カルティエとブルガリのデザイン哲学と時代の変化 | 函館山の手店
~“普遍”と“革新”が交差する、二大ジュエラーの美学~
ジュエリー界において、「カルティエ」と「ブルガリ」は世界的に知られる2大ラグジュアリーブランドです。
ともに長い歴史を持ち、王族やセレブリティに愛されてきた存在でありながら、そのデザイン哲学と時代への対応力には明確な違いがあります。
一方は「伝統と普遍性」、もう一方は「大胆な創造性と進化」。
本記事では、カルティエとブルガリそれぞれのデザイン思想とその変遷、そして時代と共に変わるラグジュアリーの在り方について考察します。
カルティエ:エレガンスと精密さの融合
● メゾンの歴史と哲学
1847年、フランス・パリで創業されたカルティエは、王族御用達の宝飾商としてその名を馳せ、「王の宝石商、宝石商の王」と称されました。
その根底にあるのは、対称性・幾何学性・普遍的な美の追求です。
たとえば、「パンテール(豹)」「トリニティ」「ラブブレス」といったシリーズは、時代が変わっても色褪せない洗練されたラインとストーリー性で高い評価を受け続けています。
● アイコニックなデザインの特徴
カルティエのデザインは、**ミニマルでありながら品格を宿す“構築美”**にあります。
-
ラブブレスのネジモチーフに象徴される工学的美学
-
トリニティの3色の輪が示す哲学的象徴
-
パンテールのしなやかなフォルムに表れる生命感と優雅さ
このように、カルティエは「控えめな主張」と「永続的な美」を両立させることで、世代を超えて受け継がれるラグジュアリーを体現しています。
ブルガリ:色彩と曲線の革新
● イタリアの情熱と創造性
1884年、ギリシャ系の銀細工師ソティリオ・ブルガリによってローマで創設されたブルガリは、イタリアならではの情熱的で官能的な美意識をもとに、ジュエリーの世界に新しい表現をもたらしました。
20世紀半ば以降、ブルガリは「大胆な色彩」「彫刻的フォルム」「アールデコとバロックの融合」といったデザインで一躍有名になります。
● 独創的なデザインの特徴
ブルガリの作品は、直線よりも曲線、沈黙よりも語りかける力強さが印象的です。
-
セルペンティ(蛇)を象徴とした女性性と変容のモチーフ
-
カラーストーンを大胆に配したカボションカットのリングやネックレス
-
ロゴや文字をあえて前面に出す主張型デザイン
それらは「ただの宝飾品」ではなく、“視線を奪う芸術作品”としてのジュエリーを意識したアプローチです。
時代の変化とそれぞれの進化
● カルティエの変化:伝統の中の革新
カルティエは、伝統を守りながらも技術革新を取り入れる柔軟性を持っています。
-
パンテールシリーズの素材展開(ブラックラッカーやホワイトゴールド)
-
男女を問わないユニセックスなデザインの増加
-
サステナビリティを意識した素材調達と製造
ブランドの美学は変えずに、現代性を静かに取り入れるアプローチがカルティエらしさです。
● ブルガリの変化:拡張と挑戦
ブルガリは、大胆なスタイルで時代の空気を取り込みながら、自らの境界線を押し広げてきました。
-
ハイジュエリーとファッション性の融合
-
建築、時計、ホテルなど多分野への展開
-
近年は環境配慮型素材やカーボン素材を用いたスポーツウォッチも登場
常に「新しさ」と「存在感」を求めるブルガリの姿勢は、トレンドに敏感なグローバル層の心をつかみ続けています。
選ばれる理由の違い:静かなる威厳 vs 鮮烈な個性
ブランドジュエリーを選ぶ際、単に「価格」や「知名度」では測れない**“共鳴する価値観”**が重要です。
-
カルティエは、控えめな中にも品格を求める人に選ばれる。
-
ブルガリは、自分らしさやインパクトを重視する人に愛される。
どちらもラグジュアリーでありながら、その見せ方、語り方、身に着け方は全く異なります。
それはまさに、個性を尊重する現代の多様性社会における、理想的な対比なのかもしれません。
まとめ:ラグジュアリーは、時代と共に生きている
カルティエとブルガリは、それぞれの伝統と哲学を守りながら、時代の美意識に応じた進化を遂げてきました。
ひとつは“永遠に洗練された佇まい”、もうひとつは“記憶に残る創造性”。
いずれも、単なる装飾品を超えた文化と思想の表現として、今日まで多くの人々を魅了しています。
ラグジュアリーとは、単なる高級品ではなく、自分の価値観を形にした選択。
あなたが今、惹かれるのは「カルティエの静けさ」か、それとも「ブルガリの情熱」か――
その選択の先にあるのは、モノ以上の“意味”かもしれません。
















