アパレル廃棄問題とリユースビジネスの社会的意義 | 函館山の手店
―ファッション業界が抱える課題と循環型社会への鍵―
「安くてオシャレな服を、いつでも手に入れられる」――。
ファストファッションの登場により、私たちの消費スタイルは大きく変化しました。しかしその裏では、大量生産・大量廃棄という深刻な課題が静かに進行しています。
世界中で毎年何十億枚という衣類が捨てられ、日本国内でも年間約50万トンもの衣類が廃棄されている現実をご存じでしょうか。
この“ファッションロス”は、環境への負荷だけでなく、産業構造全体の持続可能性に疑問を投げかけています。
そこで注目されているのが、「リユース(再利用)」という選択肢です。
本記事では、アパレル廃棄問題の背景と、リユースビジネスが持つ社会的意義・経済的ポテンシャルについて考察します。
アパレル廃棄の現状:見えないコストの増大
衣類の廃棄は、単に“いらない服を捨てる”という行為にとどまりません。
製造から廃棄に至るまでの工程には、水・エネルギー・化学薬品・人件費など、あらゆる資源が使われています。
たとえば1枚のTシャツを作るのに必要な水の量は約2700リットル。
ジーンズ1本に至っては、約1万リットル以上の水と大量の染料が必要とされています。これらが毎年何十億点規模で消費され、廃棄されているのです。
廃棄方法も問題です。多くの衣類は焼却処分されており、CO₂排出や有害物質の発生など、環境負荷を一層深刻にしています。
廃棄の背景:ファッションの「高速回転化」
衣類がこれほどまでに捨てられる理由の一つが、「トレンドの短命化」です。
SNSの普及やマイクロトレンドの流行によって、消費者のファッションサイクルは短くなり、1シーズンで役目を終える服が激増しています。
また、低価格化によって「使い捨て感覚」が広がったことも、廃棄増加に拍車をかけています。
こうした状況下で、製造者・販売者・消費者のいずれもが**「持続可能なファッション」への視点を持たなければ、環境への悪影響は加速**していくばかりです。
リユースビジネスが果たす社会的役割
こうした課題に対する有効な手段として、中古衣料を中心としたリユースビジネスが注目されています。
「もう着ない」「飽きた」と思うアイテムを、次の誰かに循環させる仕組みは、廃棄量の削減だけでなく、消費意識の変革にもつながります。
1. 環境への直接的貢献
リユースは、廃棄を防ぐだけでなく、新たな衣類の生産需要も抑制します。
たとえば中古Tシャツ1枚を再利用すれば、前述の2700リットルの水使用を回避できる計算になります。
これは、SDGsの「12.つくる責任・つかう責任」にも直結する行動です。
2. 雇用と地域経済の創出
リユースビジネスは、多くの作業工程(査定、検品、クリーニング、撮影、販売など)を必要とし、人の手が活きる産業でもあります。
また、地方の小規模事業者や地域型リユースショップにとっても、安定したビジネスモデルになり得るため、地域経済活性化にも貢献します。
3. 消費者の意識改革
「中古=汚い・ダサい」という偏見も徐々に薄れつつあり、特にZ世代を中心に、“リユースは賢い選択”という認識が広がっています。
これは新たなライフスタイルの提示であり、「循環型文化」の醸成につながる重要なステップです。
アパレル企業の変化と連携の重要性
最近ではアパレル企業自身も、中古販売やリペア事業に乗り出すケースが増えています。
ユニクロの「RE.UNIQLO」、パタゴニアの「Worn Wear」など、ブランド主導のサステナブル施策が世界的に展開されており、リユース市場との境界が薄れてきました。
今後は、リユース業界とアパレル企業が連携し、製品の再流通までを視野に入れた商品設計や、エコインセンティブを組み合わせた販売戦略が求められるでしょう。
まとめ:未来のファッションは「循環」が前提になる
アパレル廃棄問題は、単なる業界の課題ではなく、私たち一人ひとりのライフスタイルと直結した社会課題です。
しかし、リユースという仕組みを通じて、環境・経済・文化すべての側面からポジティブな影響を生み出すことが可能です。
ファッションが持つ「自己表現」と「創造性」の力を、より持続可能な未来へつなげていくために、
いま私たちに求められているのは、“買う”だけでなく“循環させる”という新たな選択肢を受け入れることかもしれません。
















