安価な価格設定となっているのです。
純正品のパーツへの交換が難しいため
アンティークモデルは純正品でのパーツ交換が難しいです。
製造から40年以上のモデルのため修理依頼をしても必要な純正部品がないことがほとんどで、代替品で交換するケースが多いです。また、ロレックスの正規店でオーバーホールを依頼しても、現行モデルと同じ部品が使用されます。
このようなことから、「オリジナル」としての価値が低下する懸念があるため、価格も安く抑えられているのです。
ちなみにロレックスでは、廃盤となったモデルの部品保有期間を25年と定めています。
劣化が目立つことが多いため
傷や変色など、劣化が目立ちやすい点もアンティークモデルのウィークポイントです。
例えば、現行モデルの風防はサファイアクリスタルで傷がつきにくいですが、アンティークモデルはプラスチックで傷が目立つことが多いです。他にも、文字盤の変色や精度などの劣化があります。
当時としては最先端のモデルですが、技術そのものは発展途上であり、耐傷性や耐久性は現行モデルには及びません。綺麗な状態を維持することが難しいため、比較的安価で販売されているのです。
逆にコンディションがよい状態であれば、希少価値が一気に高まるということになります。
昔の定価が安価なため
そもそも、アンティークモデルが正規店で並んでいたときの定価は、現行モデルよりも安価です。
1960年代は現在のようなブランド価値が確立されていない時代であり、素材も一般的なもので製造されていたため、価値が現行モデルよりも低いのです。
実際、当時のサブマリーナーは約10万円、デイトジャストが約20万円と、現在と比べて価格に大きな差があります。
このように、当時の定価が非常に安かったことが、アンティークロレックスの価格の安さに反映されています。
現行モデルよりも品質が低い可能性があるため
アンティークモデルは現行モデルと比べて品質が劣るため、「安く見えてしまう」ことも理由のひとつです。
ロレックスの現行モデルは、スイスのクロノメーター検定協会からの厳しい審査を受けており、クリアしたものは「クロノメーター」の認定を受けます。
しかし、ロレックスでは認定されたものに対して、さらに独自の厳しい基準を設けています。この基準があるからこそ、ロレックスはどの高級時計よりも高い品質であることを証明しているのです。
一方でアンティークロレックスには、クロノメーター認定を受けていないモデルが存在しています。品質は高いとされつつも「高品質である」という印象は薄くなりがちです。
そのため、アンティークモデルは現行モデルよりも価格が抑えられている傾向にあります。
なお、クロノメーター認定を受けていないモデルの一部には「プレシジョン(Precision)」という表記が入っています。
ロレックス アンティークが選ばれやすい理由

近年、アンティーク市場の需要が高まっています。その中でも、ロレックスのアンティークモデルが選ばれやすい傾向となっているのは、どのような理由からなのでしょうか。
他の人と被りにくいため
ロレックスのアンティークモデルは、開発当時のニーズや時代背景を反映したものが多くあります。現行モデルよりも時計の針や文字盤が個性的なデザインである点も大きな特徴です。
同じ型番でも、技術的な向上によりマイナーチェンジしたケースも多くあるため、同じデザインのモデルを着用する方に出会うことは少ないでしょう。
似通ったデザインの人気モデルや現行モデルを着用するよりも、個性を表現したい方におすすめです。
希少価値が高いため
そもそもアンティークモデルは生産終了したモデルであるため、数が増えることはありません。そのため、希少価値が高まっており、投資家などを中心に選ばれていることが多いのです。
実際に1963年から1988年ごろまで製造されたリファレンスナンバー4桁のコスモグラフ デイトナは、駆動方式が手巻き式のため希少価値が高いです。状態によって金額は変わりますが、1,000万円から1,200万円程度で取引されたケースがあります。
コスモグラフ デイトナはロレックスの中でもトップクラスの人気を誇るモデルです。希少性のあるアンティークモデルであれば、このような高額取引にも期待できます。
安価で購入しやすいため
現行モデルと比べて価格が安価で購入しやすいのも選ばれやすい理由のひとつです。
中古市場では、アンティークロレックスが70万円前後で販売されているケースが多く、中には30万円から50万円程度で購入できるモデルもあります。
さらに、現行モデルは正規店での在庫がなく、「ロレックスマラソン」で店舗巡りをしなければ購入が難しい状況です。一方でアンティークモデルは、購入したいときにネット通販や専門店で比較的スムーズに入手できるというメリットがあります。
ステータス性よりもデザイン性に魅力を感じるのであれば、アンティークロレックスは手軽に選べるおすすめの選択肢といえます。
価値の高いロレックス アンティークの特徴

以下のような特徴を持つアンティークモデルは、価値が高く、高額取引にも期待できます。保有している方は確認してみましょう。
オリジナルの状態に近いもの
発売当初に近い状態であれば、アンティークモデルとしての価値が非常に高いです。
ロレックスでは正規店での販売が終了となったモデルの部品は、25年間保有することが定められています。しかし、それ以上経過したモデルついては、オーバーホール実施時に現行の部品で対応することになります。
そのため、内部の部品が新しく見た目が綺麗になったモデルよりも当時使用されていた部品が多く、オリジナルに近い状態の方が価値があるのです。
特徴的な経年変化をしているもの
アンティークモデルは、経年によって変化する点も魅力の一つとされています。特に顕著なのは文字盤で、以下のように特徴的な色合いに変化することがあります。どれも見た目の美しさから価値が高く、高額取引に期待できるでしょう。
トロピカルダイヤル

1967年ごろまで製造されていたモデルの一部には「ミラーダイヤル」と呼ばれる、鏡のような艶感のある文字盤が採用されていました。
そんな文字盤が日焼けなどによりブラウン系統に変化したものを「トロピカルダイヤル」と呼んでいます。主に黒文字盤から変色することが多く、黒の色味が抜けてブラウンやオレンジに近い色合いへと変化します。
ムラが少なく綺麗に変色したものほど評価が高いです。
スパイダーダイヤル

スパイダーダイヤルは、ミラーダイヤルの文字盤が蜘蛛の巣のようにひび割れたデザインへと変化したものです。
ミラーダイヤルは塗料を何度も重ねた「ラッカー加工」という方法で艶感を出していますが、これが経年によってひび割れた形へと変化します。この形が綺麗なものであるほど、高値で取引されやすくなるのです。
この変化は1980年代に製造されたモデルに多く見られますが、稀に1950年代のアンティークモデルでも発生します。
他ブランドとコラボしたダブルネーム

ロレックスでは、他の大手企業とコラボした「ダブルネーム」と呼ばれるモデルが存在します。
有名どころでいえば、ジュエリーブランドのティファニーやカルティエとのコラボです。他にも、飲食業界で有名なドミノ・ピザやコカ・コーラなどの異色コラボも実在しています。
これらはすべてロレックスの知名度を高めるための戦略として製造されており、流通量も非常に少ないため、通常モデルの何倍もの価値があります。
価値の高いロレックス アンティーク5選
ここでは、アンティークモデルの枠に位置するロレックスのモデルの中で、価値の高い時計をご紹介します。どのモデルも個性的な特徴をもっており、現在もコレクターから根強い人気があります。
コスモグラフ デイトナ「ポール・ニューマン」Ref.6263・6265

コスモグラフ デイトナは、ロレックスを代表するフラグシップモデルです。1963年に登場して以降その人気は不動のものとなっており、「憧れのスポーツモデル」として常に注目を浴びています。
そんなデイトナですが、長い歴史の中で幻のデイトナと呼ばれる「ポール・ニューマン」モデルがあります。
アメリカの俳優であるポール・ニューマンが、妻から贈られたデイトナを愛用していたことから名づけられており、Ref.6263やRef.6265がそのモデルに該当します。1,000万円以上で取引されることもある、超希少なモデルです。
Ref.6263
Ref.6263は、アンティークモデルの人気を押し上げた、第三世代のデイトナです。
別名「エキゾチックダイヤル」と呼ばれる文字盤が特徴的で、インダイヤルの目盛りには飾りが入っており、スクエアタイプのインデックスの先端には夜光塗料が塗られています。
また、ブレスレットも生産初期は『No.7835 FF No.71N』と呼ばれる巻きブレスが搭載されており、オリジナルに近い状態で売却すると、1億円越えをする可能性もあるようです。
非常にレアなモデルのため、中古市場での販売価格はおよそ1,000万円から2,000万円程度のプレミア価格となっています。
| 製造期間 | 1969年から1988年ごろまで |
|---|---|
| ケースサイズ | 37mm |
| ベゼル | タキメーターベゼル |
| ムーブメント | Cal.727 |
| パワーリザーブ | 約50時間 |
Ref.6265
Ref.6265も第三世代のデイトナにあたります。Ref.6263と同等のスペックを持つモデルですが、デザイン性を比較するとこちらのほうが高級感があり、当時はRef.6263よりも人気が高かったようです。
ムーブメントには当時の最新技術となる耐震装置「キフ・ウルトラフレックス」によって衝撃にも強い構造となっており、手巻き式ムーブメントの最高傑作ともいわれています。
こちらも評価が高く、中古市場では1,000万円以上のプレミア価格で販売されていることが多いです。
| 製造期間 | 1971年から1988年ごろまで |
|---|---|
| ケースサイズ | 37mm |
| ベゼル | タキメーターベゼル |
| ムーブメント | Cal.727 |
| パワーリザーブ | 約50時間 |
エクスプローラー Ⅰ Ref.1016

1960年から1989年ごろまで販売されていた、第三世代のエクスプローラー Ⅰです。ムーブメントに搭載された、ロレックス独自のマイクロステラスクリューで精度の安定性が向上しています。
年代によって個体差があるところもRef.1016ならではの特徴で、特に、文字盤の6時位置にアンダーバーがあるものや12時位置に「SPACE-DWELLER」と表記されているものは、貴重なレア個体といわれています。
中古市場では250万円から330万円程度で販売されていることが多く、状態のよいものであれば400万円以上の価格帯です。また、アンティークから少し外れてしまいますが、1987年から1989年に発売した後発のモデルも、高値で取引されています。
| 製造期間 | 1960年から1989年ごろまで
(1990年までの説もある) |
|---|---|
| ケースサイズ | 36mm |
| ベゼル | スムースベゼル |
| ムーブメント | 前期(1960年~):Cal.1560
後期(1972年~):Cal.1570 |
| パワーリザーブ | 約48時間 |
GMTマスター「ペプシ」Ref.1675

GMTマスター Ref.1675は、1959年から1979年ごろまで製造されていたロングセラーモデルです。二世代目にあたるモデルで、特に赤と青のツートンカラーである「ペプシ」ベゼルのモデルは、価値が高いです。
発売当初はそれほどの人気はありませんでしたが、海外セレブや日本国内の著名人たちが着用し始めたタイミングで人気に火がつきました。
1960年の初期に製造された外周部にラインが入っているミニッツサークルと1963年ごろに発売されたGMT針が短いモデルは希少性が高く、中古市場でも200万円以上の価格で販売されています。
さらに、両方の特徴が組み合わさった「MMダイヤル」は、400万円を超える高額取引が期待できます。
| 製造期間 | 1959年から1979年ごろまで |
|---|---|
| ケースサイズ | 40mm |
| ベゼル | 24時間回転ベゼル |
| ムーブメント | Cal.1570 |
| パワーリザーブ | 36時間から48時間程度 |
サブマリーナー Ref.5513

サブマリーナー Ref.5513は、1963年から30年近く販売されたロングセラーモデルです。定期的にマイナーチェンジを繰り返しており、年代によってはデザインに特徴的なモデルが存在しています。
特に、1985年以前まで製造していたインデックスにはメタルの縁取りが無く、希少価値があります。他にもミニッツサークルやミラーダイヤルといったレアな個体もあり、コレクターを中心に人気が高いです。
品質にこだわりがなければ150万円程度で購入することができ、アンティークモデルの入門としてもおすすめです。
| 製造期間 | 1963年から1990年ごろまで |
|---|---|
| ケースサイズ | 40mm |
| ベゼル | 回転ベゼル |
| ムーブメント | Cal.1530
(1964年ごろにCal.1520へ変更) |
| パワーリザーブ | Cal.1530:約36時間
Cal.1520:約48時間 |
デイデイト Ref.1803

デイデイトは、ロレックスの中でも最上級モデルにあたります。現行モデルは最低でも定価が590万円以上となりますが、アンティークモデルに関しては比較的安い価格で購入できます。
中でも人気のあるRef.1803は、K18イエローゴールド、18Kホワイトゴールド、18Kピンクゴールドの3素材で展開されており、中古市場では150万円から300万円程度の価格帯です。特に流通の少ない18Kピンクゴールドは希少価値が高いです。
デイデイトは他のモデルとは違い、金やプラチナといった貴金属で製造されています。アンティークモデルであっても貴金属の価値は変わらないため、高値での売却が期待できます。
| 製造期間 | 1960年代から1970年代後半ごろまで |
|---|---|
| ケースサイズ | 36mm |
| ベゼル | フルーテッドベゼル |
| ムーブメント | 前期:Cal.1555
後期:Cal.1556 |
| パワーリザーブ | 約48時間 |
ロレックス アンティークに関するよくあるQ&A

最後に、ロレックスのアンティークモデルの購入に関して、よくある質問を2点ご紹介します。購入に踏み切れない方は、ぜひ参考にしてください。
ロレックス アンティークと現行品はどちらがおすすめ?
人によって好みが分かれるところではありますが、アンティークモデルは、自分の個性や他人と被りたくないものが欲しい方におすすめです。
当時のロレックスはブランドとしてのポジションがまだ定まっておらず、同じ型番でも様々な個体があります。そのため、他人と被ることも少なく、「特別なロレックス」として個性を際立たせることができるのです。
「現行モデルが欲しくてロレックスマラソンしているけど買えない」「何が何でもロレックスがほしいけど、正規店に行くのが面倒」という方にも、手軽にロレックスのよさを実感できますので、アンティークモデルを一度購入してみるとよいでしょう。
逆に、ロレックスの最新技術やデザイン性に触れてみたい方は現行品を定価で購入するのがよいでしょう。5年間の保証もつきますので、日常的に長く愛用したい方にもおすすめです。
ヴィンテージロレックスと違いはある?
ロレックスにおいてヴィンテージモデルと呼ばれるものは、20年から40年以上経過したものを指すことが多いです。それに対して、アンティークモデルと呼ばれるロレックスは、1960年代以前もしくは製造から50年以上経過した時計を指す傾向にあります。
しかし、この違いに明確な基準というものはなく、たとえ50年前のモデルであっても、時計店ごとにアンティーク、ヴィンテージと解釈が異なります。そのため、アンティークモデルを「ヴィンテージ」と呼んでいても、ほとんど違いはないのです。
戸惑う方は「1975年よりも前のものはアンティークモデル」として、区分けしましょう。
まとめ
ロレックスのアンティークモデルは、現行モデルと比べると劣化部分が目立つため、安い価格で販売されていることが多いです。しかし、そのような弱点を長所に変えているのが、アンティークの良さです。個性的なモデルが多く、同じ型番でもマイナーチェンジを実施しているため、自分だけの個性的な時計を着用できます。経年劣化による色合いも魅力的なものが多く、販売当時、人気モデルであったものは、希少価値の高さから高額取引も期待できます。
古いものが好きな方や「現行モデルを求めているけどなかなか買えない」とお悩みの方は、お手軽に買えるロレックスのアンティークモデルを一度、購入してみてはいかがでしょうか。


