牛革の種類
●トゴ
トゴは、1997年に登場しました。バーキンの数ある素材の中で最もポピュラーなのがこの素材です。雄の子牛革を使った素材で、正式名称を「ヴォー・クリスペ・トゴ」と言います。斑が深く革の風合いがそのままの状態で活かされているのが特徴で、程よい柔らかさとキズや擦れなどに対する耐性の高さから抜群の人気を集める素材で細かくて丸みのあるグレインが特徴です。製品によっては、筋や皺が目立つものも多く、個性がある素材となっています。1997年の年間テーマ『アフリカ』の時に誕生した素材なので、アフリカの国家の名前が付けられています。
●トリヨン・クレマンス
トリヨン・クレマンスは、1992年に登場しました。使えば使うほど柔らかさの増す素材です。かつては「ムー」と呼ばれていた素材のひとつです。適度な張りと柔らかい質感が特徴の雄成牛の革を使っていて、バーキンをはじめとするバッグはもちろん小物など幅広いアイテムで展開されています。斑の大きさも程よく、キズや擦れにも強いため、デイリーユースとしてもぴったりです。
●ヴォーエプソン
雄の子牛革を使用した素材「クシュベル」が廃番となった後、2003年に登場した素材です。エルメスを代表する人気素材でもあります。規則的なプリント加工で規則的なグレインは、型崩れしにくい、傷に強い素材です。細かい型押しがプレス加工によって施されているのが特徴で、硬い質感でカチッとした印象でありながら、軽量で持ち歩きしやすく、家宅連れもほとんどありません。また、キズや擦れはもちろん水濡れにも強いため、普段使いしやすい素材として人気です。
●グランアッシュ
2012年に登場した雄子牛の革を使った素材で、整列された細かな型押しがプレス加工によって施されているのが特徴です。
●スウィフト
初登場は2004年になります。とても柔らかく洗練された革で目に見えないほどのグレインで発色のよい素材です。繊細な印象があり柔らかいため、少し傷がつきやすい素材ですが、非常に発色が良い素材です。ガリバー旅行記の著者“ジョナサン・スウィフト”から名付けられた革です。
●ヴォースウィフト
オスの子牛を使用した革で、特殊な機械でなめしたキメの細やかな革目が特徴です。ヴォーガリバーの後継として登場しました。柔らかいながらも程良い弾力があり、小さなキズであれば、お手入れなどで目立たなくすることが可能です。また、発色の鮮やかさも魅力です。
●エバー・グレイン
エバー・グレインは2004年に登場しました。ほぼ見えないくらい繊細で細かく浅く、規則正しいグレインが特徴です。質感も良く、女性らしい素材です。
●ヴォーバレニア
オスの子牛を使ったスムースレザーがこのヴォーバレニアです。最初はマットな質感ですが、使い込むほどに革の油分で艶やかな光沢が出てくるようになります。比較的防水性も高い素材です。ただし、傷には注意が必要です。
●クシュベル
オスの子牛革から作れる素材で、光沢のあるガラス加工が施されていました。傷や擦れに強く、防水性もあるため、大変扱いやすく人気の素材でしたが、現在は廃版となっているため、手に入れるには中古を探すしかありません。
●アルデンヌ
フランス北部からベルギー南部に位置するアルデンヌ地方のメス牛の革を使った素材です。プレス加工を施して、つぶしの効いた型押し模様が特徴的です。現在は既に廃版で2004年に登場したヴァッシュリエジェ(こちらも廃版)に後継されました。
●ボックスカーフ
生後6ヶ月までのオスの子牛の革を指します。液体に浸け込むなめし時間が短めで、しっかりとした硬さ、上質な質感と艶やかな光沢があります。また、一定方向へと流れる繊細なシワ模様「水シボ」が特徴的です。1890年代のイギリスの靴屋、ジョセフ・ボックスの名に由来しています。
●ネゴンダ
2007年から登場したオスの仔牛を使った革です。主にガーデンパーティーに使われることが多いようです。キャンバス素材だとカジュアルな印象になりがちですが、オールレザーのネゴンダは上質な印象と女性らしい印象になります。
柔らかな質感を持つ素材で、色も柔らかで明るさのある染まり方になりやすいのが特徴です。目は大きく、血筋などが目立つ特徴的な革です。柔らかいと聞くと型崩れしやすいのでは?と思うかもしれませんが、形はしっかりと保たれています。触り心地はサラサラとしており、マットな質感なので、同色でもトーンが明るく見えます。
●エバーカラー
エバーカラーは、2013年から使われるようになった素材です。財布などの小物でメインに使われる素材です。
その他、現行では2011年登場のソンブレロ、タデラクト、ヴォーデルマ、ヴォーシャモニー、廃版ではヴォーグレネ(Veau Graine)、リセ(Lisse)などがあります。牛革ひとつとっても、表面の革目の具合、艶感や光沢、柔軟性、耐久性、防水性、経年変化など、それぞれに違う個性があります。持つバッグの種類や使うシーン、合わせる色などで選択肢が多いのも、エルメスが選ばれ続ける所以なのかもしれません。
牛革のお手入れ
牛革(カウレザー)はじめ、本革全般の弱点は水です。濡れたまま置いておくと、そのままシミになったり変色したりしてしまいます。牛革(カウレザー)製品を買ったらしっかり防水スプレーをかけてガードしましょう。念のため、まずは目立たない箇所で試すことをおすすめします。また、タンニンなめしの革では、シミや変色を起こす可能性があるため、注意が必要です。
●ブラッシング
毎日使う革製品の表面には、意外にチリやほこりが付着しています。まずはそれらをブラシで軽く払い落とします。ブラシにはさまざまな種類がありますが、ほこり落としにおすすめなのが馬毛のブラシです。毛足が長くコシのある馬の毛(基本的にたてがみ)でできたブラシは、革表面のほこりを落とすのに適しています。
●クリームを塗る
ブラッシングのあとは、いよいよ大事な油分と水分の補給です。工程としては、クリームを塗り、乾いた布で拭きとるだけです。まずは、皮革用のクリームを革表面に塗ります。クリームにもいろいろな種類がありますが、ものによっては革の種類に合わず変色させてしまうものもあるので、注意が必要です。使う前に必ず目立たない部分に試し塗りしましょう。
乾いた布にクリームをつけ、やさしく革表面に塗っていきます。布は、メガネ拭きのようなやわらかい起毛クロスがおすすめです。クリームが浸透することで油分や水分が革にいきわたり艶がよみがえるので、まんべんなく全体に塗ります。ゴシゴシと力を入れて塗りこむ必要はありません。より丁寧にするのであれば、クリームを塗ったあと豚毛ブラシでブラッシングするのもおすすめです。馬毛より固い豚の毛で強めにブラッシングすると、クリームがより革内部に浸透します。クリームが塗れたら、再度乾いた布で全体を乾拭きし、革表面に残った余分なクリームを拭きとりましょう。
●防水スプレーをかける
革から30cmくらい離れた場所から、防水スプレーをかけます。手を触れてしまうと痕がついてしまうので、自然に乾くのを待ちます。乾いたら再度全体にスプレーすると、より防水効果が強まるので安心です。防水スプレーは、牛革、馬革などの革製品やエナメル、ベロアなど表面加工によって、さまざまなタイプがあります。適切なものを選びましょう。また、防水スプレーを使う際は必ず目立ちにくい箇所に使い、問題なければ全体に使うようにしましょう。
羊革の種類
●シェブルミゾル
2002年に登場した雄山羊革を使った軽量でいて丈夫な素材です。程よい柔らかさと程よい斑の大きさが特徴で、艶やかな光沢と凹凸の少ない繊細な仕上がりは、エルメスならではのラグジュアリー感を楽しめます。また、型押し加工による特殊なグレインが特徴です。経年とともにやわらかく艶を帯びる素材で産地のインド南部の町の名前“ミゾール”から名付けられました。キズや擦れ、汚れにも強いためデイリー使いにも最適です。
●コロマンデル
艶やかな光沢感とシンメトリーな型押しが印象的な雄山羊革を使った素材です。程よい柔らかさと、大きめの斑が特徴で、大変軽量で持ち運びしやすいのが魅力です。
●ヘアーシープ
ヘアーシープは、軽くて柔らかいのが特徴です。ウールシープに比べやや強度に優れており、良質とされています。
●ウールシープ
軽くて柔らかいのが特徴です。ヘアーシープに比べるとやや強度が劣ります。
●ラムスキン
子羊の革で、とても柔らかく軽いのが特徴です。
●オーストリッチ
クイルマークと呼ばれる羽を抜いた後の突起があることが特徴です。非常に丈夫で、様々なブランドで使用されています。
羊革のお手入れ
具体的なお手入れについては、牛革の場合とほとんど変わりません。あれば羊革専用クリームを使うようにするとよいでしょう。汚れは柔らかい布でふき取りましょう。
ワニ革の種類
●ワニ革
・ポロサス
「スモールクロコダイル」と呼ばれるワニ革を使用した最高級素材です。「シャイニー」、「セミマット」、「マット」という3種類の仕上げ方法があり、ウロコが四角くかつ細かく揃っていることが特徴です。現在では入手が困難で非常に希少価値の高い素材となっています。
・ニロティカス
アフリカのナイル川流域に生息する「ナイルクロコダイル」と呼ばれるワニを使用した最高級素材です。斑が大きく、ウロコが長方形で丸みを帯びているのが特徴です。ポロサスと同様に現在では入手困難で大変希少価値が高くなっています。
・アリゲーター
アメリカに生息する「ミシシッピーワニ」の皮を使った素材です。「穿孔」と呼ばれる斑の中にある点状の模様がないのが特徴で、ほかのワニ皮素材と同様に大変希少価値の高い素材となっています。
ワニ革のお手入れ
普段からクリームを塗らずとも、基本は乾いた柔らかい布で埃や汚れを払うだけで問題ありません。濡れてしまった場合でもすぐに拭いて2~3日すると、シミが馴染み目立たなくなります。専用の布も販売されていますが、手元にない場合は眼鏡拭きなどのガラス用の布を用いればOKです。
まとめ
いかがでしたか?私たちの身近なアイテムに広く使われている革の素材ですが、手触り、軽さ、耐久性、風合い、それぞれの革の種類や特徴を知ることで、より長く愛着を持ってアイテムを楽しむことができます。鞄や財布などのアイテムは毎日使うものだからこそ、こだわりの一品を持ちたいですよね。あなたはどの革の種類がお好みですか?
ぜひ、お気に入りのアイテムを選ぶときの参考にしてくださいね。エルメスのバーキンは非常に高価ですが、一生使える名品です。長く愛用し続けるためにも、素材の種類と特徴をしっかりと理解した上で、自分にぴったりのものを選びましょう。