小さなマニュファクチュールから高級時計ブランドの高みへ
ウブロは、創業から凄まじい勢いで高級時計の高みに到達しており、高級時計の世界で最も人気な時計と言えるでしょう。「怪物」ロレックスは創業年が1905年と、オメガは1848年、ブライトリングは1884年、セイコーは1881年にまで遡ります。そんなウブロは、1980年に立ち上げられ、わずか30年余りで、このブランドは高級マニュファクチュールというエクスクルーシブな分野で最も有名なブランドたちと肩を並べるに至ります。このエキサイティングなストーリーを見てみましょう。
ウブロの始まり
原点は、ウブロの生みの親であるイタリア人カルロ・クロッコです。彼は最初にユニークな時計を開発しました。ウブロと名付けたのは、ボートの窓を思わせる目に見えるネジがセットされた分厚い文字盤の形状に因んでいます。彼が取ったリスク、そして彼を世界中に知らしめたのは、「フュージョン(融合)」の概念の導入でした。彼は当時の高級時計のスタンダードを覆すことができると考え、シンプルなラバーストラップに取り付けられた貴金属製のケースの時計を提供することにしました。
ミニマルなこのマットブラックラバーストラップは、一見シンプルに見えるかもしれませんが、実際にはカルロ クロッコが100万ドル以上を投じて約3年を費やし研究した結果です。その結果、エレガントなブレスレット、軽量、耐久性、心地よい手触り、柔軟性、そしてすべての手首に適応します。カルロは、嗅覚的な側面にも手を加えました。彼のゴム製ブレスレットは、ゴムの匂いを完全にカバーする仄かなバニラの香りで香り付けされていました。
高級時計の世界において、斬新なこのスタイルは、すぐに話題となります。ラグジュアリーウォッチに敏感なエリートやインフルエンサー達は、カルロの製品に魅了されるまで時間はかかりませんでした。カルロの発明によって、高級時計界にもラバーストラップは普及し、90年代には他のブランドにも採用され、現在でも高級スポーツ時計の絶対的なスタンダードとなっています。
過渡期
創設から2年後には、1980年の時計を彷彿とさせるデザインの、ブランド初のダイバーズウォッチを発表し、4年後には最初のクロノグラフ「クラシック クロノグラフ」を発表します。1990年には、より洗練されたモデルを提供する「エレガント」と呼ばれるラインをリリースしました。これは、創業当初よりブランドのアイコニックなデザインだった文字盤上のビスを取り除くなど、基本的なコンセプトから離れたものでした。2000年には「アート コレクション」を発表し、有名な彫刻家と密接に協力しました。ブランドの努力と革新は続きますが、その人気に影を落とし始めました。
新風巻き起こる
2004年、カルロ・クロッコはウブロに大物を迎え入れます。この大物とはジャンクロード・ビバーという人物です。彼は、オート・オルロジュリーの世界で華々しい経験を積んでいます。実際、オーデマ ピゲ、オメガ、ブランパン、スウォッチなど、国際的に名声のある複数のブランドでその手腕を振るいその実力を証明してきました。彼はウブロのCEOとして採用され、ほぼ同時に、ダイナミックで才能のある人物であるリカルド・グアダルーペが「プロダクト&マーケティングコンサルタント」に着任します。
2人の巨人が協力して、「アート オブ フュージョン」と呼ばれるコンセプトのもと、ブランドの再生を図ることになります。「ウブロ クロノグラフ」は改良され、新作が発売され、ブランドがステージに舞い戻ります。最も大きなセンセーションを引き起こし、ウブロをトップに押し上げたのは、バーゼルワールド2005 で発表された「ビッグバン クロノグラフ」でした。これは瞬く間に成功を収め、売上はあっという間に過去最高に達しました。この時計は、愛好家、アマチュア、コレクターなどの顧客を驚かせただけでなく、プロにも感銘を与えました。その証拠に、「ビッグバン クロノグラフ」はジュネーブ時計グランプリで「ベスト デザイン」の称号を獲得しました。
更なる躍進
そこからすべてが加速し、ウブロの勢いはとどまることを知りませんでした。2007年は、「100万ドルのビッグバン」の発売など、ブランドが栄華を誇った年でした。名前が示すように、これは100万ドルのクロノグラフです。このジュエリーウォッチのケースと文字盤は、ダイヤモンドで完全に覆われています。発表年のジュネーブ時計グランプリで、ジュエリーウォッチ賞を受賞しました。
ウブロが最初のダイバーズ クロノグラフである48mmケースのビッグ バン ダイバーと、独自の機構を備えた初の完全自社製モデルである「マグバン」を発表したのもこの年でした。後者は、時計、ジュエリー、ペンの中東見本市「バーレーンの2007」で最優秀技術革新賞を受賞しました。
2008年、カルロ クロッコは他のプロジェクトに注力することを決定し、ウブロをフランスのコングロマリットLVMHに売却することを決定しました。ただし、このグループは、タグ・ホイヤー、ゼニス、ショーメ、ブルガリ、などのブランドも所有しています。LVMHの経営陣は、ジャン-クロード ビバーとリカルド グアダルーペをウブロの舵取りにとどめるという賢明な決定を下し、ブランドを世界的な成功へと導きました。その後、ブランドはエレガントな38mmケースとダイヤモンドをセットした文字盤を備えた最初の女性用クロノグラフを発表しました。
2009年、ウブロは異なる素材を融合させるというコンセプトを新たな次元に引き上げた「キングパワー コレクション」を発表しました。また、ジュネーブ時計グランプリで再び表彰された「100万ドル ブラック キャビア ビッグバン」が発売された年でもありました。
ウブロのマニュファクチュール
ウブロは、スイスのニヨンに拠点を置く製造工場を設立しました。この工場では、時計製造を1から10まで行うことができます。ブランド評価を高め続けられるのは、この工場のおかげです。この工場は、とりわけ、新しい「UNICO」クロノグラフ機構の製造場所です。また、2010年にブランドの30周年を記念して「キング パワー トゥールビヨン マニュファクチュール リミテッド」のムーヴメントとして使用された、ウブロ初の複雑機構が製造された場所でもあります。
また、更なる技術向上を目指すウブロは、ニヨン マニュファクチュールに「グランド コンプリケーション」部門を開設しました。この部門は、高度な技術を有するスペシャリストや専門家を多く雇用しており、そのほとんどはウブロの元機構サプライヤーであるBNBから来ています。「マスターピース コレクション」が開発されたのはこの部門です。また、パリのヴァンドーム広場10番地にブティックをオープンするきっかけとなった、ヴァンドーム コレクションが考案され開発された場所でもあります。
壮大なまでにクレイジー
ウブロは常に、可能性の限界を押し広げる製品を提供することでも際立っています。モナコ海洋博物館と共同で開発された時計はその好例です。「King Power Oceanographic 4000」は、水深4,000メートルまでの耐水性能を備えています。マニュファクチュールの職人達によって18か月の歳月かけ生み出された信じられないほどのパフォーマンスです。
極端なことといえば、ウブロは500万ドルのビッグバンも発表しました。5,000,000ドルの時計…。バーゼルワールド2012で公開され、ダイヤルからブレスレットの端まで1,282個のダイヤモンドで埋め尽くされた時計です。
パートナーシップ戦略
ウブロは、主にスポーツの世界、さらに言えばラグジュアリースポーツの世界で、強固なパートナーシップを築いてきました。たとえば、サッカーは常にブランドにとって戦略的要所であり、この分野の主要な国際イベントを後援するナンバーワンのブランドとして位置づけられています。そのため、ウブロは、ワールドカップや欧州選手権などの世界大会に加えて、マンチェスター・ユナイテッド、FCバイエルン・ミュンヘン、アヤックス・アムステルダム、ユベントス・トリノなど、地球上で最も人気のあるクラブを含む多くのクラブのスポンサーにもなっています。これらの各クラブには、それぞれのクラブカラーで独自のキングパワーが作られました。
ラグジュアリースポーツに関心のある人は、フォーミュラ1を含むモーター レースやその他の分野を考慮する必要があります。したがって、ウブロとフェラーリのパートナーシップが誕生したことは驚くべきことではありません。このコラボレーションから生まれた時計、「ビッグバン クロノ トゥールビヨン フェラーリ」は、ウブロの最も印象的なハイエンドモデルの1つです。
フォーミュラ1において、ウブロは2010年から2012年までフォーミュラ1のエクスクルーシヴ パートナーでもありました。また、ウブロは恵まれない子供たちに教育の機会を与える「アイルトン・セナ財団」に支援を提供することで人道支援にも投資してきました。
莫大な金額を生み出し、群衆を惹きつける、他のスポーツは何でしょう?たくさんありますが、バスケットボールもその1つです。そのため、ウブロはマイアミ ヒートの公式パートナーとなり、ブランドアンバサダーとしてNBAの最大のスターの1人であるドウェイン ウェイドを迎えました。ウェイドは、オリンピックでの金メダルやNBAでの最高のタイトルなど、信じられないほどの実績を持っているだけでなく、人道支援の世界でも非常に積極的で、慈善活動にも積極的に投資しています。言い換えれば、彼はウブロを代弁する完璧なキャラクターを備えているのです。
これで終わり?いやいや!ウブロはまた、ボクシングの世界、サッカークラブやFIFAとの直接のパートナーシップ、スキーなどのウィンタースポーツ、さらには陸上競技の世界でも、特に世界最速の男であるウサインボルトとの主要なパートナーシップを締結しています。
フラッグシップモデル
●ビッグバン
ビッグバン ウォッチ コレクションは、「フュージョン」のコンセプトで知られており、オリジナルのウブロ ウォッチのクラシックなスタイルと、超近代的で時にはエキゾチックでもある素材を融合させています。異なるビッグバンには、38ミリから44ミリまでのサイズのさまざまなケースがあります。ビッグバンの風防は、傷のつきにくいサファイアクリスタルガラスでできており、ウブロの有名な6本のH型チタンスクリューを使用したねじ込み式ダイヤルで固定されています。ウブロの魂をビッグバンに伝えるのは、これらのアイコニックなネジ達です。
●キングパワー
この時計のムーヴメントの駆動方法は独特です。すべてのウブロの時計は、その大胆な外観と最高級の職人技を示すクラフツマンシップですでに知られていますが、「キングパワー コレクション」は、ブランドの理想を取り入れ、それらを極限まで押し上げています。キングパワーは、通常はフォーミュラ1やジェッツ用に予約されている素材など、他の先進産業の素材を採用していることがよくあります。キングパワーは、夜光文字盤、ブラック カーボン ファイバー ケース、ブランドの特徴であるチタン製ネジ、および高級セラミックを備えたクロノグラフを提供します。結果は常に驚くべきものであり壮大なスケールをもつコレクションです。
●クラシック・フュージョン
「クラシック・フュージョン コレクション」は、いわば、ブランドが到達しうる未来の一部です。このコレクションの時計は、エレガンスと無骨さをみごとに融合させ、まとめ上げています。クラシック・フュージョンの選択肢は幅広く、さまざまなスタイルや素材から選択できます。いくつか例を挙げると、チタン、ハイエンドのセラミック、またはローズゴールド仕上げが、このラインのモデルで定評があります。風防にはサファイア クリスタル ガラスを採用しています。ブレスレットに関しては、ウブロを有名にしたマットラバーや、ラグジュアリーなクロコダイルレザーなど、ユニークなオプションがあります。
結論
このように非常にハイエンドな素材と、モダンで時には大胆なスタイルとの融合というコンセプトにより、ウブロの時計は忘れられないデザインを備え、並外れた精度、他の追随を許さない品質、そして絶え間ない耐久性を備えています。ウブロは瞬く間にスターダムの段階を登り、現在では最も偉大なブランドの1つです。ブランドの非常に特殊なスタイルは常軌を逸したものであり、いまや時計業界全体のスタンダードとなっている、一見相容れない素材を融合させるというコンセプトは、ウブロこそが「出で来はじめの祖」なのです。