海外リユース市場の現状と日本市場との違い | 函館山の手店
──「使い捨て」から「循環」へ。国によって異なるリユースの成熟度
環境意識の高まりとともに、世界中でリユース(中古品流通)への関心が急速に高まっています。ファッション、家電、ジュエリー、さらには自動車まで、多くの分野で「新品でなくてもよい」「モノを長く大切に使う」という価値観が広がりを見せています。
日本でも、フリマアプリの普及やリユースショップの台頭により中古市場が年々拡大していますが、その性質や成長スピードは海外と異なる点も多く存在します。
本記事では、海外の主要リユース市場の特徴を紹介しつつ、日本市場との違いを明らかにし、これからの課題と展望を考察していきます。
世界的に加速するリユース経済
まず、リユース市場は世界的に見ても急成長中です。2023年の調査によれば、グローバル二次流通市場は約1.5兆ドル(約225兆円)規模に達し、特に欧米を中心に「サステナブルな消費」への移行が進んでいます。
欧米の事例:環境意識と社会的支持
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アメリカ:スレッドアップ(ThredUp)、リアルリアル(The RealReal)といった中古アパレルのオンライン専門業者が成長。中古購入を「環境配慮」として選ぶ若年層が多く、国全体でリユースが生活に根付いています。
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フランス・ドイツ:ヴィンテージ品やアンティークへの関心が高く、職人による修復文化も根強い。政府も「循環経済法」などの制度整備を進め、中古品の再流通を促進。
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北欧諸国:特にスウェーデンは、リサイクル税制やリユース支援を国策として行っており、修理・再利用を前提とした社会モデルが確立しつつあります。
日本のリユース市場の特徴
一方、日本のリユース市場は、以下のような独自の性質を持っています。
① 高品質・美品志向が強い
「中古=状態の良さが重要」とする日本の消費者意識は非常に顕著です。小さな傷や付属品の有無でも評価が大きく変わるため、査定や流通プロセスにおいて品質管理の精度が極めて高いのが特徴です。
② 店舗主導の業界構造
欧米ではCtoCの取引(個人間売買)が主流なのに対し、日本ではハードオフ、セカンドストリート、ブックオフなど、BtoC(事業者主導)のリユースが発達しています。これにより、査定や保証、接客といった「サービス付きの中古販売」が一般的です。
③ フリマアプリ文化の定着
メルカリを中心に、スマホ一台で気軽に中古品を売買できる仕組みが普及。特に若年層は「売る前提で買う」という考え方を持ち始めており、新品と中古の垣根が徐々に薄れつつあると言えます。
共通するトレンド:デジタル化とグローバル化
日本と海外で文化や商習慣に違いはありますが、リユース市場全体に共通する2つのトレンドも見逃せません。
1. デジタル化による査定・販売の効率化
AI査定、ブロックチェーンによる真正性保証、バーチャル試着などの技術導入が進み、中古品であっても安心・迅速に購入できる環境が整いつつあります。
2. 国境を越えた取引の増加
日本のブランドバッグや腕時計は、品質の良さゆえに海外バイヤーから高評価を得ており、越境ECや海外オークションへの出品が増加中。国内だけでなくグローバル市場での価値評価が価格に反映される時代になってきています。
海外と日本の違いが生む課題と可能性
海外と比較することで、日本市場特有の「強み」と「弱み」が浮き彫りになります。
【強み】
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中古品の品質水準が高く、世界的に信頼されている
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リユース事業者の査定・管理体制が整っている
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消費者の丁寧な使用意識が再販価値を高めている
【弱み】
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商品状態へのこだわりが過剰で、流通コストが高い
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中小リユース事業者がIT・越境販売への対応に遅れている
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「中古=貧しい」イメージが一部層に残っている
こうした課題に対して、デジタル技術の導入や国際的なマーケットへの接続がカギとなるでしょう。
今後の展望:リユースは“グローバル・スタンダード”へ
今後、世界の中古市場は「持続可能な消費のスタンダード」としてますます存在感を増していくと考えられます。
日本のリユース市場も、海外の仕組みや価値観を柔軟に取り入れながら、品質重視の文化を強みとして輸出していくフェーズに入るでしょう。
たとえば以下のような展開が予想されます:
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グローバル査定基準の整備
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各国ユーザーに合わせた翻訳・対応型アプリの展開
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海外ユーザーへのダイレクト発送システムの構築
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ブランド企業との提携による認証付きリユース販売
まとめ:リユースの成熟度は、その国の文化と社会意識の鏡
リユース市場は単なる中古品の流通にとどまらず、サステナブルな社会づくりの要ともいえる重要な分野です。
そしてその在り方は、各国の価値観や生活様式に大きく影響されます。
日本の中古市場は、品質・信頼・サービスという点では世界屈指の水準を誇りますが、同時に「変化を受け入れる柔軟性」も今後は必要です。
海外市場との違いを理解しながら、互いに学び合うことで、より豊かで地球にやさしい循環型経済の実現が可能になるでしょう。
















