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時計のムーブメントとは? 種類・見分け方・歴史と名機まで解説

時計のムーブメントとは? 種類・見分け方・歴史と名機まで解説
石山真路(いしやま しんじ)
記事の監修者
査定歴15年
石山真路(いしやま しんじ)

貴金属・ブランド品・時計など多彩な商材を長年取り扱い、市場動向や真贋判定に深い知見を持つ査定士。
豊富な経験に基づく正確な査定と丁寧な対応で信頼を得ています。最新の市場情報にも精通し、コラム監修では実践的な知識を発信しています。

時計を動かす「エンジン」の役割を果たすのがムーブメントです。本記事では、ムーブメントの種類や見分け方、歴史、さらに代表的な名機まで、幅広く解説していきます。

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時計のムーブメントとは

時計のムーブメントとは、針や日付表示などを動かすための内部機構を指します。しばしば車のエンジンに例えられることもあり、まさに時計の心臓部といえる存在です。

ムーブメントは、時計を動かす仕組みや精度の制御方法によっていくつかの種類に分類されます。

時計を選ぶ際には、ムーブメントの種類や特徴を理解しておくことで、自分のライフスタイルや好みに合った一本を見つけやすくなるでしょう。

時計のムーブメントの種類

時計のムーブメントによって、駆動の仕組みや原動力は異なります。ここでは代表的な4種類のムーブメントについて、それぞれの特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説します。

機械式ムーブメント(自動巻き)

機械式ムーブメントは、巻き上げたゼンマイがほどける力を利用して針を動かしており、電子的な要素を使わずに時を刻みます。

伝統的な構造を持つため、高精度な機械式腕時計を作るには、熟練した職人の高度な技術が欠かせません。

現在一般的となっている自動巻き時計は、ゼンマイを手動で巻き上げる必要があるという機械式時計の弱点を補うために開発されたものです。

内部にはローターと呼ばれる半円形の金属部品が組み込まれており、腕の動きに合わせて回転し、ゼンマイを自動で巻き上げます。

メリット・デメリット

自動巻き時計のメリットは、腕の動きに合わせてゼンマイが自動で巻き上がるため、止まりにくい点にあります。

ただし、使用しない日が続くとゼンマイがほどけて止まるため、正常に動作させるには、毎日数時間は腕を動かすことが望ましいです。

また、自動巻き時計はローターなどの部品が多く組み込まれている分、後述する手巻き時計に比べてケースがやや厚くなるというデメリットもあります。

なお、精度そのものは手巻き式と同程度で、クオーツ式ほどの高精度は期待できません。

機械式ムーブメント(手巻き)

手巻きの機械式ムーブメントは、時計の側面にあるリューズを手で回すことでゼンマイを巻き上げ、その力で歯車を動かして針を進めます。

自動巻きと同様に、物理的な力と精巧な機構のみで動作し、技術的な魅力があります。また、歴史が古く、伝統を重んじる方にとっても高い人気を誇るジャンルです。

メリット・デメリット

手巻きの機械式ムーブメントは、構造がシンプルなため、メンテナンス性の高さが最大のメリットとなります。

一方で、非常に繊細な機構でもあるため、定期的な点検や修理などのメンテナンスが欠かせません。さらに、毎日リューズを巻き上げないと徐々に精度が低下してしまう点もデメリットと言えるでしょう。

クオーツ式ムーブメント

内部に水晶(クオーツ)由来の部品を使用していることから、「クオーツ式」と呼ばれています。

この時計は電気を動力とし、水晶に電圧を加えて振動させることで高い精度を実現しています。電圧を与えられた水晶は、毎秒一定の周期で規則正しく振動するという特性を持っています。

クオーツ式時計では、この振動を電子回路が電気信号に変換し、ステップモーターを駆動させることで、針や日付表示を動かしています。

メリット・デメリット

クオーツ式のメリットは、リューズを巻かなくても動作するため非常に使いやすい点にあります。

機械式時計と比べても時刻のズレが少なく、正確さの面でも優れています。さらに、比較的手頃な価格のモデルが多いため、洋服や気分に合わせて複数の時計を使い分けることも可能です。

一方でデメリットとしては、電池を使用するため定期的な交換が必要なことが挙げられます。加えて、基本的にステップモーターのトルクが弱いため、重い針を使えないなど拡張性には限界があります。

しかし近年のクオーツ式時計は進化しており、高級モデルであればこれらのデメリットもほぼカバーされています。

スプリングドライブ・ムーブメント

スプリングドライブはゼンマイで駆動しつつ、水晶振動子によって精度を制御するムーブメントです。

一般的な機械式時計の精度は±20秒/日とされていますが、スプリングドライブの公称精度は「平均±15秒/月」で、日差換算では0.5秒程度と非常に高精度となります。

1日に1秒もずれない精度は、ゼンマイ駆動時計としては驚異的と言えるでしょう。

メリット・デメリット

スプリングドライブ・ムーブメントのメリットは、機械式の力強さとクオーツ式の高い精度を兼ね備えている点にあります。いわば「良いとこ取り」のムーブメントです。

一方で、大量の部品で構成されているため量産が難しく、価格が高くなる傾向があります。また、仕組みが複雑なことから、オーバーホールを行う際には正規業者に依頼する必要がある点もデメリットといえます。

時計のムーブメントの見分け方

ムーブメントは、秒針の動きやリューズを巻く感触、さらには音の違いから比較的簡単に判別できます。ここでは、それぞれのムーブメントの特徴について詳しく解説します。

秒針の動き

機械式時計では、秒針が滑らかに動く「スイープ運針」が採用されており、引っかかりなく一周をスムーズに回転します。

これに対して、クオーツ式時計は秒針が1秒ごとに動く「ステップ運針」を採用しており、カチカチと刻むような動きが特徴です。

スプリングドライブはゼンマイで駆動されるため、機械式と同様にスイープ運針で動きます。

リューズを巻く際の感覚

自動巻き時計では、リューズを巻いたときの手ごたえが軽く、巻き止まりがないことも特徴です。

手巻き式時計は、巻き止まりがあるため、ゼンマイが限界まで巻かれたことを手ごたえで確認できます。一方、クオーツ式時計ではリューズを巻いても手ごたえがありません。

自動巻き時計を振ると、内部のローターが回転して「シャー」という音がします。一方、手巻き式やクオーツ式にはローターがないため、振っても音はほとんどしません。

これは、手巻きと自動巻きの違いを簡単に見極める方法のひとつです。

時計のムーブメントの歴史

機械式ムーブメントの歴史は非常に古く、ヨーロッパの塔時計に起源があります。一方、クオーツ式ムーブメントは比較的新しく、1927年に試作が完成したといわれています。

ここでは、それぞれの歴史を時系列で追っていきましょう。

機械式ムーブメントの歴史

機械式ムーブメントの歴史は、13世紀に始まり、長い年月を経て現代の時計文化へと発展してきました。

13世紀頃 ヨーロッパで塔時計が登場。おもりを動力に鐘で時を知らせる。
15世紀後半 ゼンマイ発明により時計の小型化が進む。
17世紀 ガリレオの発見をもとにホイヘンスが振り子時計を開発。精度が飛躍的に向上。
18世紀 航海用高精度時計「マリンクロノメーター」が誕生。レバー脱進機の発明で機械式時計の基礎が確立。
19–20世紀初頭 産業革命で時計の量産化が進み、日常生活に広く普及。
第一次世界大戦期 懐中時計に代わり腕時計が主流となる。

クオーツ式ムーブメントの歴史

クオーツ式ムーブメントの歴史は、機械式に比べると新しいものですが、その高精度と利便性によって、瞬く間に時計業界の主流となりました。

19世紀後半 フランスの物理学者ジャック・キュリーとピエール・キュリー兄弟が、水晶に電圧をかけると規則的に振動する性質を発見。
1927年 アメリカのマリソンが大型研究用クオーツ時計を試作(腕時計実用化は1969年)。
1969年 セイコーが世界初のクオーツ腕時計「アストロン」を発売。時計業界に革命。
1970年代 各メーカーが電子式時計を次々と開発。
1973年:セイコーがデジタル式腕時計を発売
1974年:カシオが「カシオトロン」を発売
1976年:シチズンが太陽電池式クオーツを発売
1980年代以降 クオーツショックで一時的に機械式時計が衰退。しかし、やがて両者が共存する時代へ。

時計史に名を残した代表的なムーブメント

歴史的に名を残す有名なムーブメントは数多く存在しますが、ここでは特に代表的な3つのムーブメントについて詳しく解説します。

オメガ「Cal.321」(1942年)

Cal.321は、アポロ11号の月面着陸で使用された時計に搭載されたムーブメントです。

直径わずか27mmというコンパクトサイズでありながら、12時間積算計を備えています。当時この機能を持つムーブメントは通常、直径30mm以上の大型時計にしか搭載できませんでした。

1942年、オメガはレマニア社の設計者に依頼し、直径27mmの小型ムーブメントに12時間積算計を組み込むことに成功し、Cal.321が誕生しました。

Cal.321はオメガのフラッグシップモデル「スピードマスター」に採用され、人類初の月面着陸にも同行したのです。

ゼニス「エル・プリメロ(Cal.3019PHC)」(1969年)

エル・プリメロ(Cal.3019PHC)は、ゼニスが開発した自動巻きクロノグラフムーブメントで、1969年の誕生以来、半世紀以上にわたり名機として知られています。

1960年代後半のスイスでは、複数のメーカーが自動巻きクロノグラフムーブメントの開発競争を繰り広げていました。日本でも1969年5月、セイコーが世界初の自動巻きクロノグラフ搭載腕時計を発売しています。

その中でゼニスは1969年、36,000振動/時(毎秒10振動/5Hz)という高精度を誇るエル・プリメロと、それを搭載したプロトタイプを発表しました。

エル・プリメロは現在もゼニスの現行モデルに搭載され、同社の腕時計を支え続ける名機として評価されています。

ロンジン「Cal.L990」(1977年)

「遅咲きの大器」と称されるCal.L990は、ロンジンが苦難の末に開発した自動巻きムーブメントです。

1970年代初頭、経営が安定してきたロンジンは、新しい自動巻きムーブメントの開発に取り組みました。

上下に重ねた2つの香箱(ゼンマイを収める部品)を高速回転させてトルクを高めるという発想からCal.L890が生まれ、これを薄型化したものがCal.L990です。

Cal.L990は後にエボーシュメーカーのヌーベル・レマニア(現ブレゲ)に売却され、その名称は現在残っていません。しかし、形を変えてブレゲの腕時計に搭載され、同社の人気を支え続けています。

時計のムーブメントに関するよくあるQ&A

時計のムーブメントについてよく寄せられる質問として、「機械式時計とクオーツ式時計の違い」と「振動数の基準」があります。ここでは、この2つの疑問について詳しく解説します。

機械式とクオーツ式の違いは?

機械式時計はゼンマイを動力とし、秒針が滑らかに動く「スイープ運針」を採用しています。ゼンマイの力で動くため、定期的に巻き上げを行わないと止まってしまう点が特徴です。

一方、クオーツ式時計は水晶(クオーツ)部品を使用し、電気を原動力としています。

秒針が1秒ごとに動く「ステップ運針」を採用しており、高い正確性を誇ります。ゼンマイを巻く必要はありませんが、電池交換が必要になります。

振動数の基準はある?

現在の機械式ムーブメントは、28,800振動/時(1秒間に8振動)が主流となっています。一般的に、28,800振動を超えるものは「ハイビート」、それ未満のものは「ロービート」と呼ばれます。

ロービートのメリットは、振動数を抑えることで部品の摩耗を軽減し、ムーブメントを長持ちさせやすい点にあります。ハイビートに比べて耐久性が高く、故障しにくい傾向があるともいわれています。

一方、ハイビートのメリットは、安定した振動による高い精度です。振動数が多いほど時間の計測が細かくなり、精度も安定するため、高精度を追求するモデルにはハイビート設計が採用されることが多くなっています。

まとめ

時計には、機械式(自動巻き・手巻き)、クオーツ式、スプリングドライブなど、さまざまなムーブメントがあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、比較して自分に合った時計選びの参考にしてみてください。

石山真路(いしやま しんじ)
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