中古ハイブランド市場の拡大とZ世代の価値観の変化 ｜ 函館山の手店

～「新しさ」より「意味」や「持続性」を重視する時代へ～

かつて「中古＝安価で妥協した選択」とされていた時代は終わりを迎えつつあります。
今、中古のハイブランド市場がかつてないほどの盛り上がりを見せています。特にこの潮流を後押ししているのが、**1990年代後半から2010年代前半に生まれた「Z世代」**です。

高級ブランドは「新品を手に入れるもの」から、「価値ある物を賢く選ぶもの」へ。
Z世代の消費行動には、これまでの世代にはなかった価値観が垣間見えます。

本記事では、中古ハイブランド市場がなぜ拡大しているのか、そしてその背景にあるZ世代の消費価値観の変化について、社会的・経済的観点から考察していきます。

中古ハイブランド市場が拡大している理由

① 新品価格の高騰

近年、多くのハイブランドが毎年のように値上げを続けています。
たとえばルイ・ヴィトン、シャネル、エルメスなどは、原材料費の高騰や為替変動を背景に、定番商品の価格を大幅に引き上げており、新品での購入ハードルは確実に高まっています。

これにより、「新品には手が届かないが、同じブランドの価値を体験したい」というニーズが、自然と中古市場へと流れているのです。

② リユースへの抵抗感の薄れ

中古市場の拡大に伴い、専門店やプラットフォームの品質管理が高度化し、安心して購入できる環境が整ってきたことも市場成長の要因です。

また、Z世代を中心に「中古はダサい」という固定観念が薄れ、むしろ「古いからこそ価値がある」「環境にもやさしい賢い選択」とする考え方が広がっています。

Z世代の価値観が中古市場を後押ししている

Z世代は、デジタルネイティブかつサステナビリティ意識の高い世代です。
その価値観には、以下のような特徴が見られます。

● 新品志向より「ストーリー」重視

Z世代は、「新品であること」にこだわりません。
それよりも「なぜそれを選んだか」「どんな背景があるのか」といったストーリー性に価値を見出す傾向があります。

ヴィンテージのシャネルや90年代のグッチを身につけることは、単なるファッションではなく、「自分らしさ」や「カルチャーへの共感」を表現する行為となっているのです。

● サステナブルな選択を重視

ファッション業界が環境負荷の高い産業であることを理解しているZ世代は、大量生産・大量消費から距離を置く行動を選ぶことが多くなっています。

新品を作るよりも、既存の資源を再活用すること。中古を選ぶことは、自分の美意識と社会的責任を両立できる手段とされています。

● デジタルで“買う”ことに慣れている

Z世代は、ECサイトやフリマアプリ（例：メルカリ、ラクマ、StockX、Vestiaire Collectiveなど）を通じて、中古品をオンラインで購入・販売することに抵抗がありません。

そのため、リユース市場の敷居が極めて低く、スマートに価値あるモノを見つけては売買する「モノの循環」を日常的に行っています。

ハイブランド側の姿勢も変化している

ハイブランド各社も、こうした価値観の変化に対応する動きを見せています。

● ブランド公式の認定中古・修復サービスの提供

シャネルやグッチは公式でヴィンテージ商品の再販売や修理対応を進めており、「一度買ったら終わり」ではなく、「永く大切に使う」選択肢を提供し始めています。

● サステナブルコレクションの展開

新作コレクションにおいても、リサイクル素材を使った製品や、環境配慮型の包装・製造工程を導入するなど、環境負荷を減らす試みが進んでいます。

ブランド自体が「持続可能性」に正面から向き合うことで、中古市場やサステナブルファッションへの消費者の信頼も高まっています。

中古ハイブランド市場のこれから

Z世代の価値観と経済性のバランスにより、中古ハイブランド市場は今後も成長を続けると見られています。

• ヴィンテージアイテムの価格高騰（特にシャネル・エルメスなど）

• 新品の代替ではなく“選ばれた美意識”としての中古購入

• デジタル×リアルを融合した中古販売体験（例：AR試着、リアルポップアップストア）

これらの動きは、単なるトレンドではなく、新たな消費文化の確立へと進化していくでしょう。

まとめ：「新しさ」より「意味」あるものを選ぶ時代

Z世代が中心となって拡大している中古ハイブランド市場。
それは、経済的な理由だけでなく、「意味のある選択」を重視する消費者心理の変化を映し出しています。

ファッションを通して「自分らしさ」「環境への配慮」「社会との調和」を表現する――
そんな新しいスタイルの中で、中古という選択肢は、今や“賢く、美しく、価値ある”行動として受け入れられているのです。

「古い＝価値が下がる」ではなく、「古い＝物語と魅力が増す」。
中古ハイブランド市場の広がりは、私たち一人ひとりがどのように価値を見つけ、どう暮らすかを見直すきっかけにもなっているのかもしれません。