ブランドのリセール戦略と「再販」ビジネスの新潮流 | 函館山の手店
―“新品だけを売る時代”から“再び価値を売る時代”へ―
従来、ブランドビジネスの多くは「新品の販売」を軸として成り立ってきました。
しかし近年、この構造が大きく変わりつつあります。キーワードは「リセール(再販)」と「循環型経済」。
高級ブランド自身が中古市場に参入し始めている現象は、従来の販売戦略とは一線を画す新潮流として注目されています。
本記事では、リセール市場の成長背景と、各ブランドがどのように戦略をシフトさせているのかを読み解き、今後の可能性について考察します。
中古市場の急成長とブランド側の“逆転戦略”
数年前まで、「中古品=価値が下がったもの」というイメージは根強くありました。
しかし、Z世代やミレニアル世代を中心とした価値観の変化により、サステナビリティと賢い消費を意識する動きが拡大。
とくにファッション分野においては、「高品質なものを長く使う」あるいは「状態の良い中古を選ぶ」といった行動が定着してきました。
この流れを受けて、ブランド品のリセール市場(特にラグジュアリー領域)は、世界的にも年10%以上の成長率を記録。
欧米では、全体の約10%が中古品取引となっており、日本でも同様の動きが加速しています。
ブランド側としてもこの流れを無視できず、戦略的にリセールに参入するケースが増えています。
主要ブランドの“リセール参入”事例
GUCCI(グッチ):Gucci Vault
グッチは公式に「Gucci Vault」というリセールプラットフォームを立ち上げ、自社製品の中古アイテムをキュレーションし再販しています。
これにより、ブランドの世界観を保ったまま中古市場の価値をコントロールできる仕組みを築いています。
Patagonina:Worn Wear
アウトドアブランドのパタゴニアは、早くから「Worn Wear」プログラムを開始。
自社製品のリペア・再販売を推進し、地球環境への配慮と企業姿勢の一貫性を明確に打ち出しています。
Balenciaga、Burberry、Lululemon など
他にもバレンシアガ、バーバリー、ルルレモンなどが、提携型または直営型のリセールプラットフォームを活用。
「新品を売る企業」から「ブランド価値を循環させる企業」へと、位置づけの再定義が進んでいます。
ブランドが自社リセールを行う理由
ブランドがあえて“中古”に手を出すのは、以下のような戦略的理由があります。
1. ブランド価値の保護
外部の中古市場に任せてしまうと、価格や状態にばらつきが出てブランドイメージを損なうリスクがあります。
自社でリセールを管理することで、「一定の品質保証と価格コントロール」が可能になります。
2. 顧客との長期的関係性構築
新品を1回売って終わりではなく、リセールを通じて顧客と継続的な接点を持つことができるのも大きな利点。
下取り・再販を通じてブランド内で顧客を循環させる、いわば“エコシステム”の形成です。
3. ESG・サステナビリティへの対応
環境配慮が企業評価に大きな影響を与える現在、**再販は明確な「社会貢献アクション」**として株主や消費者から高く評価されます。
またCO₂削減や廃棄物削減にも直結するため、環境報告書にも数値化しやすい施策です。
消費者側のメリットと認識変化
消費者も「再販可能なブランド品」を選ぶことで、購入時点で“資産価値”を意識する傾向が強まっています。
買って使っても、一定の価格で売れる安心感があることから、「リセールバリュー」は購買判断の重要な指標に。
また、「循環型社会への貢献」や「無駄を省いた賢い消費」といった文脈が、Z世代の購買心理とも一致しています。
今後の課題と展望
もちろんすべてのブランドにとって、リセールへの参入が簡単というわけではありません。
在庫管理、検品コスト、真贋保証、デジタル対応(ブロックチェーン認証など)など、構築すべき基盤は多岐にわたります。
一方で、「他社に中古市場を任せるのではなく、自社で回す」ことによって生まれるブランド資産の統制力と継続収益は非常に魅力的です。
中長期的には、多くのブランドがリユースを経営の柱の一つとして組み込むことが想定されます。
まとめ:再販は“第二の販売戦略”へ
これまで中古品はブランドにとって「価値を下げる存在」でした。
しかし今や、適切に管理されたリセールは新たな収益源であり、ブランド価値の再定義の場でもあります。
「売る」から「循環させる」へ――。
ラグジュアリービジネスは今、新たなステージへと進化し始めています。
















