なぜエルメスはバッグで有名なのか
バーキンやケリーなど、エルメスは最高級のバッグをつくることで知られています。そんなエルメスは1837年にティエリ・エルメスによってパリに創業した高級馬具工房が原点となったブランドです。創業後まもなく産業革命によって人々の生活が一変する中で、馬具製造技術を応用したノウハウによってオータクロアやボリードなどの旅行鞄を世に送り出しました。ちなみにオータクロアはもともと鞍や乗馬ブーツを収納するための鞄でしたが、たくさんのものをスマートに持ち歩けると、旅行鞄としても人気を博しました。また、エルメス5代目社長ジャン=ルイ・デュマは、このオータクロアをベースにバーキンをデザインしました。そのような馬具造りに根差した職人魂は今日に至るまで脈々と受け継がれており、エルメスの皮革職人見習いは、一人で鞍を造りあげられるようになって初めて一人前として認められます。
また、エルメスは最高級の皮革素材を使用しており、一切妥協を許さないことでも知られております。そんなエルメスは傘下に原皮を素材用皮革に加工する専門の子会社を有しており、例えば鞣し加工を行うタンナーにはデュピュイ社やアノネイ社などの超一流タンナーも傘下に抱えています。
エルメスには実に多様な革素材がある
牛革
エルメスの皮革素材の中でも中核をなすのが牛革素材です。牛革素材は大きくスムースレザーとグレインレザーに大別できます。スムースレザーはその名のとおり、型押しのない肌理滑らかな革素材で、上品で高級感ただよう風格が特徴的です。ボックスカーフやヴォーシャモニーなどの素材が代表的です。一方、グレインレザーは型押し、シュリンクなどと呼ばれる加工を施したレザーのことで、表面に型押し模様(シボとも呼ばれる)があるのが特徴的です。この型押しによって傷に強くなるというメリットがあり、エルメスではトゴやエプソン、トリヨンクレマンスなどが有名です。ヴォースイフトは非常に細かな型押しが施されていますが、スムースレザーのようなしなやかさを備えており、強いて言えば、スムースレザーのしなやかさをもつグレインレザーといったところでしょうか。
水牛(ブッフル)
バッファローの革は一般的に牛革よりも厚みがあり強度のある素材と言われます。そのため、エルメスでも日常使いに向くタフなモデルのバーキンやガーデンパーティなどでよく使われる素材です。
山羊(シェーブル)
山羊革は牛革にくらべよりきめ細かで柔らかく、軽量です。個体が小さく採れる皮も少ないため希少性が高く、バッグでは25サイズ以下の小さいサイズものもであったり、財布などの革小物に用いられます。
エキゾチックレザー
非常に希少価値の高いクロコダイルやリザード、オーストリッチやエミューなどもエルメスは非常に上質なもののみを使用しており、鱗の均一性や傷がない稀有な美しさを誇ります。一方で、動物愛護の観点からエキゾチックレザーやファー素材をなるべく使わないという世界的気運が高まっており、バーキンが誕生するきっかけとなったフランスの国民的女優ジェーン・バーキンが「クロコダイル製バーキンに自分の名を使わないでほしい」と発言し注目を集めました。エルメスではクロコダイルをはじめとする原皮のサプライヤーに厳格な倫理基準を課して責任ある皮革の取扱に努めているようです。
ヴォースイフトの魅力
優れた発色性
ヴォースイフトは「クロム鞣し」と呼ばれる方法でなめされた牛革素材です。「クロム鞣し」は塩基性硫酸クロムという薬品を用いて原皮を鞣す方法で、しなやかな伸縮性を革にもたらす上に、鮮やかな発色の皮革素材をつくることができます。そのため、ヴォースイフトはブラックはもちろん、クリーム系やピンク系のニュートラルな色合いから、鮮やかなブルーや深みのある赤系まで多種多様なカラーバリエーションを誇ります。
肌触りがよく使いやすい質感
また、クロム鞣しはしなやかで柔らかい質感をもたらすというメリットもあります。ヴォースイフトは、数あるエルメスの牛革素材の中でも、しなやかさと弾力性に富む素材として知られます。マットで落ち着きのある表情は控えめなエレガンスを備えます。細かな型押しが施されているため、ボックスカーフなどのまっさらなスムースレザーよりは傷への耐性があり、使い込むほどに手に馴染む質感は毎日使いたくなる使い心地です。
まとめ
エルメスの革素材の魅力を紹介しました。とくにヴォースイフトはしなやかでエレガント、日常使いもしやすい素材として、人気の高いレザー素材の一つです。素材はやはり実際に手に取ってみないと体感できないものなので、もし気になった方はぜひエルメスの実店舗やエルメス取扱店で素材の違いを確かめてみてください!