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金の売却益は所得税として課税される
金を買取業者などに売却して得た利益は、所得税として納めなくてはなりません。しかし、「所得税」に当たる税は10種類もあり、どれに該当するのか分かりにくいです。そこで、金がどのような所得税の対象となるのか、ここで詳しく解説します。
譲渡所得
文字通り、資産の譲渡で得た利益のことです。
基本的に、金を買取業者などで査定に出し、売却で支払った費用などを差し引いた利益が50万円を超えると課税対象になります。課税額は資産の保有年数によって違いがあり、保有期間が5年を超えた資産は安くなります。
金製品の中でも譲渡所得の対象となるのは、主にインゴットなどの金地金(きんじがね)です。
一方で、金のジュエリーや宝石などの装飾品は「生活用動産」のため、対象にはなりません。しかし、買取業者などでの売却額が1点(もしくは1組)につき30万円を超えた場合は、譲渡所得として税務署へ確定申告をしなければなりません。
製品によって基準が変わるため、注意しましょう。
事業所得
事業主として、金の売買や金の取引を主な収入源としている場合、これは「事業所得」に該当します。営利性や有償性、継続性など、社会通念に照らして客観的に判断したうえで認められます。
事業所得で申告する場合は青色申告を行うことができ、要件を満たすと青色申告特別控除を受けることが可能です。
雑所得
個人が営利を目的として金の売却を継続的に行った場合、その利益は「雑所得」として扱われます。所得は雑所得以外に9種類ありますが、どれも該当しない場合は、こちらに分類されます。
雑所得は総合課税の対象となっており、譲渡所得や事業所得など他の所得と合算したうえで税率が決まります。最大で45%の課税となりますので、場合によっては高所得により税負担が増える可能性があります。
金売却時の税金シミュレーション
インゴットなどの金地金を売却して得た利益が50万円を超えると譲渡所得が課税されます。そのときの課税額はどのくらいの金額となるのでしょうか。ここでは、譲渡所得でかかる税額のシミュレーションを行ってみます。
短期譲渡所得
金地金の保有が5年以内で売却したものは、短期譲渡所得として税額を出します。
計算式は以下の通りです。金の譲渡益(売却利益)を求めたうえで、譲渡所得を出します。特別控除が50万円のため、それよりも譲渡益が下回ると非課税対象となります。
①金地金の譲渡益 | 譲渡価額 -(取得費+譲渡費用) |
---|---|
②譲渡所得の課税額 | 金地金の譲渡益 - 譲渡所得の特別控除50万円 |
仮に、買取業者へ譲渡(売却)した価格が170万円、購入したときに支払った取得費は110万円(手数料込み)、売却時にかかった手数料・送料を示す譲渡費用が5万円としましょう。
課税する譲渡所得は以下の通りとなります。
①金地金の譲渡益 |
譲渡価額 -(取得費+譲渡費用) = 170万円 -(110万円 + 5万円) = 170万円 - 115万円 = 55万円 |
---|---|
②譲渡所得の課税額 |
金地金の譲渡益 - 譲渡所得の特別控除50万円 = 55万円 - 50万円 = 5万円 |
以上のように、単純な計算で課税額を求めることができるため、ある程度の予測がつきやすいでしょう。
長期譲渡所得
こちらは、金地金の保有期間が5年を超えたときに適用されます。
長期の譲渡所得を求める計算式は、以下の通りとなります。短期との違いは、課税額を求める際に2分の1を乗算する点です。
①金地金の譲渡益 | 譲渡価額 -(取得費+譲渡費用) |
---|---|
②譲渡所得の金額 | 金地金の譲渡益 - 譲渡所得の特別控除50万円 |
③譲渡所得の課税額 | 譲渡所得の金額 × 2分の1 |
では、買取業者へ譲渡(売却)した価格が170万円、購入したときに支払った取得費は110万円(手数料込み)、売却時にかかった手数料・送料を示す譲渡費用が5万円であったときの長期譲渡所得を計算してみましょう。
結果は、以下の通りです。
①金地金の譲渡益 |
譲渡価額 -(取得費+譲渡費用) = 170万円 -(110万円 + 5万円) = 170万円 - 115万円 = 55万円 |
---|---|
②譲渡所得の課税額 |
金地金の譲渡益 - 譲渡所得の特別控除50万円 = 55万円 - 50万円 = 5万円 |
③譲渡所得の課税額 |
譲渡所得の金額 × 2分の1 = 5万円 × 2分の1 = 2.5万円(2万5,000円) |
このように短期譲渡所得と同じ条件でも、長期の方が安くなることが分かります。
なお、短期譲渡所得と長期譲渡所得の両方がある場合の特別控除額は、両方を合わせて50万円が限度となります。先に短期譲渡所得が優先されることも理解しておきましょう。
金の売却で税金がかからない方法
金は、売却益(譲渡所得)に対して所得税の申告が求められますが、以下のような条件を満たせば、確定申告が不要となる可能性があります。
金の売却益が50万円以下の場合は確定申告不要
金の売却益を申告する場合、特別控除の50万円が適用されます。
仮に、100万円で購入した金を、買取業者に140万円で売却したとしましょう。単純計算で売却益は40万円(140万円 - 100万円)で50万円以下となるため、課税対象外となります。
ただし、複数回の売却がある場合は、年間の合計額が50万円を超えないよう注意が必要です。
給与2,000万円以下で売却益が20万円以下の場合も確定申告不要
会社での年収が2,000万円以下の年末調整対象者は、金の売却益が約20万円以下であれば、確定申告は不要となります。
参考までに、年末調整を行った年収1,500万円の会社員が、50万円で購入した金を60万円で売却したケースで考えてみましょう。この場合、年収2,000万円以下かつ売却益は10万円なので、非課税となります。
売却利益を計算し、条件に当てはまるか確認してみましょう。
【節税方法】金売却時の税金対策
金の売却でかかる税金を最小限に抑えるには、税金対策を講じなければなりません。どのような対策が有効なのでしょうか。
金購入時の計算書を保管しておく
金を購入した際、業者から金の取得価格を証明する計算書をいただきます。この書類を紛失した状態で申告すると、税務署は売却金額の95%を売却益と認識してしまいます。
仮に、100万円で購入した金を150万円で売却したとしましょう。このときに取得価格を証明できない場合は、142.5万円(150万円の95%)が売却益とみなされ、事実上、税負担が増えてしまうということになります。
納税額を抑えるためにも、計算書は忘れない場所に保管しておきましょう。
金を所有してから5年後以降に売却する
金の所有から5年を超えた場合は「長期譲渡所得」として扱われ、課税対象額が半額となります。
単純に、100万円で購入した金を180万円で売却した場合の課税額を求めてみましょう。短期と長期、それぞれの課税額を計算した結果、以下の通りとなります。
・所有期間が5年以下の場合(短期)
売却額180万円 -(購入額100万円 + 特別控除50万円)= 課税額30万円
・所有期間が5年を超えた場合(長期)
(売却額180万円 -(購入額100万円 + 特別控除50万円))× 2分の1 = 課税額15万円
このように、長期保有は税額を大幅に軽減できるため、お得です。
何回かに分けて売却する
金の売却益が大きい場合、複数年にわたって売却すると税率を抑えられます。
所得税は累進課税制度に基づき、譲渡所得や雑所得などの合計額に応じて税率が高くなる仕組みです。そのため、1年ですべての金を売却して利益を得たとしても、高い税率の影響で、2年、3年かけて売るよりも損をしてしまう可能性があります。
税と利益のバランスをとるために、あえて複数年に分けて金を売却するのも有効な節税方法といえるでしょう。
相続財産を相続税の申告期限より3年以内に売却する
相続財産を相続税の申告期限から3年以内に売却すると、「相続税の取得費加算の特例」により相続税を軽減できます。
相続税の申告期限は「相続開始の翌日から10ヶ月以内」と定められています。言葉が難しいですが、相続した金の売却は申告期限内でも問題ないため、実質「相続開始日の翌日から3年10か月以内」に売却すれば適用されるのです。
この特例により、相続税額の一定金額が取得費として加算され、売却すると課税される譲渡所得の負担軽減につながります。
取得費に加算される相続税額の算出方法は、以下の通りです。
取得費に加算する相続税額 | 売却者の相続税 × 売却した金製品の相続評価額 ÷ 相続税の課税額合計 |
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金売却時の税金に関する注意点
金を業者へ売却するとき、「税金」のことも考えなければ思わぬ事態となることがあります。そうならないためにも、金を売るときの注意点を押さえておきましょう。
課税対象外でも確定申告したほうがいい場合がある
金を売却したときに得た利益が50万円以下であれば、所得税(譲渡所得)の課税対象外となりますが、確定申告したほうがよいケースがあります。
以下の表をご覧ください。
事例 | 概要 |
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年末調整では受けられない所得控除を適用する |
年末調整で所得控除の制度を受けることができないものは、確定申告が必須
例:医療費控除 一定以上の医療費を支払ったときに適用され、税負担を軽減できる |
事業所得が赤字になり損益通算が可能 | 金の売買を運営しており事業所得が赤字(損失)となった場合、確定申告で他の所得と損益通算することで、税負担を軽減 |
このように他の所得と合わせて申告すると、節税につながる可能性があるのです。事業所得が赤字となったときは、損益通算で他の黒字の所得と相殺することもできます。
「課税対象外だから」と思い込んでいると、もったいないことになってしまいます。よく確認しておきましょう。
金の形状ごとに課税条件が変わる
金製品の形状によって、課税対象となる条件が変わります。特に、以下の品目は課税対象となる基準が紛らわしいため、注意が必要です。それぞれの要件を詳しく見てみましょう。
仏具
仏具は通常、課税対象とはなりません。先祖に向けて礼拝するための「祭祀財産」とされているからです。
ただし、礼拝以外での目的や用途での保有は、課税対象となる場合があります。どのようなケースが該当するのか、以下の表をご覧ください。
祭具の内容 | 課税の有無 |
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金製の仏像 先祖代々受け継がれてきた道具。毎朝拝んでおり、冠婚葬祭の時にも使用 |
非課税 |
金製の仏像 遺産整理をしていたとき、倉庫に保管されていたのを発見した |
課税対象(相続税) |
金製の仏像 被相続人が生前、相続税対策として購入した |
典型的な例ですが、「日常的に礼拝用として使用していないもの」は相続税として課税されます。節税対策として仏具を購入する方もいますが、免除されないことが多いため要注意です。豪華すぎる仏具も課税される可能性があります。
もし、ご自宅などにある仏具が課税対象となるのか判断がつかない場合は、税理士に相談するようにしましょう。
ジュエリー
金が使用された指輪やイヤリングなどのジュエリーは、基本的に「生活用動産」とみなされるため、非課税対象となります。
しかし、買取業者などへ売却を行ったときは異なります。売却額が1点(1組)あたり30万円を超えると、譲渡所得として課税されるのです。手数料などを引いたうえでの売却益ではなく、査定された売却価格が基準となるため、注意しましょう。
金の相続・贈与でも税金がかかる
相続や贈与で受け取った金でも、税金がかかる可能性があります。どのような状況であれば課税されるのか、それぞれのケースを見てみましょう。
金の相続でかかる税金
亡くなられた親などから金資産を受け継いだ場合、「相続税」が発生します。金を相続する場合は、被相続人が亡くなった当日の1グラム当たりの店頭買取価格と総重量をかけて相続税評価額を算出します。
単純に、金を含めた財産総額から基礎控除額を引いた金額を相続税として納めなければなりませんが、基礎控除額よりも下回る場合は非課税対象です。必ずしも支払うわけではないことを覚えておきましょう。
参考までに、相続税の基礎控除額の計算式は以下の通りとなります。
相続税の基礎控除額 | 3,000万円+(600万円×法定相続人の数) |
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金の贈与でかかる税金
血縁に関係なく個人から金をもらった場合、もらった側が負担する税金のことを「贈与税」といいます。
贈与税にも基礎控除額があり、その金額は「一人あたり年間110万円」です。仮に、親から金地金を贈与された評価額が200万円であれば、110万円を超える部分に対して税が課せられます。
また、税率は所得税のように累進課税方式で決められるため、贈与額が大きいほど高い税率となります。
少しでも負担を減らしたいのであれば、「複数年に分けて金を贈与する」というような節税対策を実施しましょう。「相続時精算課税制度」を活用するのもよいでしょう。
【税金以外にも要注意】金売却時の注意点
金の売却は、税金以外にも注意すべきポイントがあります。売却する時期や買取店の選び方など、それらを何も考えずに行うと損をする恐れがあるため、注意しておきましょう。
売却前に買取相場を把握しておく
店舗で売却する前に、金の買取相場を把握しておきましょう。
1グラムあたりの金相場は、世界経済の変化やテロや戦争などの影響により、日々変動しています。そのため、インターネットで買取業者や金の専門店のホームページで、金相場を確認することが重要となるのです。
2025年5月現在の金価格は昨年よりもさらに上昇しており、16,000円台を推移しています。金の売却を検討しているなら、金価格が高水準である「今」の時期がおすすめといえるでしょう。
買取手数料も確認する
金の売却を行う際、店舗によっては買取手数料が発生する場合があります。手数料は、買取金額の10%~30%程度が一般的といわれています。
仮に、金1グラムの買取相場が16,000円の状況で50グラムを売却するとしましょう。ただし、手数料が10%かかります。
この場合、買取総額が80万円のうち、手数料10%にあたる8万円が引かれてしまい、かなり損をしてしまう結果となります。
複数の業者を比較し、できる限り手数料が低い業者を選ぶようにしましょう。ちなみに「買取大吉」では、手数料無料で査定させていただいています。
売却のタイミングを見極める
日本市場における金の価格は、為替相場が大きく影響しています。世界市場における金の取引はアメリカの「ドル」で取引されていますが、日本は為替相場をもとに「ドル」を「日本円」に換算して価格を決めるのです。
インフレ傾向となっている現在のように「円安ドル高」が進んでいる場合、金相場は高水準で推移するため、高い売却益が期待できます。
為替と金相場の動向に注視しながら、売却に最適なタイミングを見極めましょう。
必要な書類を確認する
金を売却する際、購入時にいただいた計算書や領収書、運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書が必要となります。
これらの書類を事前に準備しておくことで、売却手続きをスムーズに進められます。業者ごとに求められるものが異なりますので、二度手間にならないよう、売却を行う店舗のホームページをよく確認しておきましょう。
信頼できる買取店に売却する
信頼できる買取店での査定が、金の高価買取につなげるうえで特に重要です。
査定士のスキルが高い、査定方法の説明が丁寧で顧客からの評価が高いなど、口コミやX(Twitter)のようなSNSで情報を集め、「納得のいく査定が実現できる」店舗を選びましょう。
査定経験が豊富な買取業者は、公式ホームページに買取実績を公表しており、適正価格での査定に期待できます。
信頼できる金買取店の選び方
最後に、顧客から信頼を受けている店舗の特徴をご紹介します。評判のよい買取店を選ぶことは、金の高価買取にもつながります。
買取参考価格が豊富で公開している店を選ぶ
実績のある買取業者は、金製品1点あたりの買取参考価格を公開しています。
買取実績が豊富な業者は、多くの顧客から信頼されている証拠です。業者の公式ホームページを確認し、買取参考価格が公開されているか確認してみましょう。商品が多いほど、適正な査定に期待できます。
「買取大吉」でも、金の買取実績を豊富に用意していますので、参考にしてみてください。
金の専門鑑定士のいる店を選ぶ
金の専門鑑定士が在籍している買取店を選ぶことも、高価買取につながります。
専門の鑑定士がいない買取業者よりも金の品質や価値を正確に判断できるため、より公正な買取価格が期待できるでしょう。
買取査定を無料で行っている店を選ぶ
査定する前に一度「無料査定」を行っている業者に金の価値を評価し、見積もりを出してもらいましょう。
金は高額査定となるケースが多いため、無料査定で価値を知ることは「後悔しない買取」を実現するうえで重要といえます。いきなり本番で買取価格が安ければ、心理的にも買取を行う意味が薄れてしまいます。
鑑定士の腕によるところもあるため、一概に無料査定が良いとは言えませんが、金の価値を知る一つの判断基準として利用しましょう。
サポートやサービス面がしっかりしている店を選ぶ
サポートやサービス面がしっかりしている買取店を選ぶことで、売却手続きを安心して進められます。
持ち込んだ金の取り扱い方が雑、もしくは査定方法の説明の仕方が曖昧な場合は、誠実な買取専門店とはいえません。売却手続きの説明が丁寧で、顧客対応のよい店舗を選びましょう。
事前に調べて判断が難しい場合は、来店前に電話で疑問点を尋ね、丁寧さや対応力を確認してみるのも手です。
売却時の書類を作成してくれる店を選ぶ
売却時の書類は、確定申告の重要な書類となります。買取証明書や領収書などがない状態で申告すると、税金が増額する可能性があるのです。
もし、このような法令準拠の書面の作成を渋る場合、その業者は「怪しい悪徳業者」である可能性が高いです。売却を証明する書類をしっかり作成してくれる店舗なのか、事前確認しておきましょう。
法令や契約を遵守する買取が行えることも、お店の信頼性を判断する基準に役立ちます。
まとめ
金に関わる税金は、種類によって仕組みが異なります。どのような状況であれば課税されるのか、適切な知識と対策を持ち、負担を最小限に抑えていきましょう。税への理解を深めることは、金の売却利益を大きくすることにつながります。