お弁当屋を開業したい!初期費用の相場や集め方と必要資格や開業までの流れを紹介

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お弁当屋を開業したい!初期費用の相場や集め方、必要資格と開業までの流れを紹介

近年、テイクアウトやデリバリーの需要が拡大したことで弁当屋への参入を検討している方もいるでしょう。

しかし、実際に開業する際には、どのように進めればよいのかわからず、悩むことも多いかもしれません。例えば、実店舗での開業を目指す場合と、テイクアウト専門店やキッチンカーで開業を目指す場合では、初期費用は大きく異なります。

そこで今回は、弁当屋を開業する際にかかる業態別の初期費用や相場、資金調達方法、そして開業に必要な資格について詳しく解説します。

お弁当屋の開業は市場から見てもおすすめ!

弁当屋の開業は、市場の観点からも非常におすすめです。コロナ禍を経て、弁当を含む中食(惣菜)市場は急速に拡大しています。

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出典:(一社)日本惣菜協会「惣菜白書」より(2025年1月10日に利用)

「2024年 版惣菜白書 惣菜市場動向」によると、中食(惣菜)市場規模は2021年から2023年にかけて順調に成長しており、市場の拡大が明確に示されています。

このため、中食業界は今後も需要が拡大することが予想されます。市場規模も大きいため、適切な戦略を取れば、弁当屋は成功する可能性が十分にあるビジネスモデルと言えるでしょう。

お弁当屋の業態と初期費用

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弁当屋の業態ごとの開業にかかる初期費用は以下のとおりです。

・店舗販売の初期費用:600万円~1,200万円

・宅配専門の初期費用:100万円~

・キッチンカー(移動販売)の初期費用:200万円~300万円

これらの初期費用には、業態ごとに異なる費用も含まれています。具体的な内訳については、以下のように解説します。

店舗販売の初期費用:600万円~1,200万円

店舗型の弁当屋の初期費用は、一般的に600万円~1,200万円ほど必要であるとされています。

この初期費用には、家賃、内装、厨房設備、初期在庫、人件費などが含まれます。

また、実店舗の場合、顧客が直接訪れて購入するため、立地条件が成功のカギとなります。街の中心部やオフィス街、住宅地の近くなど、人通りの多い場所を選ぶことが一般的です。

そのため、ほかの業態と比べて初期費用は高くなりがちですが、地域や店舗の規模、内装の豪華さなどによっても大きく変動します。したがって、個々のビジネスプランに合わせた資金計画を立てることが重要です。

宅配専門の初期費用:100万円~

最も初期費用を安く抑えられるのは、無店舗型のデリバリー専門店の弁当屋です。

この場合、初期費用としてクラウドキッチンの契約やスタッフの雇用に必要な資金は100万円程度と見込んでおくとよいでしょう。自宅のキッチンを使って始める場合、さらに費用を抑えることができます。

この運営スタイルは、ゴーストレストラン(バーチャルレストラン)と呼ばれ、Uber Eatsや出前館などのオンラインプラットフォームを通じて配達を行います。そのため、自前の車で配達する必要がなく、配達員を通じて顧客に弁当を届けるため、直接顧客と対面することもありません。

キッチンカー(移動販売)の初期費用:200万円~300万円

キッチンカーの購入やカスタマイズにかかる費用は、新車の場合で約300万円から、中古車の場合は約200万円からが目安です。これらの価格はトラックの大きさや仕様によって異なります。

また、運営には原材料費やガソリン代、イベントへの出店料などもかかるため、それらの費用も考慮する必要があります。キッチンカーは移動販売型の店舗であり、場所を選ばず営業できるという自由度の高さが魅力です。

一般的には、イベント会場や公園、駅前など、人通りの多い場所を選んで販売を行うことが多いです。

お弁当屋の開業資金はどう集める?

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弁当屋の開業資金は、主に以下の3つの方法で調達できます。

・日本政策金融公庫

・制度融資(あっせん制度)

・補助金・助成金の活用

特に店舗型の弁当屋の場合、一定の資金が必要となるため、融資や補助金、助成金を利用することが現実的な選択肢と言えるでしょう。

そこで、今回はこれら3つの資金調達方法に加え、事業計画書の作成や面談の準備についても詳しく解説します。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫では、個人、企業、農業などさまざまな融資制度を提供しています。

特に新規開業資金に関しては、最大7,200万円までの融資が可能です。

この融資は、女性、若者、シニア層や廃業歴がある方など、創業や再チャレンジを目指す方々を対象にしています。また、中小企業者向けの会計制度を適用することもできます。さらに、日本政策金融公庫が提供するほかの制度と併用することで、金利を引き下げることも可能です。

融資を受けるには、事業計画書の提出と担当者との面談を経て審査を受ける必要があります。融資を検討する際は、まず日本政策金融公庫のWebサイトを確認することをおすすめします。

制度融資(あっせん制度)

制度融資とは、各自治体が信用保証協会や金融機関と連携して実施している融資制度で、自治体内に事業所を構える事業者が融資を受けやすくなることを目的とした支援策です。

自治体ごとに制度融資の内容は異なるため、開業予定の自治体でどのような制度融資を利用できるか確認することをおすすめします。自治体の窓口で詳細を問い合わせるとよいでしょう。

補助金・助成金の活用

国や地方自治体は、起業や事業の拡大を支援するために、補助金や助成金を提供しています。これらは返済が不要で、融資とは異なります。弁当屋の開業に直接関係する補助金に加え、IT導入補助金のように、ITサービスやソフトウェアの導入を支援する補助金もあります。

インターネットで制度を調べるとともに、開業予定の自治体や商工会議所などに、弁当屋の開業に利用できる補助金や助成金制度について問い合わせてみるとよいでしょう。

事業計画書と面談の対策

ここで紹介した融資や助成金・補助金のほかにもさまざまな支援策がありますが、ほとんどの場合、事業計画書の提出と面談が必要になります。

事業計画書は、事業の計画や戦略を詳細に記載した文書です。収支計画、資金繰り、ビジネスモデルの強みなどが、第三者の視点でも理解しやすく、再現性があり、魅力的な事業として映ることが重要です。

面談では、資料を基に担当者へしっかりと説明し、質問は正確に答え、納得してもらうことが求められます。

そのため、融資や助成金・補助金を受ける際には、税理士などの専門家に相談し、十分な準備をした上で面談に臨むことが重要です。

お弁当屋の開業に必要な資格・届出

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弁当屋の開業には、以下の2つの資格・届出が必要です。

・食品衛生責任者

・飲食店営業許可

また、調理師免許について心配される方もいますが、開業には不要です。ただし、業態によってはそのほかの届出が必要となる場合や注意しなければならないポイントもあるため、ここではそれらについても詳しく解説します。

食品衛生責任者

弁当屋を開業する際には、1店舗につき1人以上の食品衛生責任者を在籍させる必要があります。

食品衛生責任者の資格は、都道府県が主催する講習または、都道府県知事が認める約6時間の講習を受けることで取得できます。また、栄養士、調理師、医師などの特定の資格を持っている方は、講習を免除されます。

さらに、東京都のようにeラーニング型講習会を提供している自治体では、会場で講習を受けて資格を取得するほか、オンラインで食品衛生責任者の資格を取得することも可能です。

飲食店営業許可

弁当屋を開業するには、保健所に食品衛生関係の許可を申請する必要があります。

宅配専門店、ゴーストレストラン、キッチンカーなど、店舗を構えないスタイルであっても、飲食店の営業や食品の製造・販売を行う場合は、食品衛生法に基づく営業許可を受ける必要があります。

営業許可を取得するためには、施設基準に合致するように施設を整えることが求められます。まずは、保健所に事前相談を行い、申請書類を準備します。その後、衛生面や設備に関する検査を受けることになります。

調理師免許は不要

弁当屋の開業において、調理師免許は必須ではありません。

料理をするため、調理師免許が必要になるだろうと考える方も多いかもしれませんが、飲食店を開業するために調理師免許は必須ではありません。ただし、ふぐを調理する際には、ふぐ調理師免許が必要となります。また、調理師免許を持っていると、国家資格として店舗の信頼度が高くなるというメリットもあります。

業態ごとに必要な届出や注意点

弁当屋を開業するにあたって、業態ごとの資格や届出の注意点を把握しておくことが重要です。

特に宅配専門店やゴーストレストランを運営する場合、物件費用を抑えるために自宅での営業を検討する方もいるかもしれません。

しかし、一般的な住宅では営業許可が下りにくいため、リフォームが必要となる場合があります。生活環境とのバランスやリフォーム費用を考慮し、もし難しい場合は、クラウドキッチンの契約など、ほかの営業場所を検討しましょう。

一方、キッチンカーで営業する場合、調理場と運転席の分離や給水・排水タンクの容量など、飲食店営業許可の審査項目が異なります。営業許可証を申請する保健所にあらかじめ審査項目について確認しておくと安心です。

また、キッチンカーを道路上で営業する場合は、管轄の警察署から道路使用許可を得る必要があります。

お弁当屋を開業するまでの流れ

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弁当屋を開業するまでの流れは以下の6つのステップになります。

・コンセプトの決定

・物件の選定

・資金調達

・外装・内装・設備の工事を行う

・調理機器などをそろえる

・営業許可申請

これらの手順で順番に進めていくことで、弁当屋をスムーズに開業することができます。

ここでは、それぞれのステップについて詳しく解説します。

①コンセプト決定

弁当屋に限らず、店舗の象徴となるコンセプトを決めることは非常に重要です。

まず、ターゲット市場を特定し、提供する食品の種類や価格帯、独自性や特徴を明確にします。例えば、健康志向の弁当、ハンバーガーやポテトなどのジャンクフード、こだわりの食材を活かしたメニューなど、自分の情熱や市場のニーズに合ったコンセプトを考えましょう。

また、この段階で食品衛生責任者をはじめ、事業運営に必要な資格の取得に着手することも大切です。

②物件の選定

店舗型、移動販売型、無店舗型(デリバリー専門型)など、営業スタイルに応じて最適な物件を選ぶことが重要です。

まず、店舗型の場合、立地が成功のカギとなります。人通りが多く、ターゲットとなる顧客が頻繁に訪れる場所を選ぶことがポイントです。移動販売型の場合、車両の購入や駐車場の確保、厨房設備の整備が必要となります。これらを考慮し、営業に適した場所を選ぶことが大切です。

無店舗型の場合、自宅で調理するのか、厨房を借りるのかなどによって、必要になる物件が大きく異なります。この営業スタイルは売上が立地に左右されにくいため、厨房や駐車場を借りる場合は、賃料が安い郊外などを選ぶとよいでしょう。

どの営業スタイルにおいても、将来の拡張計画も考慮し、最適な物件を決めることが求められます。

③資金調達

事業プランを綿密に練り、開業資金を調達することが重要です。

資金調達の方法にはさまざまな選択肢があります。自己資金、家族や友人からの融資、銀行ローン、政府の補助金や助成金、最近ではクラウドファンディングなどもあります。

また、補助金や助成金、創業融資を利用する場合、事業計画書や面談が求められることがあります。他人が納得できるような事業計画書とプレゼンテーションが必要ですが、これらが通ると低金利や無金利で資金調達ができます。

このように、正確な予算計画を立て、予想外の出費にも対応できるよう余裕を持った資金計画を立てることが重要です。

④外装・内装・設備の工事を行う

店のブランドイメージに合った外装・内装のデザインを行い、厨房設備を含む、必要な設備の導入を進めます。

効率的な作業フローと顧客の快適性を考慮した店舗レイアウトが重要です。

デザインにこだわりたい場合、予算が高額になる可能性がありますが、デザイン・設計会社に相談するとよいでしょう。一方、予算をできるだけ抑えたい場合は、設備が揃っている物件を活用し、施工会社に相談することをおすすめします。

⑤調理機器などをそろえる

弁当屋の運営において、調理器具、暖房機器、包装材、食器など、必要な機器や備品をそろえましょう。

コストパフォーマンスも重要ですが、品質や耐久性なども考慮し、ビジネスのニーズに合った製品を選ぶことが大切です。また、近年ではキャッシュレス決済が一般的になっています。顧客の利便性を高めるためにも、電子決済システムなどのデジタルツールを導入することも検討してみるとよいでしょう。

⑥営業許可申請

弁当屋として営業するためには、管轄の保健所から飲食店営業許可を取得する必要があります。

先の「弁当屋の開業に必要な資格・届出」に記載のとおり、食品衛生責任者の資格取得と飲食店営業許可の届出が必要です。申請に必要な書類を早めに準備しておくと、手続きがスムーズに進むため、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。

お弁当屋を開業してから繁盛させるためのコツ

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弁当屋を開業してから繁盛させるコツとして、以下の3つが挙げられます。

・独自のメニュー・コンセプト

・立地選びは慎重に

・事前注文を活用

ここでは、これら3つのコツについて詳しく解説します。

独自のメニュー・コンセプト

弁当屋において、独自のメニューやコンセプトを考案することは非常に重要です。

コンビニやスーパーなど、弁当を購入できる場所は多く、他店と似たような商品であれば、顧客は安い場所や近い場所で購入します。自店舗を選んでもらうためには、他店とは一線を画す独自のコンセプトが必要となります。

例えば、地元の新鮮な食材を使用した弁当や、健康志向の弁当など、ターゲットを明確にし、顧客にとって魅力的なメニューを提供することが大切です。

立地選びは慎重に

特に実店舗で運営する場合、立地条件は非常に重要なポイントです。

通勤通学の経路上やオフィス街、商業施設の近くなど、ターゲットとなる顧客が多く通る場所を選ぶことが大切です。こうした場所は、顧客の利便性を高め、集客効果も期待できます。一方で、顧客が少ない場所を選ぶと、集客が難しくなり、失敗のリスクが増えるため、立地選びは慎重に行いましょう。

事前注文を活用

事前注文システムを活用することは、顧客の利便性を高めるだけでなく、運営にも多くのメリットをもたらします。

顧客にとっては、好きな時間に注文でき、事前決済でスムーズに商品を受け取れるため、非常に便利です。また、予約制を導入すれば、作りすぎや商品の売り切れを防ぐことができるため、効率的な在庫管理が可能になります。

さらに、近年問題となっているフードロスの削減にもつなげることができます。

まとめ

今回は弁当屋の開業についてご紹介しました。

宅配専門店やキッチンカーであれば、初期費用を大幅に抑えることができます。また、実店舗を開設する場合でも、融資や補助金・助成金を活用することで開業が可能です。

必要な資格も、1日の講習で取得できる食品衛生責任者と、保健所に申請する飲食店営業許可のみです。

しかし、最も重要なのは開業後の運営です。

綿密な資金計画を立てることはもちろん、立地選びやターゲットに合わせた独自商品の提供が、店舗運営の成功に欠かせません。特に個人経営や小さな店舗であれば、自由に決定できるため、大手にはない独自の切り口で差別化を図ることができます。

弁当屋の開業を検討している方は、これらのポイントをしっかりと押さえ、準備を整えた上で開業に臨みましょう。

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