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時計のクロノグラフとは

クロノグラフとは、ストップウォッチ機能を備えた時計で、19世紀初頭にフランスの時計師によって発明されたとされています。その名称の由来は、ギリシャ語で「時間」を意味するChronos(クロノス)と、「記す」を意味するGraphos(グラフォス)です。
機械式時計の中でも特に人気の高い機能で、現在も多くのブランドが豊富なラインアップを展開しています。
機械式はもちろん、クォーツやスプリングドライブなど、さまざまな駆動方式でクロノグラフモデルが展開されており、非常に幅広く支持されている機能といえるでしょう。
クロノグラフの文字盤の見方
通常、クロノグラフは中央にクロノグラフ秒針を備え、文字盤内には「サブダイヤル」と呼ばれる小さな副文字盤が配置されています。多くのモデルでは、サブダイヤルに「30分積算計」と「12時間積算計」が組み合わされているのが一般的です。
ただし、中には「60分積算計」や「24時間積算計」を備えたモデルも存在します。クロノグラフを作動させると、経過時間に応じて30分積算計や12時間積算計が連動して進みます。
中央のクロノグラフ秒針とサブダイヤル内の針の位置を確認することで、スタートからどれくらいの時間が経過したのかを把握できる仕組みです。
クロノグラフの使い方

クロノグラフは、プッシュボタンを操作することで、スタートとストップによる時間計測が可能です。まずは、一般的なクロノグラフの使い方について見ていきましょう。
スタート / ストップボタンを押して計測する
クロノグラフモデルの多くは、リューズの上にある「2時位置のプッシュボタン」で計測をスタートします。
ただし、モデルによって配置が異なるケースもあるため、使用前には取扱説明書をしっかり確認しましょう。また、ボタンの押し心地も時計によってさまざまで、軽い力で押せるものもあれば、しっかり奥まで押し込む必要があるタイプもあります。
再度スタート / ストップボタンを押して計測を終える
2時位置のボタンをもう一度押すと、計測がストップします。
ストップした状態から再開する場合も同様で、同じボタンを押すだけで計測を再スタートできます。つまり、2時位置のボタンは「スタート」と「ストップ」を切り替える役割を担っているのです。
リセットボタンを押してリセット
計測を終えたら、4時位置のプッシュボタンを押すことでリセットできます。
リセットする際は、必ず一度ストップしてから操作してください。手順を誤ると、不具合や故障の原因となる可能性があります。また、リセットボタンの位置や操作感もモデルによって異なる場合があるため、時計に合わせた正しい操作を行いましょう。
クロノグラフが男性に人気の理由

操作できる機能の多さやスポーティーなデザインは、クロノグラフが男性から支持される大きな理由です。また、多くの人気モデルに搭載されている点も、その魅力のひとつといえるでしょう。ここからは、クロノグラフが人気を集める理由について詳しく解説します。
操作して楽しめる機能であるため
クロノグラフは操作性の高い機能であり、愛好家の間では「触って楽しめる」点が大きな魅力となっています。
スタートやストップの際に針の動きを眺めたり、プッシュボタンの押し心地を味わったりと、動作そのものを楽しめるのが特徴です。意外に思われるかもしれませんが、このように積極的に操作して楽しめる機能は多くありません。
たとえばGMTやワールドタイマー、アラームは一度設定すれば自動的に作動しますし、カレンダー表示も時計の動きに合わせて切り替わるため、使用者が頻繁に操作する場面は少ないのです。
その点、クロノグラフは自ら操作して動きを体感できるため、機械好きの方にとって非常に魅力的な機能といえるでしょう。
スポーティーなデザインのため
クロノグラフが搭載されることで、時計全体にスポーティーで力強い印象が加わります。
文字盤に配置された複数のサブダイヤルや針、さらに目盛り入りのベゼルなど、機能美を感じさせるデザインが「若々しくてかっこいい」魅力を演出し、多くの男性の心を惹きつけているのです。
スポーツモデルは腕時計の中でも人気が高く、なかでもクロノグラフは不動の支持を集める代表的な機能といえるでしょう。
実用性はもちろん、デザイン面でも大きな存在感を放つことから、クロノグラフを採用するブランドが多いのも納得できます。
人気モデルに多く搭載されているため
クロノグラフは数ある時計機能の中でもメジャーな存在であるため、多くの人気モデルに採用されています。
その背景には、クロノグラフならではの機械的なデザインが、過去に高い支持を集めてきたという実績があり、それが現在の定番モデルとしての地位につながっていると考えられます。
結果として、人気モデルを選んだらクロノグラフだった、というケースも少なくないかもしれません。その意味でも、クロノグラフ機能の搭載は、時計選びにおいて重要な要素のひとつといえるでしょう。
クロノグラフの種類
クロノグラフといえば、デイトナに搭載されているタキメーターがよく知られていますが、実際にはほかにもさまざまな種類があります。ここでは、代表的な5種類のクロノグラフスケールについて紹介します。
タキメーター

タキメーターとは、ベゼルに刻まれた目盛りとクロノグラフ秒針を使い、平均速度を算出するための機能です。「タキ」は速度、「メーター」は測定器を意味します。
使い方はシンプルで、たとえば時速を測りたい場合は、スタートと同時にクロノグラフを作動させ、1キロメートル進んだ時点でストップします。そのとき、針が指しているタキメーターの数値がおおよその平均時速となります。
実際の生活で使用する機会は多くありませんが、目盛りが生み出す独特のデザイン性が高く、クロノグラフらしい魅力として多くの愛好家に支持されているのです。
テレメーター

テレメーターとは、光と音の到達時間の差を利用して距離を割り出すための機能です。「テレ」は遠くを意味します。
もともとは戦時中、大砲の発射時に生じる閃光と爆音の時間差を測定し、敵の位置までの距離を推定する目的で使われていたとされています。
身近な例としては、雷が光った瞬間にクロノグラフをスタートし、雷鳴が聞こえたタイミングでストップします。すると、針が示す目盛りから落雷地点までのおおよその距離を読み取ることができる仕組みです。
パルスメーター

パルス(脈拍)を測定するために使われていた機能が、パルスメーターです。かつては医療従事者が患者の脈拍を簡易的に確認する際に活用していました。
時計によって基準となる脈拍数(30回・15回など)は異なりますが、使い方は共通しています。
基準回数の脈を数え始めると同時にクロノグラフをスタートし、数え終わったところでストップします。そのとき、クロノグラフ秒針が指している目盛りが、1分あたりのおおよその脈拍数です。
デシマルメーター

デシマルとは「10進法」を意味し、時間を100分割の目盛りで読み取れるようにしたクロノグラフスケールです。経過時間を10進法で把握できるため、計算を簡単に行えるという特徴があります。
もともとはパイロット向けに考案されたもので、文字盤の外周に配置されたデシマルスケールを使い、時間を「1分=100デシマル(DM)」として扱えるようにしたものです。
これにより、飛行距離や燃料消費量などの計算を分かりやすく行えるようになりました。
アズモメーター

アズモ(Asmo)とは「喘息(Asthma)」に由来し、1分間の呼吸数を測定するための目盛りを備えたクロノグラフ機能です。
モデルによって基準となる呼吸回数は異なりますが、クロノグラフを作動させて呼吸を数え、基準回数に達したところでストップボタンを押します。針が止まった位置の目盛りが、1分間のおおよその呼吸数です。
クロノグラフの機構の種類
クロノグラフ機構とは、ストップウォッチ機能を実現するための時計機構です。その種類は実に豊富で、さまざまな方式が存在します。そこで、代表的なクロノグラフ機構5つについて詳しく解説します。
フライバック クロノグラフ

フライバック クロノグラフは、クロノグラフを動かしている途中で、すぐに計測をやり直せる便利な機能です。
通常、クロノグラフは「停止・リセット・再スタート」と3つの操作が必要ですが、フライバック機能ならボタンひとつで一気にリセットと再スタートができます。
この機能は、フランス軍航空部隊の要請によって開発され、ブレゲの「Type XX」や「Type XXI」などに代表されるモデルで知られています。
ワンプッシュ クロノグラフ

ワンプッシュ クロノグラフは、「スタート・ストップ・リセット」の操作をすべてひとつのボタンで行えるタイプの機能です。
主にヴィンテージモデルやその復刻モデルに採用されており、複雑な操作がいらないシンプルさが魅力です。また、ボタンがひとつで済むため限られたスペースでも収まりが良いことから、デザイン面での人気も高くなっています。
スプリットセコンド クロノグラフ

スプリットセコンド クロノグラフは、2本のクロノグラフ秒針を使って同時に2つの経過時間を計測できる高度な機能です。
スタートボタンで2本の針が同時に動き、スプリットボタンを押すと1本だけが停止します。
もう一度押すと、停止していた針が追いついて再び並んで進みます。最後にスタートボタンで停止し、リセットすると2本ともゼロ位置に戻ります。途中計測やタイム差を測りたい場面で活躍する便利な仕組みです。
レガッタ クロノグラフ

レガッタ クロノグラフは、レース開始前のカウントダウン計測のために開発された機能です。
代表例としてロレックスの「ヨットマスターII」があり、最大10分間のカウントダウンが行えます。カウントダウン中にプッシュボタンを押すと秒針を12時位置に戻し、離すと再スタートする仕組みです。
また、公式シグナルに合わせて時間を微調整できる「シンクロナイズ機能」も備えており、レースのスタートタイミングを正確に合わせることができます。
1/100秒計測クロノグラフ

文字盤外周に刻まれた0〜100の目盛りを使い、1/100秒単位の計測ができる機能です。これはゼニスの「エル・プリメロ 21」に搭載されており、クロノグラフ秒針が1秒で1周する特徴を持っています。
通常のクロノグラフは1周に約1分かかるため、その違いからも「エル・プリメロ 21」の高性能ぶりが際立ちます。さらに、針が高速で回転するため、精密な計測だけでなく視覚的に楽しめるダイナミックな動きも魅力です。
クロノグラフのデザインの種類
クロノグラフには、主にアナログ、アナデジ、デジタルの3つのタイプがあり、それぞれ異なる魅力があります。ここでは、これら3つのタイプについて確認していきましょう。
アナログ クロノグラフ

機械式時計の中でも、最も一般的なタイプといえるのがアナログ クロノグラフです。
1940年代に確立されたクラシックなクロノグラフデザインが現在の原型とされ、そのデザインは現在のモデルにも通じています。
通常、文字盤のサブダイヤルにあるスモールセコンド(秒針)が常に動き、中央のクロノグラフ秒針は計測を開始したときだけ動く仕組みです。
また、サブダイヤルの数は2つのものから3つのものまで、さまざまなバリエーションがあります。
アナデジ クロノグラフ

機能が増えると文字盤が複雑になりやすいため、必要なときだけデジタル表示を点灯させて情報を読み取れるようにしたのがアナデジ クロノグラフです。
多くのモデルでは、基本の時刻表示をアナログで行い、クロノグラフやUTCなどの追加機能はデジタルで表示するなど、視認性と操作性を両立した設計になっています。
代表モデルとしては、オメガの「スピードマスター スカイウォーカー X-33」が挙げられ、アナログとデジタルを組み合わせた高い実用性で知られています。
デジタル クロノグラフ

デジタル クロノグラフとは、デジタル表示で行うストップウォッチ機能のことです。
機械式ではクロノグラフは高価になりがちな機能ですが、クォーツ時計の普及により、時間計測はぐっと身近なものになりました。今では、ストップウォッチ機能のないデジタル時計のほうが珍しいといえるほど一般的です。
有名ブランドのおすすめクロノグラフ
クロノグラフを搭載した腕時計は数多くあり、それぞれ異なる特徴を持っています。その中から有名ブランドのおすすめクロノグラフモデルを3つ紹介します。
ロレックス 「コスモグラフ デイトナ」 Ref.116500LN

高級クロノグラフモデルの中でも、最も高い知名度を誇る存在といえばデイトナでしょう。
「Ref.116500LN」は2016年に発表され、2023年に惜しくも生産終了となりましたが、現在でも中古市場で高い人気を維持しているデイトナの代表的なモデルです。
デイトナの中で初めてセラクロム製タキメーターベゼルを採用し、傷がつきにくい優れた堅牢性と、洗練されたスポーティーなデザインを兼ね備えている点が大きな魅力となっています。
オメガ 「スピードマスター プロフェッショナル ムーンウォッチ」 Ref.310.30.42.50.01.001

ロレックスのデイトナと並び、高い人気を誇るクロノグラフモデルとして挙げられるのが、「オメガ スピードマスター プロフェッショナル」です。
「ムーンウォッチ」の愛称が示すとおり、NASAの公式装備品として認定され、月面着陸をはじめとする数々の宇宙開発ミッションに携行されてきた歴史を持ちます。
過酷なミッション環境下においても、堅牢で信頼性の高いクロノグラフ機能が宇宙飛行士たちを支えてきたといわれています。
ウブロ 「ビッグバン ウニコ チタニウム セラミック」 Ref.411.NM.1170.RX

異素材の組み合わせや多層構造のケースが生み出す、ダイナミックさと美しさを兼ね備えたモデルが、「ウブロ ビッグバン」です。
中でも、チタンケースにブラックセラミックベゼルを組み合わせた「Ref.411.NM.1170.RX」は、洗練されたデザインが際立つ一本といえるでしょう。
スケルトン仕様の文字盤からは、完全自社製ムーブメント「ウニコ(Cal.HUB1242)」の精緻な動きを存分に楽しむことができます。
時計のクロノグラフに関するよくあるQ&A

クロノグラフに関しては、扱いの注意点やサブダイヤルの数・意味などがよくある質問として挙げられます。最後に、これら2つの疑問についてまとめました。
クロノグラフの注意点は?
精密なクロノグラフは、振動や衝撃に弱い個体も多いため、取り扱いには十分な注意が必要です。乱雑に扱うと、針ズレやプッシュボタンの脱落など、さまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。
また、クロノグラフ秒針を常時作動させたままにすると、部品の摩耗が進みやすくなるため、使用しない際はゼロ位置で停止させておくのが望ましいでしょう。
日頃から丁寧な扱いを心がけ、定期的なオーバーホールを行うことが、長く良好な状態を保つポイントです。
3つ目(横)、2つ目(縦)クロノグラフとは?
クロノグラフの基本的な計測機能に大きな違いはなく、主にデザインや設計思想によって数や並びが決められています。
現行モデルでは、3つ目のクロノグラフを備えた仕様が主流ですが、レーシングモデルなどでは2つ目のシンプルな構成も根強い人気があります。
どちらを選ぶかは、クロノグラフ選びにおける重要なポイントのひとつといえるでしょう。
代表例として、3つ目仕様のクロノグラフにはロレックスのデイトナが挙げられ、2つ目仕様を採用したモデルでは、IWCのフラッグシップであるポルトギーゼなどが知られています。
まとめ
時間を計測できるクロノグラフは、機械的な構造を視覚的に楽しめるうえ、自分で操作できる点から、高い人気があります。ぜひ、腕時計コレクションのひとつとして、クロノグラフを取り入れてみてはいかがでしょうか。


