デジタル資産と実物資産：ブランド時計におけるNFTの活用 ｜ 函館山の手店

～高級時計に広がる“所有の証明”という新しい価値～

デジタル技術の進化により、「所有」の概念が大きく変わり始めています。
アート、音楽、ゲームなどの分野ではすでに、**NFT（Non-Fungible Token＝非代替性トークン）**が所有証明や希少性の証明手段として浸透しつつあります。

そして今、このNFTが高級腕時計という“実物資産”の世界にも応用され始めていることをご存知でしょうか。

ブランド時計の所有とNFTの融合は、従来の資産保有・売買・管理のあり方を大きく変えうる革新的な動きです。
本記事では、ブランド時計におけるNFT活用の現状と今後の可能性について、丁寧に解説していきます。

実物資産としてのブランド時計

まず、高級時計が“実物資産”として広く認知されている背景には、以下の要素があります。

• ロレックスやパテック フィリップなど、一部ブランドの人気モデルが値上がりしている

• 一定のブランド・モデルにおいては、中古市場でも高い流動性を持つ

• 状態や付属品が整っていれば、長期的に価値が下がりにくい

これらの理由から、高級時計は身につけて楽しめる投資資産として、多くの人に選ばれてきました。

しかし、その“価値”を証明・保証する手段――たとえば保証書、修理履歴、所有履歴などは、紙媒体やブランドごとの記録に依存しているのが実情です。

ここに、NFTを活用したデジタル証明の技術が加わることで、所有と流通の信頼性が大きく向上する可能性があります。

NFTとは何か？ブランド時計と相性の良い理由

NFTは、ブロックチェーン上に記録された**「唯一無二の所有情報」**です。
コピーできない、改ざんできない、譲渡・売買履歴がすべて透明に記録されるという特性があります。

この性質は、高級時計のように「希少性」「真贋性」「来歴」が重視される商品と極めて相性が良いのです。

たとえば：

• 時計の本体と1対1で紐づいたNFTを発行し、所有者を記録

• 過去のオーバーホール履歴、修理歴、所有履歴などをブロックチェーン上に保存

• 中古売買の際、NFTの移転＝所有権の移転として活用

こうした仕組みにより、時計の“デジタル証明書”としてのNFTが信頼性の高い資産管理ツールになると考えられています。

実際の導入事例とブランドの取り組み

● LVMH（ルイ・ヴィトン モエ ヘネシー）グループ

LVMHは、独自のブロックチェーンプラットフォーム「Aura」を立ち上げ、時計や宝飾品の来歴・真贋証明にNFTを活用しています。
タグ・ホイヤーやウブロといった時計ブランドにおいても、この技術の試験導入が進んでいます。

● ロジェ・デュブイ（Roger Dubuis）

ハイエンド時計ブランドのロジェ・デュブイは、NFTと連動した限定モデルをリリース。
オーナーはNFT所有者限定のサービスやイベントに参加できる仕組みも用意しており、デジタル資産と実物資産の融合による新たな体験価値を提供しています。

● ノンブランド市場・二次流通業者の導入

一部のリユース業者では、販売時計にNFTベースの真贋保証を添付するサービスを開始。
個人売買市場においても、ブロックチェーン上で記録された来歴があることで、取引の透明性が高まりやすくなっています。

NFT活用によって変わる「時計の売買と所有」

NFTによる時計の証明は、今後以下のような変化を生むと考えられます。

● 真贋確認がデジタル化

現在は専門家による目視・機材による真贋判定が一般的ですが、NFTによって“本物かどうか”をオンライン上で即時確認できる時代が到来しつつあります。

● 所有履歴＝価値の証明

これまで不透明になりがちだった「前のオーナーは誰か？」「どこで購入されたか？」という情報が、NFTによって透明に可視化されます。
これはコレクター市場やヴィンテージ市場で価値評価の新たな基準となる可能性があります。

● デジタル資産としての転用

NFTがあることで、時計そのものがデジタル資産化し、分割所有・レンタル・担保化といった新しい資産運用にも応用できる余地が出てきます。

現段階の課題と展望

もちろん、NFTによる資産管理には課題も存在します。

• 一般消費者への理解浸透が不十分

• デバイス・プラットフォームの互換性が不透明

• 本体との“物理的な結びつき”が不正に分離されるリスク

• 一部ではNFT市場そのものへの信頼性を懸念する声も

しかし、テクノロジーが進化し、各ブランドが共通基盤に取り組むことで、これらの課題は徐々に解消されていくと考えられます。
将来的には「NFT付きであること」が高級時計のスタンダードとなる可能性も十分にあります。

まとめ：時計の“証明”は、腕からクラウドへ

ブランド時計は、単に時間を知るための道具ではなく、所有することで得られる“体験”や“価値”そのものが本質となりつつあります。
NFTの技術は、その価値をより正確に、より安全に、そしてよりスマートに伝える新しい手段です。

物理とデジタル、リアルとバーチャルが交差する現代。
時計の価値は“腕に着けるもの”から、“ブロックチェーンに刻まれるもの”へと進化しようとしています。

所有の証明が変わる時、資産の考え方もまた新しい段階へ。
今、ブランド時計は未来の資産管理のあり方を象徴する存在になりつつあるのです。