ブランド品を持つ理由:ステータスから自己表現へ | 函館山の手店
―“何を持つか”から“なぜ選ぶか”へ―
かつてブランド品は、「経済的成功」や「社会的地位」を象徴するアイテムとされ、持つことで他者との差別化を図ることができました。ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネルといったラグジュアリーブランドは、その名を身にまとうことで一目置かれる“ステータス”の役割を果たしていたのです。
しかし、現代の価値観は大きく変化しています。ブランドを持つ理由は、見せびらかすためではなく、“自分らしさ”を表現するためへとシフトしてきました。本記事では、ブランド品の捉え方がいかに変化し、今何が求められているのかを考察します。
1. ステータスシンボルとしてのブランドの時代
20世紀後半から2000年代初頭まで、ブランド品を持つことは“成功者の証”とされていました。ルイ・ヴィトンのモノグラム、ロレックスの腕時計、シャネルのチェーンバッグは、社会的な階層を可視化するアイコンとして機能していたのです。
この背景には、「経済的なゆとり=ブランドを所有できる」という価値観が強く根付いていました。また、日本においては1980年代のバブル景気の影響も大きく、流行りのブランドを持つことは“常識”であり、“共通言語”のような役割を果たしていたと言えるでしょう。
しかし、時代は変わり、ブランド品を持つ理由も変化を始めました。
2. 自己表現ツールとしてのブランドへ
SNSが普及し、個人が簡単に自分の価値観やライフスタイルを発信できるようになると、ブランドの選び方にも変化が現れます。**「何を持っているか」よりも「なぜそれを選んだか」**が重要視されるようになったのです。
たとえば、ハイブランドでもヴィンテージアイテムを選ぶ人、あえてロゴを見せないミニマルなアイテムを好む人、リユース品で自分だけの一点物を探す人など、その選択には**明確な“自己の価値観”や“美意識”**が反映されるようになっています。
現代では、ブランド名がもたらす外的評価ではなく、そのブランドが持つ思想やストーリーに共感できるかどうかが重視されています。
3. ブランドの“中身”で選ばれる時代
多くの若年層にとって、ブランドを選ぶ基準は「ネームバリュー」から「思想」へと変わりつつあります。たとえば、次のような要素がブランド選びの重要な判断材料となっています:
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サステナビリティへの取り組み
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フェアトレードやジェンダーへの配慮
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少量生産・クラフツマンシップの重視
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ヴィンテージ市場との親和性
こうしたブランドは、商品そのものの品質はもちろん、「どう生産されているか」「企業として何を目指しているか」といった背景まで含めて評価されています。つまり、ブランドは“意味”や“理念”を共有するツールとなっているのです。
4. リユース・ヴィンテージ市場の台頭
「自己表現としてのブランド選び」は、新品だけでなく中古市場にも拡大しています。特にヴィンテージシャネルや初期ロレックスなど、“時代を超えて愛されるデザイン”は、持ち主の審美眼や感性を表現する手段として人気を集めています。
また、リユース市場を利用すること自体が、「循環型社会への貢献」や「無駄な消費を抑える生活スタイル」として社会的な意味合いを帯びており、選択の背景には倫理的な価値観も垣間見えるようになっています。
5. 今後のブランドとの付き合い方
今後、ブランドは単なる“商品提供者”ではなく、共感を提供するパートナーとしての立ち位置が求められます。消費者が求めるのは、「他人より目立つこと」ではなく、「自分の価値観に合うこと」。そのためには以下の要素が鍵になります:
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ブランドの“思想”が明確であること
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購入体験にストーリー性があること
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持ち続ける価値(メンテナンス・再販)があること
消費者は今、ブランドに「意味」を求めています。言い換えれば、「所有」ではなく「共鳴」こそが、新しいブランドとの付き合い方なのです。
結論:「選ぶ理由」が問われる時代へ
ブランド品を持つ理由は、ステータスを示すことから、自己の価値観やライフスタイルを映す手段へと確実にシフトしています。高価だから、流行っているからではなく、「それを持つ理由」が自分の中にあるかどうか。
私たちは今、ブランドに“ラベル”ではなく“意味”を求めています。
そしてその意味を通して、自分自身の「あり方」や「生き方」を表現しようとしているのです。
















