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ロレックスのケース交換、気を付けたいこと。

NEW YORK, UNITED STATES - May 08, 2014: Expensive luxury watch isolated on white background

腕時計の外装として、ロレックスのオイスターケースほど長い歴史を持つ傑作はそう多くないでしょう。今回はそんなロレックスのケースを交換した場合についてお話をしてみようと思います。

ロレックスのケース「オイスター」とは

ロレックスが1926年に開発した防水・防塵腕時計、オイスター。世界で初めて腕時計に防水性を備え、精度を飛躍的に上げたこの機構は、誕生から90年を経た今なおロレックスの時計はもちろん、ほぼ全ての機械式時計に影響を与え続けています。ロレックスは、設立当初から精度を最優先にして時計を開発するメーカーでした。創業から5年後の1910年、腕時計として初めて公式な精度証明であるクロノメーター認定を獲得。スイスクロノメーター歩度公認検定局より与えられるこの認定は、腕時計が当時の基準であった懐中時計と同じくらい精確であるということを初めて証明したのです。1914年には、当時クロノメーター精度の最高の権威であったイギリスのキュー天文台からロレックスの腕時計にA級証明書が与えられ、時計製造の世界に衝撃を与えました。こうしてロレックスは、当時では考えられない、腕時計が他のどのタイプにも精度の高さで負けないということを示しました。ロレックス登場以前の腕時計は、精度が低く特に女性用の装飾品と考えられていました。また、当時の時計技術者達の間では、腕時計の耐久性と精密性は両立できないだろうとも言われていた時代です。そんな中、創業者のハンス・ウィルスドルフは、精度の問題をクリアした「埃や汗や水、熱や寒さから永遠に守られることを保証できる防水性能を備えたケース」の製造に取り掛かります。

そして1926年、「オイスター」を開発したのです。腕時計の信頼性と精度を抜本的に向上させたロレックス オイスターは時計製造の歴史において画期的なことでした。その革新性は、ハンス・ウィルスドルフ本人の言葉でリアルに残されています。オイスター発表から数ヶ月後の19271月、集まった時計販売業者たちを前に「我が社が作っているのは世界最高の腕時計だ。」と高らかに宣言します。そして「オイスターは、近年において腕時計に関する最も重要な発明であると考えている。」と断言しました。ブランド設立当初は、スイスではなくロンドンに拠点を置いていたロレックス。創業からわずか20年ほどのあいだに、「イギリスの市場向けに、すべてのスイスの時計製造会社を合わせたよりも多くの人気モデルを製造した」と公表できるほどに成長したのです。ハンス・ウィルスドルフは「時計が手首に着けられるようになって以来、多くの人々を困らせてきた問題に対する理想的な解決策を提供した」と語っています。そして「オイスターは、男性に腕時計を流行させる何よりの火付け役になるだろうと私は予言します。」と続けました。オイスターならば、手を洗ったり入浴したり、または埃の多い工房で仕事をしたり、たくさん汗をかいたりした場合にも、時計を外す必要はないと彼は説明。事実、オイスターは高山の登山家から深海の探検家まで、数多くのパイオニアたちに選ばれ、信頼される時計となりました。ミドルケースに裏蓋とリューズがガスケットを挟んでねじ込まれて気密性を確保するとともに、ミドルケースにはめ込まれた風防がベゼルによって外側からも圧迫されることで、オイスターケースは完全防水を実現しています。水や埃、その他のものの侵入を防ぎ、回転軸に差した油と埃が混ざり合うこともないため、誤差が生じず常に完璧な時間を刻み続けます。そして、それらをデザインの美しさと両立する形で実現したのも革命のひとつです。「牡蠣」を意味するオイスターは、二枚貝(オイスター)のように長い間水に浸かっていても部品が損なわれないというのが名前の由来です。「オイスター」は、もともと口が堅い信頼がおけるなどの比喩表現として使われてきた言葉。水の中で暮らし、どんな不純物も寄せつけないことからこの名がつけられました。ほとんどの時計製造会社や時計技術者にとって実現不可能な夢物語と考えられていた『防水』時計を、見事に現実のものとしたオイスター。結果的に他の時計製造会社もこの動きに追随せざるをえず、スイスの時計産業全体に極めて大きな影響を与えることとなりました。防水という新たな技術に莫大な資金が投資され、機械産業は新たな繁栄期へと突入します。外国との極めて熾烈な競争にさらされていると思われた時代に、スイスの時計ケース製造業は世界一の地位を取り戻したのです。

ケースの交換は日本ロレックスへ

これほどまでにすばらしいオイスターケースも、長年の使用に伴う度重なるメンテナンス、また表面の研磨によって痩せて、弱ってくることもあります。特にサブマリーナーやシードゥエラーなどの高い防水性を持つ時計は、メーカー基準の防水性能維持を前提にすれば、ケースの寿命は短めになる傾向があります。使用という意味では、自動車に踏まれるくらいのことでもなければケース交換が必要となることはないかと思います。
例えばオーナー自らが痩せてしまったケースが気に入らないなどの理由でケース交換を希望すれば、ロレックスのサービスセンターはこれに応えてくれるかもしれません。もちろん相応の費用は掛かります。これはロレックスに限ったことではありませんが、少なくともクロノメーターを所得している個体にはムーブメントにも固有のシリアル番号が刻まれているはずです。これはクロノメーター検定のためのテストが全てケースに収められていない状態で行われ、そのムーブメントひとつひとつに対してクロノメーターの称号を与える制度となっているため、ムーブメントひとつひとつを識別する方法が必要だからです。ケース交換をロレックスのサービスセンター以外でやってしまいますと、その時計はケース番号とムーブメントに刻まれたシリアル番号がロレックスの出荷台帳と一致しない状態となります。
ロレックスに改造されたものとみなされるようになってしまい、修理を受けてもらえなくなります。

ケース交換したらシリアルはどうなるの?

ロレックスのケースには時計1本1本に割り振られているシリアル番号が刻まれていますが、ケース交換を行った場合これまでの番号はなくなり、新たに別のシリアル番号が刻印されたケース(裏蓋の内側に、元のシリアル番号が刻印されます)となります。どんなシリアルになるかは修理を行った年代によって変わりますが、以前は(44~) か(47~)、最近ではアルファベットが使用されているようです。しかしロレックスのサービスセンターでケース交換をする分には、オリジナルのシリアル番号と変更後のシリアル番号がセットで記録され、世界中のロレックスのデータベースと連動するようであり、ケース交換によってシリアルが変わっても、保証は変わりません。もしケース交換をロレックスのサービスセンター以外でやってしまいますと、その時計はケース番号とムーブメントに刻まれたシリアル番号がロレックスの出荷台帳と一致しない状態となります。ロレックスに改造されたものとみなされるようになってしまい、修理を受けてもらえなくなります。

ケース交換は価値に影響する?

防水性能の復活や一生の愛用品、子供へ受け継ぐなど、ご自身で使い続ける前提でしたら、ご自身にとっての価値が落ちることはないでしょう。むしろメンテナンスによって価値は増していると捉えることもできます。しかし売却が選択肢にある場合、とくに「ヴィンテージ」と呼ばれるロレックスとなると話が違ってきます。と言うのも、ロレックスは年式が古くなれば古くなるほど「オリジナリティ」が重要視される傾向にあります。「オリジナル」とはすなわち、製造当時の仕様と言うことです。ヴィンテージロレックスは製造から半世紀以上が経過しているものも少なくありません。パーツが交換された個体だと、当時のものと異なるこということになります。そのためオリジナルを維持し続けている個体は、それだけ市場での評価が高まり、当然ながら資産価値としてはずば抜けていくと言うわけです。とりわけ近年ではロレックスファンによって年代による仕様が体系化されたことで、いっそう「オリジナルのパーツを保有しているか否か」が重要視されることとなりました。

ロレックス(ヴィンテージ)の価値を守る

ケースのほかにも、文字盤、針、ベゼルなどもオリジナル性の重要な要素です。希少な文字盤が、オーバーホールで交換され希少性を失うこともあります。ヴィンテージロレックスのオリジナル性を守るためにも、付加価値を下げることを避けるためにも、やはり適切な取り扱いが大切になってきます。
なお、全てのパーツ交換に言えることですが、今後ヴィンテージロレックスの価値基準が変遷していく中で、重要視されるもの・そうでないものもまた変わっていく可能性があります。こういった変遷もまた、ロレックスならではと言えるでしょう。

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