金の価値がなくなることはない?
世界情勢や金融政策の影響を受けながらも、金の本質的な価値が消えるリスクは限りなく低いと考えられています。しかし、相場は常に変動し、金の価格も下落する可能性があります。
金の価値がなくなる可能性は極めて低い
金は、通貨や制度が変化してもその価値を保ち続けてきた数少ない資産のひとつです。各国の中央銀行が備蓄していることからも、その信頼性がうかがえます。
したがって、市場価格は短期的に上下することがあっても、現物資産としての評価は変わりません。
金が安定した資産である理由
金は古くから通貨として使用され、その価値を保ち続けてきました。現代においても、金は世界中で取引され、安定した価値を誇る資産とされています。たとえば、経済危機やインフレ時には金の需要が増加する傾向があります。
過去の金融危機や地政学的な不安定要素が影響した際でも、金はその価値を失うことなく、むしろ価格が上昇する場面が多く見られます。このように、金は他の資産とは異なり、長期的に安定した価値を保ち続けると考えられています。
1 トロイオンス( 1 toz ) | 約 31.1035 グラム( g ) |
過去の値動きで確認
金の価値は、本当に下がらないのでしょうか。近年における金価格の推移を二つの時期に分けて振り返り、その変動傾向と安定性を確認していきましょう。
金価格の推移が示す安定感
2000年代以降、金は世界的な経済不安を背景に大きく値を上げました。2000年代初頭から約10年で価格は4倍以上となり、当時購入した金が現在も高い価値を保っていることがうかがえます。
一方、直近数年間では緩やかな上下を繰り返しながらも、長期的には堅調な動きを見せています。
年 | 年次平均( 円 / g ) |
年次最高( 円 / g ) |
---|---|---|
2000 | 1,014 | 1,140 |
2001 | 1,105 | 1,229 |
2002 | 1,296 | 1,402 |
2003 | 1,399 | 1,510 |
2004 | 1,472 | 1,548 |
2005 | 1,619 | 2,088 |
2006 | 2,287 | 2,562 |
2007 | 2,659 | 3,070 |
2008 | 2,937 | 3,339 |
2009 | 2,951 | 3,475 |
2010 | 3,477 | 3,807 |
近年の価格変動が示す一面
2015年、金は1グラムあたり4,500円台で取引されていましたが、翌年の平均価格は4,300円台にまで下落しました。当時の購入価格と比較すると、翌年に売却した場合には損失が生じたことになります。
短期的には価格が下がる局面も見られますが、これだけで価値の低下と断じるのは早計です。中長期の視点では回復と上昇を繰り返しており、金はなおも信頼される資産と考えられています。
年 | 年次平均( 円 / g ) |
年次最高( 円 / g ) |
---|---|---|
2015 | 4,564 | 4,985 |
2016 | 4,396 | 4,655 |
2017 | 4,576 | 4,751 |
2018 | 4,543 | 4,827 |
2019 | 4,918 | 5,343 |
2020 | 6,122 | 7,063 |
2021 | 6,402 | 6,897 |
2022 | 7,649 | 8,154 |
2023 | 8,834 | 9,935 |
2024 | 11,718 | 13,784 |
金の価格が急落する可能性
2008年のリーマンショックでは、金価格が900米ドル/トロイオンス台から、700米ドル/トロイオンス台へと下落しました。その後は2012年頃までに、約2倍にまで上昇しています。
金市場の変動と世界情勢の影響
2013年の金市場では、米国経済の回復と中国の金需要減少により、金価格が暴落しています。一時的に1,350米ドル/トロイオンス台を割り込み、2011年のピークから約30%以上も下落しました。
2022年にはロシアによるウクライナ侵攻を受け、1,900米ドル/トロイオンス台まで上昇したものの、米国の金利上昇やドル高の影響で1,600米ドル/トロイオンス台まで落ち込んでいます。
しかし約1年で持ち直し、2024年には過去最高値を更新しました。こうした動きからも、金の価値が失われる可能性は極めて低いでしょう。
金の資産価値について
金は、歴史の節目ごとに重要な役割を果たしてきた貴金属のひとつです。古代から現代に至るまで、変わらぬ価値を持つ存在として人々に選ばれてきました。では、金にはどのような資産価値があるのでしょうか。
古くから貴重な存在であった
金は太古より人類にとって特別な意味を持つ金属でした。古代シュメールやトラキア、エジプトといった文明では、装飾品や祭礼用具として用いられ、その価値は非常に高く評価されていました。
富と権力の象徴である金は、大航海時代にはその奪取をめぐって争いが繰り広げられたほどです。こうした歴史をたどると、金が単なる資源にとどまらず、文化や文明の形成にも深く関わってきたことがわかります。
シュメール文明 | 紀元前6000年頃のメソポタミア南部の文明 / 生活の中で金を活用していた |
トラキア文明 | 紀元前5000~3000年頃ブルガリア地方の文明 / 錬金術や金の加工に長けていたため「黄金文明」と呼ばれる / 金の装飾が武具や馬に使われた |
エジプト文明 | 紀元前3000年頃に金製品が盛んに作られた / ツタンカーメン王の黄金のマスクで知られる |
物質として安定している
金は、物質として非常に安定していることで知られています。空気中の酸素や水分とほとんど反応せず、年月を経てもその輝きを保ち続けます。錆びにくく変色もしにくいため、美術品や装飾品としても長く保存が可能です。
また、たとえ形が変わっても、金そのものの価値が損なわれることはありません。このような性質が、金を特別な資産として位置づけている大きな理由のひとつです。
投資商品としての価値が安定している
市場が大きく揺れ動く場面でも、金は価値を保ちやすい資産として注目されています。企業の業績や通貨の信用度に左右されることがないため、世界的に安定した投資対象と見なされているのです。
さらに、金は国境を超えて取引されており、高い流動性と換金のしやすさも特長です。こうした点から、多くの投資家が資産の一部として金を選んでいます。
金の資産価値が高い理由
金は、限られた資源であるうえに人工的な生成も困難な貴金属です。その美しさと希少性が、多くの人々に求められ、価値の安定につながっています。
埋蔵量が決まっていて希少価値が高い
金は地球上で限られた量しか存在せず、その希少性が価値を高めています。この特性が、長年にわたり金を魅力的な資産としています。
限られた資源としての金
金は自然界で有限に存在しており、その埋蔵量は急速に減少しています。現在、地球上で採掘された金の総量は約21万トンで、未採掘の金は地下に約5万トンと推定されています。
年間採掘量はわずか3,000トンにとどまっています。また、金は再生できない資源であるため、一度採掘されるとその量は永遠に減っていきます。この希少性が、金を価値の安定した資産として高く評価される理由のひとつです。
見た目が美しく需要が高い
金の美しさは、古代から現代に至るまで多くの人々を魅了し、需要を高め続けています。その輝きと色合いが、装飾品やシンボルとして価値を持ち続けている理由です。
金の輝きが引き出す魅力
金の魅力は、その比類のない輝きと美しい色合いにあります。古くから金は、他の金属では味わえない特別な光沢を持ち、これが人々を引き寄せてきました。
装飾品やジュエリーなど、金製品は富や権力の象徴とされてきました。金はその光沢が永続的に保たれるため、結婚指輪や記念品として選ばれることが多く、一生もののアイテムとされています。
人工的に作ることができない
金はその特有の性質により、自然界でのみ生成される貴金属であり、現代の技術では人工的に作り出すことができません。この希少性が、金の価値を一層際立たせています。
自然界でしか存在しない貴重な金
金を作り出すためには、数十億年を要する宇宙の壮大なプロセスが関わっています。この自然の力は、現代の技術でも再現できません。
仮に原子核変換を行ったとしても、得られる金の量はごくわずかで、コストが非常に高くなってしまいます。したがって、金はその希少性と独自の性質から、価値を保ち続けているのです。
金の資産価値が下がるタイミング
金の価格は日々変動しており、その動きを見ると不安定な資産だと感じる方も少なくないでしょう。しかし、相場の変動タイミングを理解しておけば、損失を避けられる可能性が高まります。
経済・金融不安であるとき
経済や金融の不安が高まると、金は伝統的に安全資産としての需要を集め、価格が上昇する傾向があります。しかし、インフレが進行する局面では、投資家は金を避け、インフレヘッジとして株式や不動産などに資金をシフトさせることが一般的です。
したがって、金の価格動向は、単に経済不安だけでなく、インフレ動向や投資家の資産配分戦略にも大きく依存するといえるでしょう。
景気が良く金利が高いとき
経済が活発になると、金利が上昇し、株式や債券といった他の投資商品に対する魅力が増します。これらの資産は金と違い、保有することで利子や配当を得ることができるため、投資家は金から資金を移動させることが多くなります。
結果として、金のような利息を生まない資産は需要が減少し、価格が下落することが一般的です。このような状況では、金が持つ安定性が相対的に魅力を失うことがあります。
ドル高のとき
米ドルが強い時期には、金の価格が下落する傾向が見られます。金は米ドルで取引されるため、ドル高が進むと、金を購入する際のコストが相対的に高くなります。
この影響で、投資家が金から他の資産へ資金を移動させることが増え、金の需要が減少するからです。
しかし、近年はアメリカの金融政策やその他の経済的要因によって、ドル高の状況でも金価格が上昇する場合もあります。これは、金利の変動や不確実な市場環境など、複合的な要因による影響です。
地政学的リスクが低いとき
政治的緊張や戦争の影響が収束すると、投資家はリスク回避から資産を、他の安定した投資先に移動させます。そのため、このようなタイミングでは、金の資産価値が下がることも珍しくありません。
過去には、「1991年 湾岸戦争(イラク侵攻)」や、「2022年 ウクライナ危機(ロシアの侵攻)」などが金相場に大きな影響を与えました。
この事例はいずれも、「地政学的緊張=金価格の上昇」ではないことを示す典型例です。タイミングや他の要因との兼ね合いが、金価格の動向に大きく影響を与えることがわかります。
中国やインドの需要が低いとき
中国とインドは金の需要が非常に高い国であり、世界の金市場に大きな影響を与えています。これらの国々で金の消費が減少すると、金価格が下落する可能性があります。
経済成長の鈍化や消費者の購買意欲の低下が原因となり、需要が落ち込むことがあるためです。逆に、需要が増加すれば、金価格は上昇することが予想されます。
今後の金価格はどうなる?
金価格の今後の動向は、世界経済や需給バランスに大きく影響されます。今後、金の価格はどのように推移するのでしょうか。
今後の金価格の見通し
金の価格は、長期的には上昇する可能性が高いと考えられています。
その理由の一つは、金の埋蔵量が限られており、今後20年程度で枯渇する恐れがあることです。また、金は宝飾品や工業用途での需要が堅調に続くため、このバランスが金価格を支える要因となります。
しかし、短期的には経済情勢や政治的リスクなど、さまざまな要素が影響を与えるため、金相場の予測は難しいといえます。今後の金価格動向を見守るには、世界情勢や経済指標を注意深く観察することが重要でしょう。
まとめ
金は情勢に左右されながらも価値を保ってきた資産です。過去の相場変動を見ても、一時的な下落があっても回復を遂げており、価値がなくなる可能性は極めて低いといえます。
しかし、有事に強いといわれていますが、経済や政治情勢に影響するリスクも存在します。全体のバランスを見ながら、分散投資の一環として、慎重に取り入れることが重要です。